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第四話 悠希の平凡な日常3
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俺の働いている居酒屋は駅の地下にある立ち飲み屋だ。安さがこの店の売りだ。ただし、お客の年齢層は高めで、基本的に常連さんが飲みに来てくれる。
「いらっしゃいませ!」
今日はまた一段とお客さんが多い。
生中を出して、焼き鳥だして、空き皿下げて、枝豆だして…
「ふぅ…」
時間帯的にも少し落ち着いてきたころ。
「いらっしゃいま…」
入ってきたのは明らかに場違いな男性。高級そうなデザイン性の高いスーツを着ており、長身で、まるでモデルのような端正な顔立ちだった。
「とりあえず生もらえるかな?」
「あ、はい!」
サーバーを握る手が僅かに震える。他のお客さんも明らかにその人を見ている。
「はい、生中です。どうぞー」
無駄に緊張しながら生をカウンター越しに渡す。その生中を飲んでる姿も、オシャレなバーにいる方が確実に似合う。
なかなかに珍しいお客さんだったこともあり、気づいたらお客さんを見つめていた。そして、お客さんも俺見て目が合ってしまった。
「あっ、すみません。」
正直に謝ると、その人はクスっと笑った。
「何か俺の顔に付いてた?」
「あ、いえ…お客さんみたいな人でも、こういうとこ来るんだなって思って…」
「正直だね。」
その男性は優しく笑った。俺はなぜか居たたまれない気持ちになってきた。
「うん、実は初めて来たんだ。入るのにちょっと緊張しちゃったけど。でも、この店の生は美味しいね。」
別に自分が褒められたわけじゃないのに、なぜか嬉しくなった。
「ありがとうございます。是非、ご贔屓にして下さいね。」
「もちろん。」
いつもならそんなにお客さんとも会話はしないのに、この人だけはなぜか会話が続いた。
「次回来てくださったときのために、お名前お聞きしてもいいですか?」
「あぁ。俺の名前はミズキだ。君の名前も教えてほしい。」
「はい。悠希って言います。」
ミズキさんは何杯か飲んだ後、店を出て行った。
…明日も来るかな。なんか楽しみになってきた。
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