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〇弘樹side
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〇弘樹side
いつもと同じ帰り道。
日が落ちて…
すっかり暗くなった空をぼんやりと照らす街灯の下…僕は祐一郎に手を引かれて歩いてる。
あれから頭が上手く回らなくて…
そんな自分に苛立つ。
辺りがザワつき、徐々に明るくなって来た。
…駅はもうすぐそこ。
でも…
こんな気持ちのまま寮に戻って、幸せそうな顔する芹沢の顔なんて見れない。
…傷付けてしまいそうだ。
「……着いたよ。」
「ありがとう祐一郎。」
繋いだ手を解こうとして…逆に強く握り込まれる。
「…弘樹…ウチに来なよ。」
…祐一郎の言う"ウチ"はヤツの実家の事。
僕の家の隣り、だ。
「…大丈夫だよ。ありがとな。」
それだけ言って手を離し…
送り出した祐一郎の背中を見送った。
僕は…
やっぱり全くダメで、寮に戻れずそのまま駅ビルの中に逃げ込んだ。
本屋で立ち読みして…
CDショップで新譜の試聴して…
お気に入りのジーンズショップを見て回って…
なのに…
一向に時間が進まない。
途方に暮れてる僕は…階段の踊場で足を止め、窓の外の…街の明かりを見つめた。
…どこに行けばいいんだろう…?
一つ溜め息をついた。
「気は済んだ?」
声を掛けられ振り返ると、階段に座り頬杖を付く祐一郎がいた。
「…なにしてんの?」
毒づく僕を気にせず立ち上がり尻をはたく。
そのまま下りてきたヤツは僕の正面に立った。
やたらと背がデカいコイツを、下から見上げなきゃならない。
「弘樹ストーカー。」
「なんだそれ。」
伸びてきたヤツの左手が僕の右手首を掴んだ。
「…なにすんだ!」
「お前連れて帰るって、家に電話しちゃったからさ。」
言うなり僕の意思をムシして歩き出す。
「ばか…離せっ!このクソ野郎!」
「…クソとか言うなよ。」
苦笑いして切符を買うと丁度ホームに入って来た電車に飛び乗った。
「ナイスタイミング!」
久し振りに乗った電車は…少し混んでて。
吊り革を掴めない僕は…仕方なく、祐一郎のシャツの袖を掴んだ。
◇◆◇◆◇◆◇
しばらく振りに訪れた祐一郎の家族は、昔とちっとも変わりなく僕を迎えてくれた。
オジちゃんとオバちゃん…そして祐一郎の二人のお姉ちゃん。
晩ご飯には僕の好物の物ばかりが出た。
食欲ないにも関わらず、みんなでワイワイしながら食べる楽しさも手伝い、お腹が一杯になる程に食べた。
その後、お風呂を勧められて…大きな浴槽で日頃の疲れを解消し、巨大なストレスを洗い流した。
用意されてた着替えは、祐一郎のTシャツとスウェットのズボン。
下着は…わざわざ買いに行ってくれたのか、袋に入ったままだった。
そして…
今僕は、祐一郎の部屋の前に立ってる。
なのにアノ日の事が思い出されて…
ドアを開けられないままでいた。
「弘樹?」
声のする方を向く。
階段を上がってくるのは…風呂上がりの祐一郎。
僕は…
ずいぶんと長い間ここに立ってたらしい。
「入れよ。」
そう言って簡単にドアを開けて、先に中に入ってく。
その後に続いて僕は…恐る恐る中に入った。
こざっぱりしている部屋には机と椅子、MDケース付の棚の上にはステレオが置いてある。
そして…
窓際にはセミダブルのベッドが一つ、だけ。
…やっぱり…
添い寝?
呆然とする僕をよそに、祐一郎は髪をタオルドライしながらMDステレオのスイッチを入れた。
流れ出すのは、洋楽。
聞いた事はあるけど…誰のかまでは分かんない。
「そんなトコいないでコッチ来いよ。」
心臓がバクバクしてる。
そんな僕の気も知らず、腕を掴み強引に座らせられたのは…ベッドの上で…。
妙に緊張してる僕は目の前を動き回る祐一郎を凝視してた。
「睨むなよ。…今日は何にもしないから。」
…信用出来るか!
アノ日だって、いつものお前だったのに…イキナリ、ムリヤリ…シたんだからな!
「信用ないのね、俺。」
「当たり前だろ。」
僕の即答にむくれた祐一郎は、机に寄り掛かり僕を見た。
「…我慢するから大丈夫だよ。」
「…は?我慢?」
「うん。今も…涙ぐましい努力で、性欲を抑えてんだぜ?」
はぁ…。
なんて祐一郎は生意気に溜め息付いてみせた。
なんて言われようが僕の中ではコイツはまだ、幼馴染みの"泣き虫祐ちゃん"のまま。
なのに…!
そんなヤツにヤられて…痛くて、悔しくて大泣きしたなんて。
腕力で勝てなかったのも含め、僕のプライドをかなり傷付けてた。
だからコイツに抱かれるなんて有り得ない!
…でも…ヤられっぱなしってのもイヤだ!
「…祐一郎は…セックス下手くそだからな。」
ヤツを見たままそう言い捨てる。
すると祐一郎は一瞬手を止め僕の方を振り返った。
「…なに。ケンカ売ってんの?」
「…ホントの事だろ。」
バカにしたようにそう言うと、いつものヘラヘラした顔はどこへやら。
目を吊り上げて僕を見据えながら近付いて来た。
「…あんだけで分かんのかよ?」
「分かるよ。」
そう言って僕は祐一郎の襟口を掴んで引き寄せキスをする。
突然の事にひるんだヤツは、体をビク付かせた。
そんなのシカトで、開いてたヤツの唇の隙間から舌を入れて絡めてやる。
「…ん…」
なのに不覚にもしてる僕の方が声を上げてしまった。
すると祐一郎はすぐに反撃に入った。
襟口を締める僕の手を外し、キスしながらベッドに倒してきて。
掴まれた両手はベッドに押し付けられ、角度を変えて侵入する祐一郎の舌に…僕は…
コーフン、した。
舌が解け唇が離れると…霞む視界に、イヤラシイ顔した祐一郎がいて。
「…自分から仕掛けてきたくせに先に感じちゃってどうすんの?」
ノドの奥で低く笑う様にムカついた。
「ウルセェ!…いいから僕をイカしてみろよ…この下手クソ!」
「…言ってくれるね、弘樹。後悔すんなよ?」
…もうしてるし!
でも……
も一度したら前回のムリヤリはチャラにしてやるよ。
だから…
「…上手くヤれよ。」
「俺を忘れられなくしてやる。」
そう言って…少し乱暴にキスしてきた。
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