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「ははは、それもそうだな!郁ちゃんはちゃんと見てるんだな~。・・・・だけど、まだなんか隠してるよな?」
「どうして?」
「どもらずに、噛まずに物事を話す郁ちゃんは何か隠してるか嘘をついている。当たりだろ?」
僕はこの場から逃げ出したかった。
心の奥底で警戒音が鳴り響く。
どうしてこの人は谷中君と同じ事を言ってしまうのか。
泣きそうになった、この電車はこんなにも長い時間をかけて走るのだろうかと思うほどに。
話すのを止めて外の景色を眺めだした周防君。
相変わらず僕の腕を掴んだまま放すことを止めない周防君。
気がついたときには電車は目的の駅へと到着していた。
周防君に腕を引っ張られ僕は後ろへと続く。
こんな状態を谷中君に見られでもしたらと考えただけで身震いしてしまう。
「あ、あのっ!す、周防君!!手、はな、して!!」
僕は立ち止まりはっきりと伝えた。
だけど一向に離れようとしない腕。
力で敵うわけない、言葉でも敵うわけがない。
ならどうしたらいいのか。
「ぼ、僕は!周防君が言う、た、谷中君の異常さを理解している。り、理解した上で・・・・僕は谷中君と、居るんだ」
驚いた顔をしている周防君、それはそうだろう。
忠告してくれた事を僕はすでに知っているのだ。知りながらでも付き合いを続けている。
周防君からすれば異常なのは僕も同じなんだ。
「知ってるのに一緒にいるのか?なんで・・・・」
「・・・・・・」
僕の腕を掴む力が緩んだ。
僕は周防君の腕を掴み放した。そして「なんで」と訪ねてきた周防君の答えに僕は応えるつもりはなかった。
でもここまで心配してくれている彼に対して少しの謝罪の意を込めて微笑み返した。
僕は前を見据え歩く。この先に何が待っているのか、怯えながらでも進むしかない。なんのために髪を切ってまで変わろうとしたのか。
誰が何と言おうと谷中君から離れない。僕からは絶対に。
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