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卵抜きで
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「Bonjour」
瑠衣とダヴィッドは接客をしている。
「ここは、俺に任せてくれ。ルイは次のお客様の接客を頼む」
「Bonjour,monsieur Poitrenaud」
「Je voudrais commander un gateu d'anniversarie」
(バースデーケーキをお願いしたいのですが)
レジス・ポワトルノー。リセ・モンテーニュの料理課程助教授で、シャルルの担任である。
アルジェリアとイスラエル系フランス人。ロイクと一緒だ。
双子のように、そっくり。ロイクとレジスは年子の兄弟。
「当たり前だ、俺たちは兄弟だからさ。卵抜きのガトー、お願いできるだろうか?我が息子オラスがもうすぐ、誕生日なんだ」
暫くの間アレクサンドラに託しているため、夜しか一緒にいることしかできない。
今後の休みのときは、オラスと思う存分向き合えるようになったけれど。
「御存知の通り、オラスは卵アレルギーでガトーを食べさせることができなくて・・・ガトーが食べることが出来ないのがとても辛くやるせない。あの事件で面会権を絶たれてしまったんです・・・オラスを今、暫定的に母が預かっているところです。アレルギーと解る前、オラスがサブレを美味しそうに食べているのを見たとき・・・」
「・・・三日ほど、時間を貰えるでしょうか?オーナーである父と相談します」
「・・・解った・・・」
ポワトルノー兄弟は駄目もとだった。
ダヴィッドはポワトルノー兄弟に連絡先を聞いている。
厨房では・・・
「・・・卵抜きになると・・・厳しい・・・」
瑠衣とフランソワだった。
「・・・卵抜きになると・・・膨らみに左右されるのは確実だ。味も格段に落ちるのは請け合いだ・・・」
マルセルとサーシャは頭を抱える。リュカも一緒だ。
「俺は、オラスにも食べてもらえるようなガトーを作るのは可能だ」
「ロベールさん、ダヴィッド?」(瑠衣、フランソワ、リュカ)
「そんなガトーを作ることは出来るのでしょうか・・・?」(マルセル、レイモン、サーシャ)
「卵を使わないのは、本当に難しい。菓子は人に優しさと幸せを与える食べ物だ・・・オラスにも・・・食べて貰いたいんだ」
早速、アングラード一族は卵抜きのガトーの試作に入るため、色々と調べている。
「オラスのアレルギーは卵のみ。豆腐や小麦粉は特に問題はないが・・・もし、これが豆アレルギーなら、かなり厳しくなってくる・・・」(サーシャとマルセル)
「取りあえずは、就業時間外で試作するしかない。どっちにしても、材料費は自己負担だ。そうなれば、ある程度の材料を揃えなければいけない」(ロベール、ダヴィッド)
早速、ロベールたちは卵抜きの菓子を調べていた。動画サイトなど、手あたり次第。
その夜、瑠衣、フランソワ、レイモンたちはマレ地区のマクロビオテックレストランに足を運ぶ。
「ファラフェルサンドが多いだけでない。精白されたものは一切使われていないんだ。動物性食品も以ての外。ヴィーガンのヴェジタリアンにとっては有難い店だ」
瑠衣は早速、玄米プレートを注文。味噌汁も一緒に出される。
パリでも、マクロビオテックの実行者も年々、増加してきている。
パティシエ、シェフのほとんどは職業病であるため。動物性や砂糖類は避けては通れない。
出来ることなら、罪悪感を感じることなく、心行くまで満足できるようにしたいもの。
「このヒヨコマメ、レンズマメのソテーがいいよね」
「味噌汁も最高の味だしな」
味噌汁に使う出汁も、カツオといった動物性は一切使わない。
昆布とシイタケから手間暇かけている。
そして、デゼールも注文。
マクロビオテックのデゼールも、昔と違い、年々発展してきている。
乳製品の代わりになるものは、葛粉、寒天、胡麻油、大豆・・・
そして、チョコレートの代わりとなるキャロブ。キャロブはイナゴマメ。
コーヒーとかは、穀物コーヒーになる。
ただ、取り寄せでしか実現は難しい。特注となれば、それはシビアな問題だ。
瑠衣たちは早速、マクロビオテックのデゼールを口にする。
「乳製品、卵を使っていないのに、最高の味がしている・・・」
なにやら、インスピレーションを受けたようだ。
翌日、瑠衣たちは夕方まで。
「豆腐は1区のスーパーで買ってくるとする。ビオ専門店があるし。カカオは製菓専門店でピュアカカオを手に入れるとする。乳製品は極力カットしたほうが無難だろうな。砂糖はオーガニック系を使うとして・・・」
翌日、店休日。
1区のビオ専門店に向かったマルセルたち。
流石、高級ショッピングモール内にある。瑠衣たちにとって少し、敷居が高い。
「スペルト小麦も置いてあるよ?」
「これなら、アレルギーは心配なさそうだ。だけど・・・少し高いな」
「用心に重ねた用心だ。あと、パン・ド・ミ(食パンのフランス語)をスライスして、ガト・オ・フレーズっぽくしてもいいんじゃないのか?生クリームの代わりに豆腐クリームを使うとして・・・但し、豆腐臭さは避けては通れなさそうだが。卵アレルギーだけなら、問題はないはずだ」
瑠衣たちは豆腐、ピュア・カカオ、メイプルシュガー、生クリーム、パン・ド・ミを買った。
予算は少しだけオーバー。
方や、アングラード一族も試作している。
早速、部屋に戻って試作だ。
「豆腐も水切り不要になってきている。大半が水切りしなければ水っぽさが残る。フードプロセッサーで豆腐を撹拌する。ピュア・カカオ(砂糖が全く含まれない)をあらかじめ、湯せんで溶かしておく。また、バターも一緒に熱すぎない程度に。材料が混ざったら、最後に小麦粉を入れて混ぜ合わせるだけだ」
そのあと、パン・ド・ミをスライスしてガト・オ・フレーズの試作だ。
ガト・オ・ショコラの焼成している間に。
フルーツサンドイッチのヴァリエ版。
パンっぽさがないように、しっかりとシロップで湿らせておくこと。
サイコロ型に切って、生クリームでナッペしてイチゴを飾れば、普通の「ガト・オ・フレーズ」に遜色はない。
「なんだか・・・しっくりといかない・・・卵抜き、小麦粉抜きは敷居高いよ・・・」(瑠衣)
「豆腐クリームはヴァニラのさやをしっかりと効かせないと、豆腐臭さが避けて通れない。または、オレンジといった柑橘系の風味を効かせる、とか」(レイモン)
「LINEが来ている。ダヴィッド?アングラード家でも手探り状態だそうだ・・・百戦錬磨のアングラード家でも苦戦中だそう・・・」(フランソワ)
*******
作者yunaより。
アレルギー体質でガトーが食べられないオラスのために、瑠衣たちは奮闘します。
フランス・パリでは近年、マクロビオテックレストランもちらほらと出てきているようです。
スペルト小麦は、アレルギーを起こさない古代小麦粉との一種。
そして・・・
パン・ド・ミ:フランス語で「食パン」です。
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