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赤との邂逅 4
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翌日から、赤築 リツは、しつこく僕につきまとって来た。
僕は追い払うのも面倒で、勝手に喋らせて無視をしていた。だけどそのうち、ポツリポツリと返事をするようになって、気がつけば、周りからは親友だと思われるくらいに、傍にいるのが当たり前になっていた。
今日も僕が、ロウ手作りのカスクートを持って、滅多に人が来ない空き教室へ向かうと、リツもピタリとついて来た。「ついて来ないで」と言うのも億劫で、僕は小さく息を吐いて、話しかけるリツには目もくれずに教室に入った。
「ルカはここが好きだよな。俺もルカと二人だけで静かに過ごせるここが好きだよ」
「……」
ーーあんたがいなければもっと静かに過ごせるんだけど…。
心の中で文句を言って、チラリとリツを見る。
僕と目が合ったリツは、とても嬉しそうに笑って、僕の向かい側に腰を下ろした。
僕はまた一つ息を吐きながら、紙袋からカスクートを取り出そうとして「あ…」と声を上げた。
ーーしまった。リツに気を取られて、飲み物を買ってくるの忘れた…。
紙袋を掴んで立ち上がった僕の腕を、リツが慌てて掴む。
「あっ、待って。ルカ、どこ行くんだ?」
「…飲み物…」
「それなら大丈夫だよ。俺、ルカの分も持って来てるから。はい、これ。ルカはミルクティーがいいんだよな?」
リツが布製の袋から、ストレートティーとミルクティーのペットボトルを取り出した。やけに大きな袋を持ってると思ったら、お弁当以外にもこんな物を持って来てたのか。
「ほら、ルカの為に持って来たから、飲んでもらえると嬉しい。な?腹減ったから早く食べようぜ。いただきまーす」
リツが、袋から籠のお弁当箱を出して手を合わせる。綺麗に並べられた、卵とハムのサンドウィッチを一つ掴んで、大きな口でパクリと食べた。
僕は、再びゆっくりと腰を下ろし、僕の前に置かれたミルクティーを手に取り、小さく呟く。
「…ありがとう」
どうしても素直に言えなくて、ごくごく小さな声しか出ない。なのに、ちゃんと聞き取ったリツが、太陽みたいな輝く笑顔を見せた。
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