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「ダメ」と言っても谷中君は僕の言葉を無視し歩みを止めてはくれない。
腕を掴む力が強いのか、少しの痛みが走る。僕は抵抗虚しく引っ張られて行ってしまった。
「家には誰かいる?」
そう聞いてきた谷中君。
僕は嘘をついた。でもこれは自分自身を守るための嘘だった。
「いるよ!!母さんがいるんだ!!だからっ・・・!」
「嘘つき」
「・・・・え?」
確かに僕は嘘をついた。
でも家の中を見てもいない谷中君に嘘だとバレる訳がなかった。だから僕は少しだけ強気になってしまう。
「嘘じゃないよ!本当に、本当にいるんだ!だから!!」
「目」
「は?」
谷中君が足を止め僕の顔を真正面から見てきた。その表情に笑顔はなく、僕は初めて谷中君の真顔を見たのだ。
「人の目を見てしゃべろうとした。噛むことなく喋った。郁ってさ、正直に話すときどもるし人と目を合わさない。でも今は俺と目を合わそうとしたし噛まなかった。気づいてた?気づくわけないよな?郁は人が嫌いなんだからな」
冷たい笑顔が胸に突き刺さる。
目頭が熱く鼻の奥がツンと痛む。僕はしゃべるのを止めた。これ以上話せば泣いてしまうから。
「図星?」
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