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卵抜きで~親心
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コンコルド・厨房にて・・・
アングラード一族は・・・
「スペルト小麦粉、オーガニックシュガーを駆使する。100%ピュアカカオ、果物をふんだんに使って」
ショコラフランボワーズのシャルロットを試作している。
卵抜き、スペルト小麦粉、卵を抜いても、実現は可能だ、という。
フランス系カナダ人のマクロビオテックシェフであるガブリエルの本を参考にしてみる。
「100%ピュアカカオを使うから、豆腐臭さはカカオの香りで払しょくされるだろう。甘みを多くしたほうが口当たりの良さは格段に良くなる」
試作に余念がない中、ポワトルノー兄弟がやって来た。
「見た目も、食べても、普通のシャルロットに変わりない。これなら、俺たちはワンホールは平らげるね」
「おい、レジス。オラスのためのバースデーケーキだぞ!」
美味しいものが好きのポワトルノー兄弟だが、弟レジスの食意地は半端ではない。
ロイクは卵抜きのサブレの試作を手探りながらやっている。
子供のための誕生日会はガトー・ショコラ、リンゴのタルトが定番となっている。
リンゴのタルトも、卵抜きでの実現も可能かも知れない。
「俺の同期が今、マクロビオテックレストランのスーシェフをやっている。そいつからも、菓子のアドバイスを受けたりもしているんだ」
そして、その当日・・・
オラスにガトーを手渡されることになった。
アレクサンドラ自身も最初は、卵抜きのガトーはかなり、難色を示していた、という。無理もない。
「卵は一切使っていません。特製ケーキなんです。これなら、オラスも食べられます」
ロベールとサーシャは説得を重ねていた。
「・・・でも・・・」
「おばあちゃん。僕、食べてみたい!」
オラスは早速、箱を開ける。
ガトー・ショコラだ。卵を一切、使っていない。
「美味しいよ、お祖母ちゃん!有難う、パパ!」
「よかったな。お礼はロベールたちに言うんだぞ」
「ウイ」
一週間後、オラスの誕生日会が開かれた。
ガトー・ショコラ、リンゴのタルトを用意。お返しには、ロイクとレジスが焼いた特製サブレ。
こちらも、無事に成功した、とのことだ。
招待客の子供にも好評だった。
「卵、乳製品抜きでこんなに美味しい菓子ができるとは・・・魔法がかかったみたい・・・」
親御からも大絶賛されたくらいだ。
翌日、コンコルドにお礼を言いに来ていた。
「オラスの喜ぶ顔を見ることができました。4年前、面会権をはく奪され、オラスに会うことができなくて辛い思いをしました。遠くからしか、オラスを見ることができなくて・・・最近、親権を取得できるよう、自分自身のスキルを上げていかなくてはいけない、と改めて考えるようになりました」
ロイクの目には涙が光る。
コンコルドは最古の老舗パティスリー。
それぞれの生の笑顔、人との触れ合い・・・
それぞれの店での人間模様も形成される。
ロイクとロベールとのやり取りを見た瑠衣。相手目線に立っての接客の重要さを改めて知るようになった。
「ルル?」
「ウイ?」
後ろではマルセルが立っている。ショコラの匂いが漂ってくる。
テンパリングを終えたばかりだろう。
「ボンボンショコラ、ガナッシュ、ジャンドゥーヤ、オランジェットを追加してくれ。これからは、ショコラの数が多くなってくるよ。今、ロイクさんが来たんだね・・・」
「ウイ。お礼を言いに来ていたんだ」
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