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愉快な誘拐(白目)
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「うぅううう・・・」
「手足縛っとけ」
「ぐぅうう!!」
誘拐である。
身代金の発生しない、誘拐である。
俺を誘拐したところで何が得られるというんだ。
しかしながら、無情にも車は進み、俺は見知らぬ廃工場に連れてこられたのであった。
<***>
いや、考えれば見知らぬわけではないかもしれない。
多分ここ、最初に久我さんたちに追われていた時にいた廃工場だ。
ここで久我さんに会って・・・。
それで何だかよくわからない同居生活が始まったわけで。
「・・・それで、お前竹垣について何か知ってるだろ」
「ふぐぅうう・・・」
「ああ、布噛ませてたら喋れねえな、取ってやれ」
「はい」
布を外された。
解放された。
「っぷは!!た、助け・・・」
「うるせえな、竹垣についてだけ話せって言ってんだよ」
ガッ、と顔を掴まれた。
なんだこの顎クイ。
ときめかねえ。
「し、知らねえよ俺は・・・」
ホントに知らない。
俺だって今探してたんだから。
「アイツ・・・組を抜けるときに『お前たちのほかに大切なヤツができた』って言って抜けやがったんだよ」
「へ・・・」
「組に入ったからには抜けることは許されない。それもそんなクソみたいな理由で抜けることなんてありえない。そんなナめた真似したヤツがノウノウと生きていけるワケないだろ・・・?痛い目、見てもらわねえと、な?」
「そ、そんなこと・・・!」
酷い話だ。
これだから極道モンは。
痛い目とか蹴りとかケジメとかそういう意味の分からないものに掴まって、捕まって。
それを悪とは思わない。
いや、それも当然かもしれない。
正義の味方に倒される悪役の中では、ことごとく邪魔をして、自身を倒しに来る正義の味方は、間違いなく悪なんだろうから。
自分とは違う存在。
それを人は悪と呼ぶのかもしれない。
そして遠ざけるのかもしれない。
何故なら、関わらないのが一番安全だからだ。
そして普段の俺もそうしていたんだろう。
こんな変な能力を得る前だったら。
こんなことにはなっていなかっただろうし。
「竹垣のやつ、来ませんね」
「ちゃんと連絡したんだろうな。・・・っつっても、大方連絡先を変えてるだろうから、来ないかもしれねえけどな」
「そん時は、代わりに痛い目に遭ってもらうしかねえな」
ゲラゲラと品のない嗤い声が響いた。
「俺らもさぁ、気の長えほうじゃねえんだよなあ。あと5分くらいで来てくんなかったら・・・マジで血を見ることになるんじゃね?」
男がそこらに落ちていた廃材を拾い上げた。
片手間にそれを弄びながら、愉しそうだ。
俺はちっとも楽しくないが。
あれで殴られたら死ぬかなあ。
もし死んだら柏原さん、どうするかなあ。
・・・久我さんは、どうするかなあ。
でも、もし。
もしも俺のこの変な能力が、俺と一緒に居ることで発生するのなら。
俺が死んだら、久我さんは解放されるんじゃないだろうか。
俺に出会う前みたいになれるんじゃないだろうか。
さらに言うなら、曲がりなりにも足を洗ったんだから。
俺と出会う前よりマットーに。
生きていけるんじゃないかな。
俺が死んで、久我さんが解放されるなら。
うん、得るものがゼロってワケではなさそうかもなあ。
こんな冗談みたいな感情が嫌だったから、久我さんは俺から逃げたんじゃないかな。
逃げたっていうか。
「さて、5分だ」
「覚悟はいいな?」
ゲラゲラと嗤いながら。
俺の頭めがけて、鉄パイプが振り下ろされる。
俺は脳漿(のうしょう)を無様にぶちまけて・・・。
「・・・?」
「っ・・・う?」
「あ?」
「なんだこれ・・・?」
死ななかった。
俺が目を開くと、そこにはまだあの男たちがいた。
廃材を持ったままだったが、俺の頭には振り下ろされていない。
振り上げてはいたが。
振っては来なかった。
どうやら、俺の変なネガティヴな覚悟とは裏腹に。
「・・・コイツ・・・よく見りゃ・・・」
「ああ・・・殺すのはやめだ」
「殺すんじゃなくて・・・犯すか・・・」
三度?
火事場の馬鹿力が発動したらしい。
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