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「…え、お前、何でいるの?」
今にも倒れそうな体を引き摺ってここまで来た。
そして僕が見たのは、一瞬で顔色を悪くした下着姿の恋人と、玄関にある可愛らしいパンプスだった。
咳が止まらず、寒いのに嫌な汗が噴き出す。
始めは大した事ない風邪だったはずなんだけれど、僕の体は何に対しても本当に弱くて、脆い。
こんな体だから子どもの頃から色々な事を我慢して、諦めて、そのせいかあまり欲張る事をしなくなった。
どうせ無理だと、そう思う方が楽だと思った。
そして自分が同性しか愛せない人間だと気付き、ますますその思いは強くなった。
「気を付けていたのにな…」
でも、そんな僕でも社会人になる事が出来て、初めて絶対に諦めたくないと必死に仕事をした。
自分が人として認められた様な、そんな気がした。
なるべく迷惑を掛けないようにと今まで以上に自分の体調には気を付けていた。
それでも体調を崩す事が何度かあり、その事で職場に居辛い雰囲気になった事もあったけれど、今は皆が理解をしてくれていて本当に感謝している。
「でも、今は頑張れないかもしれないな…」
ふらふらとよろけると、通行人が眉を顰めながら僕を避けて歩く。
そういえばどうしてここにいるんだっけ、不安定な歩みを続けながら考えていた。
「ああ、そうだった…」
今日は彼と付き合って一年の記念日だから、仕事終わりに一緒に食事をして、彼の家で二人でゆっくりと過ごそうと約束していたんだった。
でも僕がまた体調を崩してしまって、隠していたかったけれど、同じ職場で働く彼には隠し通せなくて、それでやっぱり止めておこうと言われたんだった。
それなのに、僕は諦め切れなくて、連絡がつかない彼の家にまで押し掛けてしまった。
「えっと、それで、どうしたんだっけ…」
えっと、と考えながら、その時自分が泣いている事に気付いた。
彼が浮気をしている事は、知っていたじゃないか
何度か、知らない女の人と歩いているのを見た。
男の人でないだけ良かったと思うべきなのか。
でも、やっぱり女の人が良いのかと傷付いた。
いつも見掛ける度にホテル街を歩いていたのは、僕とでは満足に出来ないからだろう。
それはそうだ。
男な上に、体を繋げれば必ず体調を崩す恋人。
彼は両方を愛せる人だけれど、男の人とそういう関係になった事はあっても、男の恋人を作った事は無かったそうだし。
「会いたいなんて、欲張らなければ、何も知らないふりをしていられたのにな…」
ただ、彼が好きで、傍にいたかった
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