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岡惚
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どれくらいの時間が経っただろう。
涙も乾き、目も擦り飽きた。
ポケットティッシュの残骸を捨て、涙でぐしょぐしょになったカーディガンの袖を直し、襟を直す。
俺は壁に寄りかかりながら、まだフラフラと揺れる体を無理矢理起こし、鞄を背負って、教室を後にした。
幼馴染だった自分だけが、何て確証もない自信を胸の奥にぶら下げて、やっとそれが確証の無いものだと証明されただけの事。
悔しがる理由も、権利も、俺は持ち合わせていない筈だ。
彼を諦める為の言い訳を胸で呟きながら、やたら長い廊下を早足で通り抜けた。
「はぁ...」
何度目かも分からない溜息を吐きながら、曲がり角を曲がって、玄関へ向かう。
するとそこには、丁度玄関で靴を履き替えている京介が居た。
先程と同様、彼にバレないように物陰に身を潜めようとしたが遅かった。
彼は俺の姿を認めるや否や笑顔で話しかけてきた。
「...あっ新太!もう帰っちゃったのかと思ったぜ〜」
「いや、...」
京介は朝と何ら変わらない様子でそこに居た。
彼の笑顔を直視出来ず、思わず目を逸らす。
「...?新太?もしかして、具合悪いとか...」
「...え、べ、別に...何処も悪くない」
「そっか...無理すんなよ」
俺の対応に違和感を覚えたのだろう、彼は首を傾げながら、心配そうな様子で言った。
彼の良心が痛い。
「な、一緒に帰ろ」
京介はさっきより優しく柔らかい笑顔を俺に向けた。
「............ん」
俺は、彼の顔をちゃんと見られないまま静かに頷く。
やはり、俺の様子がおかしいと見たのだろう彼は、歩いている時も、電車に乗っている時も、彼のアパートの部屋の前で別れるまでずっと、何気無い出来事を話し続けてくれた。
俺はと言うと、結局、今日の告白の件について、触れることは出来なかった。
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