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「郁、おはよう」
色の付いた日常が帰ってきた。
谷中君との喧嘩(なのか?)からまた一ヶ月ほど経ち季節は夏へと変わりつつある中、長袖のカッターシャツの袖を捲り上げた谷中君が笑顔で僕を迎える。
「お、おはよう」
僕も挨拶に慣れ、谷中君との登校も慣れてきていた。
「おはようございます!谷中先輩!」
と・・・・一緒に挨拶したのは妹の凜久だった。
あの時、谷中君の事を一目見た凜久は完璧に惚れてしまっていた。それからというもの、僕が家を出る時間を同じにして部活の朝練を歩いて行っていたのを走って行くことで時間を調整したみたいで、今に至るのだ。
「凜久ちゃんおはよう」
僕に向ける笑顔と同じ笑顔を振りまく谷中君、少しだけムッとしてしまうが僕の友達がモテていることはしょうがないこと。
僕は目を逸らし駅へと足を進めた。その間は後ろで楽しそうに話をする谷中君と凜久。
少しの我慢だ。
しばらくすればT字路にぶつかる。そこが妹との別れ道。この世の終わりを迎えるかのような表情を浮かべて走って行ってしまう。
やっと僕は谷中君と話が出来ることを素直にうれしく思う。
「拗ねてる?」
僕の目線と合わせながら腰をかがめる谷中君。
「す、拗ねてない・・・・早く行こう」
素っ気ない態度を取ってしまい後悔し谷中君を見ると僕をじっと見つめながら「ホントは?」と聞いてくる。この時の笑顔が僕はとても弱い気がする。
「・・・・ぼ、僕とも話し、してほしい」
正直に話せば谷中君は笑い「了解」と言いながら僕の頭を優しく撫でてくれる。
この撫でてくれる行為も、僕はとても好きだ。
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