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好きな人が他の人のものになる……この人も俺と同じような体験をしたというのだろうか……
好きな人の幸せのために身を引く、それがたとえどんなに苦しくても、その人のためなら……そう思ったというのか……
「何度もあきらめようとした。でも無理だった。あいつ、お前と付き合ってるのに変に俺を受け入れようとするんだ……本当に困ったやつだ。俺の気持ちを弄ぶようなことしやがって……」
そう言っている清水さんの表情は、困った顔をしながらもどこか嬉しそうに見える。
「でも俺は梓が好きだ。好きなんだ……」
真剣な眼差し。清水さんの言葉に周りの人が反応する。
な、何か……俺がこの人に告白されているみたいに見えるじゃないか……
皆さん、決してこの人が俺に惚れてるとかそういうことじゃないですよ!!
……と、言いたいけど言える雰囲気でもなくて。
「頼む」
再び頭を下げる清水さん。何だか俺が悪いみたいじゃん……梓と付き合っているっていう嘘までついて、『梓は俺のもの』だなんて……
自分の良心が痛む。……たく、仕方がない。はぁ……とため息をつき、正直に話す。
「梓と付き合っているなんて嘘。本当はもう付き合っていません」
「・・・は?」
「梓とはとっくに別れました。付き合っていたとはいっても、俺が梓を脅迫したからです。梓に俺への気持ちがあったかはわかりません」
「…話がついていけない。詳しく話せ」
俺は清水さんにすべて話した。梓が俺ではない誰かのこと思っていて、梓の良心につけこんで『付き合ってくれないなら、俺は梓の前から消える』と脅したこと。
梓が自分の気持ちに気づいて、フラれるのが怖くて俺から身を引いて離れたこと。
「最低なことをしたってわかってます。でもそうしないと梓は付き合ってくれないと思ったから……でも結局無理でした。
梓の心はずっとあなたの方に向いていました。このまま傍にいても梓を傷つけるだけ、だから梓の元を離れたんです。別れてからは会っていません。
会ったら自分のものにしようと梓を傷つけるかもしれないと思ったんで」
そう、怖かったんだ。梓に対する想いが強くなればなるほど、強引な手段に出て本当の意味で傷つけそうで。
もはや梓のためでもない。自分を守るためだ……
「なので俺にそんなこと言っても意味ないです。あとは梓があなたを受け入れるかどうかだけ。……って言っても、もう梓はあなたのものでしょうけど。そろそろ失礼します」
立ち上がって店を出ようとするけど、清水さんに引き止められる。
「まだ何か?」
「教えてほしいことがある」
「何ですか……」
「梓の好きなものは何だ」
「・・・は?」
引き止められたと思えば、いきなり何の話だ……
梓の好きなもの?また何で……
「さ、最近いろいろあって梓が怒っている。話を聞いてくれない。どうしたらいい?機嫌を直して欲しいのだが、梓の好きなこととか、好きなものがわからないし、教えてくれない。知っているなら教えてくれ」
いつも冷静に見える大人でも、好きな人のことになると、わからないことだらけなんだな……
梓のこと言って敵に塩を送ることなんかするかよ。自分だって必死に梓の好きなこと、見つけ出したんだ。そう簡単に教えるわけにはいかない。
「知りませんよ、もし知っていても教えません」
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