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〇『コイノオワリ』/弘樹side
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〇弘樹side
週に一度のクラス委員の会議が終わりみんなが一斉に席を立つ中。
僕のとなりの大葉だけがピクリともせず窓の外をただただ睨み付けていた。
「大葉?終わったよ!」
肩を揺すると彼はハッと我に反ったようで。
「あ、帰ろうか。」
と言い机の上に広げた体育祭の資料を雑に束ねるとサッサと先に行ってしまった。
あの几帳面な大葉が、プリントの角を合わせなかった。
なんかあったのかな?
そんなことを思いながら会議室を出て教室のある向かい側の校舎に戻る為に渡り廊下を歩いてく。
すると運悪くその前方には、たむろしてる数人のヤローのかたまり。
「おっ!可愛い!」
そして案の定。
近付いて来たそいつらに僕はすっかり周りを囲まれてしまった。
「キミ可愛いねぇ!」
「一年生かぁ。」
……うぜぇ。
モスグリーンのネクタイ…三年か。
「すいません、通してもらえますか?」
正面のヤツを睨みそう言うとそいつは眉を吊り上げ僕の腕を掴んだ。
「なんだお前、生意気だな。」
明らかに怒りモードに入ってる。
つか、こんな時間まで何してんだか。
とっとと帰れっつの。
「お仕置してやるか!」
後ろのヤツがそう言い、僕の尻を触って来る。
「お前にな。」
言い終わるより速く右足で後ろのヤツにケリ入れて僕の腕を掴むヤツの腕を振りほどいて駆け出した!
「あ!テメー待て!」
待てと言われて待つかっつの!
とは言え僕とヤツラでは体のサイズが違う。
ちょっと見ただけでも…身長差は二十cmはあるだろう。
手足のリーチもバネも違うのか…職員室まで後少し…って所で捕まり階段奥の非常口に連れ込まれた。
「コノヤロー…やっと捕まえたぜ!」
「放せ!」
ニヤニヤ笑うヤツラに囲まれドアに身体を強く押し付けられる。
くそ…
このままヤられちまうのか!
震える手をグッと握り僕はキツく目を閉じた。
すると…
ドン!!!
鈍いデカい音がして、押さえ付けられていた身体が楽になる。
恐る恐る目を開けると…いつの間にか三年達が床に転がり、僕の目の前には…
「祐一郎!」
幼馴染みの“柊祐一郎”が背を向け僕をかばうように立っていた。
背はバカデカく髪は赤に近い茶髪。
キツめの視線の先にはおそらくヤツがノックアウトしたんであろう三年共の青ざめた顔。
ヤツらは呻きながら床を這いずり必死の様子で立ち上がると「柊だ!」と叫びながら一人残らず逃げ出していった。
そのひきつった声が遥か遠くに消えた辺りで。
「ダイジョブか?」
その場で振り向いた祐一郎がそっと僕を抱き締めた。
僕は…
「ぐわ…!」
膝でヤツの股間を攻撃した。
「なんだよ…折角助けてやったのに!」
前のめりになりながら苦しげにうめくヤツを睨む。
「それとこれとは別!」
「…いいじゃん…他人じゃないんだしさ。」
そう言ってニヤつくヤツに…もう一発入れてやろうかと、本気で思った。
「あの時の弘樹は…ムチャクチャ可愛かったなぁ…。」
「一回ヤったくらいで、お前のモノになったと思うな!」
捨て台詞を吐きだしうずくまる祐一郎に背を向け教室へと向かう。
アイツ…
柊祐一郎は僕の幼馴染みで物心ついた時にはもう極々側にいた。
家は隣りで親同士が仲良し。
当然ながら家族ぐるみの付き合いをしてる。
多分、今も。
昔は僕より背も小さくて弱かったから、いじめられて泣いて帰ってくるアイツを連れて良くケンカしに行ったもんだ。
アイツは中学からこの私立校に入ってたから、県立に入った僕とはすれ違いばかりだった。
卒業式の日に久々に会ったら…超デカくなってて驚いたっけ。
体もヒョロヒョロじゃなくて…ちゃんと筋肉付いてるし!
会ってすぐは誰だか分かんなかったくらいだから。
そして…
その、久々に会った中学校の卒業式の日の夜。
祐一郎の家で思い出話に花を咲かせた僕達は…いたずら半分でおじさんの酒を持ち出し、祐一郎の部屋で中学卒業飲み会?をした。
初めて飲む酒に酔い、イイ気持ちになった僕に近付いてきた祐一郎が…
『弘樹…セックスしないか?』
と言って…
酔って思考のマヒした僕はその意味も分からず…
『せっくす?いいよー…』
こたえるなりキスされて…
裸にされて、体中舐められて…
『弘樹…お前を抱けるなんて夢みたいだ…』
そう言われて初めてヤツの言葉の意味が分かった。
でもその時にはもう…
僕の身体は祐一郎にされるがままになってた。
僕のアレを弄って…しゃぶって…。
アソコに祐一郎が挿れた時にはさすがに痛みに暴れたけど体型でも体力でも勝てる訳もなく…
半ば強引に…ヤられたんだ。
…嫌な思い出だ。
嫌なはずなのに…
たまに…あの時の事を思い出すんだ。
◇◆◇◆◇◆◇
「…つまらない所で時間くっちゃったな。」
やっと教室にたどり着き開いてるドアから中に入ろうとして…足が止まる。
西日が差し込む教室の真ん中で誰かが抱き合っていた。
誰か…?
間違うハズない。
僕が…
ずっと片思いしてる大葉、だ。
そしてその大葉に抱き締められてるのは…
友達になったばかりの、芹沢。
二人は…
抱き合ったまま、キスをした。
頭が…
真っ白になる。
僕は黙ってその場で反転し、教室を後にした。
ひたすら早足で歩き続ける。
その間も僕の脳内にはたった今見たばかりのあの光景が焼き付けられ続けていた。
「弘樹!」
下駄箱で背後から声を掛けられ振り返る事さえできずにいる僕はその場で立ち止まり声の主を待つ。
「会えるなんてラッキーだな!帰ろうぜ……ってカバンは?」
「…忘れた。」
どこかおかしい様子に気付いたのか祐一郎は前に回り込み俯く僕の顔を覗き込んだ。
「…待ってろ。…ここで待ってろ!いいな?」
そう言われ黙って頷く。
僕は…ただ呆然とその場に立ち尽くしてた。
頭をぐるぐる回るのは…さっきの事。
ずっと…
好きだったんだ、大葉…。
大葉は…覚えてないかもだけど、僕らが初めて出会ったのは中一の夏。
僕が駅前のトイレでカツアゲされてる時に、助けてくれたんだ。
腕に覚えがある僕は途中まで抵抗してたけど相手は高校生のイカツいニイちゃん達で、しかも大勢。
あっさりやられて、金取られて、時計取られて…
「コイツ女みたいな顔してんな。」
言われ慣れたセリフ。
「…確かめてみるか!」
僕の身体に伸びてくる手。
それから顔をそらしキツく手を握ってキツく瞼を閉じた。
その時!
「多勢に無勢ってヤツ?しかも子供相手に!」
低い低い声と共に入口からフラリと現れた大葉。
彼はアッと言う間にヤツラを退治し盗られた物を取り返し、更には殴られた僕の顔の手当てまでしてくれた。
「脅しといたからもう平気だと思うよ。」
優しく笑う顔があまりにも眩しくて…
僕は彼に一瞬にして恋に落ちてしまったんだ。
名前を聞いても「たいした事してないから」と教えてくれずに去っていってしまった背中。
僕は…
その日から大葉の姿を探し続けた。
そんな中学時代を過ごしたんだ。
大好きな…大葉。
でも結局…
告れずにたった今、
僕のこの恋は終わってしまった。
足から力が抜けその場に座り込む。
「…弘樹…。」
いつの間にか戻って来ていた祐一郎の手には、
僕が取りに行けなかったカバンが握られてた。
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