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お兄ちゃん相関図模様
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谷崎「……あの、奏一、忽那、俺もいるんだけど」
亮司の声にハッとして我に返った。
彩さんの声に聞き入るあまり、俺と彩さんの距離が息がかかるほどの距離だということに、今気がついた。
俺……。
忽那「あはは、別に忘れてないよ」
谷崎「いや、忘れてた。奏一は俺の存在忘れて忽那の声に聞き入ってたよ」
忽那「私は亮司の中身は好きですよ、中身、は」
谷崎「おいそこ!何故区切る、中身〝も〟だろうが」
忽那「亮司は好みから外れますねぇ」
そう言って、彩さんは亮司の半袖の袖口から見える筋肉をチラ見する。
谷崎「〝は〟ってなんだ、〝は〟って」
谷崎が、戸惑って固まってる俺を気遣って、わざとでかい声出してくれてるのは分かってた。それに乗っかりふざける彩さんにも…
忽那「亮司だって奏一が好きでしょ?」
谷崎「え?あ、普通にな、普通に好きだぜ」
忽那「でも、好みじゃないから恋愛対象にならない」
谷崎「そうだ…、忽那の理論に納得じゃないが」
忽那「私は、奏一の中身も好きですし好みですから」
えッ!?
彩さんは、俺の事よく知ってる。
弟の修二を理解したいセクシャリティーを理解したいと思いながら、ゲイというものに嫌悪があることも知ってる。
彩さんがバイである事は、前から知ってたが………。
忽那「奏一は私を気持ち悪いと思いますか?」
彩さんは、保険医だ。性同一性障害の生徒と会ったこともあるし、そういう子の話を聞いてあげることもあるから、生徒を一人の人として接してる。
だから、今までバイだと言われても、生々しいものは感じなかった。
彩さんがバイだってことは知ってたけど、彩さんが誰かと腕を組み、その相手と情事を重ねる事など考えもしなかった……。
人を見ろ、その言葉の正しさはよく分かる、だが、どうしても、生々しいものは拭えない
奏一「ッ…」
俺は今、きっとひどい顔をしてる。
散々お世話になって、今や1番の友達だと思ってた彩さんを前に、〝気持ち悪いか?〟と聞かれて直ぐに否定できなかった………。
忽那「…」
違う、俺は彩さんを否定したくない。
修二を理解してやりたい。
差別などしたくない。
だけど…
あの日、犬のように拘束され、白濁と唾液とローションまみれで生気の無い死んだ目をした修二が、百目鬼に強姦されてる残像が、鮮明で消えない………
俺はあの瞬間まで、何も知らなかった。
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俺は…、彩さん家から逃げた…。
彩さんが気持ち悪かった訳じゃない、完全な容量オーバーだ。
羚凰「おっはようございまーす!」
奏一「ああ、おはよう」
羚凰はいつも明るく元気だなぁ…
羚凰「ちょっと奏一さん、元気なさ過ぎ!」
奏一「大人は色々あるんだよ」
羚凰「え〜、俺もう成人してるんすけどぉ〜」
人として、個人を人として見る。
男とか女とかそういうことじゃなく…。試しに羚凰をチラッと見てみた。
羚凰を人として見る……、だけど、なかなか難しい。どうしても意識は男の象徴を視界に写す。
彩さんに謝ったほうが良い…、そう思うのにメールも電話もしずらい。
彩さんは別に告白してきた訳じゃない、俺に人を見ろと諭してくれただけ…、自分の好みを口にしてくれただけ、そうだ、好み=恋愛な訳じゃない。タイプだしいい子だけど、恋愛の好きにならないのなんてザラにいる、アイドルなんかもそんなだし…。彩さんは具体的に自分を例にだしてくれただけだ…、そうだ、俺が変に捉えすぎなんだ。
あんな優しい目と声で言われて勘違いを…
『私は、奏一の中身も好きですし、好みですから』
彩さんの中身は?
奏一「ッ…」
羚凰「奏一さん、顔赤いんですけど…」
奏一「ア!?赤くねぇーよ!!」
つい感情的なまま大声を出してしまった。
羚凰が大きな丸めを大きく見開いて驚いてる。
し、しまった!俺のキャラじゃない!落ち着け!落ち着いてオーナー奏一にならなきゃ。
奏一「悪い、二日酔いだ」
羚凰「………保険医さんと飲んだんですか?」
奏一「ああ、あいつとだとつい飲み過ぎてな」
意味もなく、机の上を整理して羚凰を視界から外す。
羚凰「二日酔いなんて、今日朱雀のみんなで集まるの忘れてないっすか?」
そお言えば、今日は前から飲み会があると決まってた。海の家で働く元朱雀の面子を中心とした、引退組の飲み会だ。定期的に開かれ、俺も毎回参加してる。
彩さんのことが気になり過ぎてすっかり忘れてた…。
奏一「忘れてないよ、ちゃんと参加するさ」
羚凰「俺、始めてだから楽しみにしてるんすよ、隣でお酌さして下さいよ」
奏一「お前、初参加なんだから挨拶回りしろ。主催は俺じゃないんだ、主催者に嫌われたら次はないぞ」
羚凰「ええッ!?奏一さんの隣陣取ろうと思ってたのにぃーー!!」
まぁ、羚凰の性格なら、あいつらに嫌われるなんて無いだろうが、俺の隣は毎回予約済みなんだ。
亮司とキラリ、この2人をどかすのは無理だよ羚凰。
俺は酒に弱い。それを隠すというか、カバーしてくれる奴が数人いる。そのバリケードの中に入ってくるのは、不可能だ。
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久しぶりに仲間内で飲み会。
海の近くで、元朱雀の連中が海の家やら居酒屋やら民宿を経営してる、むつと華南をアルバイトとして受け入れ護衛を引き受けてくれたやつらだ。
俺は、谷崎と彩さんの前以外では、お酒は酔っ払うほど口にしない。
会が中盤に差し掛かった頃、半分の奴らは出来上がっていた。
そこで、キラリが突然の報告。
キラリ「私は、本田キラリになりまーす!!2人の愛の結晶を授かりましたぁーー♪」
キラリと本田の授かり婚が発表され、場は一気に盛り上がる。
あの2人は高校卒業した後からの付き合いだったか。
どこか天然な本田にしっかり者のキラリ、お似合いなカップル。
結婚か…。俺にはまだまだ現実味のない話しだ…。
そう思っていたら、盛り上がる会場に逆らうように、ひっそりと誰にも気づかれないように裏口から店を出て行く奴がいた。
一瞬見えた、そいつの顔があまりにも切羽詰まった風だったから気になって跡をつけると、店の外の裏手で月明かりの中、騒がしい居酒屋の声をバックに黄昏ている。
奏一「…吉良。どうした」
鬼龍院吉良(きりゅういんきら)。修二と同じ高校にいた奴で、本田の後輩。彼は朱雀とは関係ないが、本田と仲が良く、海のバイトも毎年一緒にしていた。基本1人で居ることが多いい飄々とした人物だが、本田が誘えば大勢の集まりにも参加する。朱雀ではないが、今はみんな仲間だ。
むつと華南を海の家でバイトさせるようパイプ役を買ってくれた。恩ある人物だ。
吉良「………奏一さん、すいません酔っちゃって」
吉良は酒に強い。だからその言葉に疑問を感じるし、ポケットからタバコを出して咥えても、その手は震えていてライターが一向に付かない。
わずかな月明かりに照らされて見える彼のその表情は、酔って赤いというより、青ざめてて苦しげ。
つかないライターを諦めたように握りしめ、落ち着かない様子の吉良は、大きなため息とともに、タバコを指の間で折ってしまった。
吉良の感情的な場面を見るのは初めてだった。
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