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俺たちの始まり〜修二〜
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早朝の駅前。
揉めてた僕たちに終止符を打ったのは、兄貴の低〜い一声だった。
奏一「てめぇーら迷惑だ、乗れ」
運転席から顔を出した元朱雀特攻隊長の兄貴の鋭い睨みに、マキが驚き、僕と兄貴を見比べてて力が弱まる。僕とむつはチャンスとばかりにマキを車に押し込んだ。
マキを僕の家に連行する間。むつは、マキの手を一度も離さない。
僕らの間に座ったマキを良く観察したが、服に隠れてない部分には乱暴されたような跡はない。マキの言う通り、セフレ?
僕がマキの空いてる手を握ると、マキは、僕とむつに握られた両手を交互に見た後、諦めたように深いため息をついた。
車はすぐに僕の家に到着した。
無言で厳しい顔つきの兄貴が、朝ごはんを作ってくれ。焼いた食パンと目玉焼きと、ワカメの味噌汁を出してくれた。
マキが味噌汁をキョトンと眺めて朝食に手をつけないでいると、兄貴の鋭い眼差しがマキに注がれ、マキはなんとも言えない表情で朝食を食べ始める。
僕の母さんもいたけど、兄貴も母さんも何も言わず事情も聞かない、静かな朝食の時間。
母さんは「ゆっくりしていってね」とのんびりした声で言って。兄貴は、マキの手を握ってるむつをジトッと睨み。それぞれ出勤して行った。
3人きりになり、むつはお腹いっぱいで眠そうに欠伸してる。無理もない、7時なんて、むつは普段寝てる時間。でも、マキの手を握る手は離さない。
むつらしい…。
修二「むつ、僕ちゃんの布団に寝たら?」
むつ「…うん…、ふぁあ…」
眠そうに欠伸して目をこすり、テーブルから立ち上がったむつは、マキの手を引っ張った。
むつ「ほら、寝るぞ」
マキ「は?マジ添い寝?」
むつ「マジ添い寝、黙ってこっち来い」
マキを無理やり引っ張って、僕ちゃんのお布団に潜り込んだむつは、マキをそのまま腕の中に抱き込んだ。
マキ「………。…あの…、むつ?」
マキは、むつの胸の中で、目をパチクリさせてる。離れようとしたけど、むつの抱きしめる力が強くて離れられない。
マキの無駄な抵抗にむつは不機嫌に言った。
むつ「うっさい…寝ろ…」
マキ「…あのさ…」
むつ「何だよ!」
マキ「…ちょっとマズくない?…」
僕ちゃんがリビングから、2人が抱き合って横になるのを見ていたから、マキがそんなことを言ったんだろうけど、僕は全く違うことを考えていた。
むつの行動が〝あの時に〟似ていたから…
あの時…。
百目鬼さんの監禁の後、家に閉じ篭ってる僕ちゃんに会うため、家に侵入してきたむつ…
最初は僕の様子を見ながら近づいて、手が触れた瞬間抱きしめて…離してくれなかった。何も聞かない。ただ強く抱きしめて僕ちゃんの震えが収まるのを待ってくれた。
フフッ。普段は『何で?どうして?どうなった?』ってうるさいぐらい聞いてくるのに。
マキも、むつにあんだけ強引に引き止められて連れてこられたのに、何も聞かれないことに拍子抜けして戸惑ってる。
マキと僕は、少し似ているからよく分かる。
感情的なむつは誤魔化しやすい、でも、聞かれなければ、嘘をつき辛い。
むつの真っ直ぐさは、嘘を打ち砕く。
むつ「修二…ごめん、今日…予定あった?」
修二「ないよ」
むつ「じゃあ、ちょっと…付き合って」
むつが、マキを抱いてるのと反対の手を僕に伸ばしてきた。
むつ、眠そう…。
僕は、マキを挟んで横になり、むつが伸ばした手を握った。
マキがピクッとして、自分の上で繋がる僕とむつの手を見る。
僕たちは、そのまましばらく抱き合った。
ほんの数分で、むつの寝息が響く…
マキは、抜け出そうとしたんだろう、そっと振り返ったけど、僕が起きてるのを見て肩を落とす。
マキ「…ねぇ、帰っていい?」
修二「だめ」
マキ「襲っちゃうよ?」
修二「むつが起きたら、襲われちゃうよ?」
マキ「…」
修二「…」
また黙り込んだマキ。きっと頭の中はグルグルしてるだろう。事実とウソを織り交ぜてここから切り抜けようとしているだろう。
僕は、マキの背中にぴったり寄り添う。
僕が、むつと華南に挟まれて寝てる時みたいに、体を密着させた。
マキの白くて細い首筋が目の前にある。
あんなに大事そうにしてたのに、ネックレスの無くなった首元は寂しく見える。
もう一度、マキにネックレスの事を聞いてみた。すると、マキはへらっと笑った。
マキ「……フフッ、壊れちゃった♪」
修二「どんな風に?」
マキ「うんと、チェーンとトップスの繋ぎが取れちゃった♪」
修二「それなら治せるよ、僕が治してあげるよ、まだ持ってる?」
マキ「…カバンにあるけど、いいんだ。気にしないでぇ♪」
修二「大事な物なんじゃないの?」
マキ「あは♪、ただのネックレスだよ♪」
修二「…マキ、気付いてないかもしれないけど、あのネックレス、結構頻繁に触ったり握り締めてたりしたよ…」
マキ「…」
いつもみたいに「そんなに僕のこと見てるなんて、僕に惚れちゃった?」とは、言ってこない。
…マキのガードが、緩んでる…。
修二「…マキ」
僕は、むつと繋いでる手ごとマキを両手で抱きしめる。背中越しだから、マキの表情は見えないけど。僕とむつの腕の中で、マキがうつむいた。そっと頭を撫でてあげると、逃げるように身を縮める。
きっと今のマキは、頭の中グルグルしてる。
僕が華南に抱きしめられて、過去を話そうか迷ってた時みたいに。…そんな気がする。
あの時の華南のように、優しい声で囁く。
修二「…マキ」
マキ「…何?」
修二「眠れそう?」
マキ「…ッ…暑い…」
あえて聞かない、その方が、マキはさらにグルグル考えると思った。
クーラーは入れてるけど、さすがに2人に抱きつかれたら暑いよね…
「そっか」って答えてさらに体を寄せると、
マキがまたピクッと身を縮める。
積極的じゃないマキって、小さい子供みたい。
払い除けられたりしなかったし、そのまま抱きしめて時間が過ぎていく…
コチッコチッと秒針の音と、スースーと聞こえるむつの寝息。
いつもより細く小さく見えるマキ。
マキ…何があったの?
心の中で何度も呟いた。
マキは黙りしたまま、時間は過ぎていく。
コチコチ聞こえる時計の音に、僕はジッと待った。マキはきっと今、微妙なところだろう、核心に触れるネタはあれけど、核心に触れるのは、きっとマズイ…、マキから口を開かないことには、きっと逃げるだろう…。
マキの言葉を待ちながら、自分が待つ立場になってみると、ソワソワモヤモヤする。自分は散々むつと華南に待たせたのに。
むつと華南もこんな気持ちだったのだろうか?話してもらえないって結構しんどい…。
…ほんと、申し訳ない事をした………。
マキ「…しゅ…じ…」
それは、かすかな声で、多分僕が眠っていたら諦めようと思ってたんだと思う。
修二「ん?」
マキ「ッ……、修二は、…いつからむつが好きだった?」
修二「…小1の時からだよ」
マキ「…諦めようとは思わなかったの?」
修二「思ったよ、何度も、何十回も」
マキ「……でも、諦めなかった…」
修二「ん〜、正確には、諦めてた。むつに気持ちを伝えることも、むつを好きじゃなくなることも、無理だった。だって、毎日好きになるんだ。だから、好きだけど、親友でいようって決めた」
僕の話しを聞きながら、マキが振り返り、モゾモゾ動いてこっちを向く。
マキ「よく、そんなのが続けられたね、そっちの方が辛くない?」
修二「最初は平気だった、むしろ楽だったよ。むつのキレやすい性格が女の子を寄せ付けなくて、取られる心配無かったから…」
マキ「あぁ…分かる」
修二「中学に入ったら、むつの不良っぽさがカッコイイっていう子が現れ出してね、そっからは気が気じゃなかった。それに、丁度その頃、体は大人へと変化して、むつの夢見て夢精して、精通。側にいたいだけだったのに、欲が生まれて、もうどうしようもなくなった。そっからは辛かったかな?…」
マキ「その時、百目鬼さんに会ったの?」
修二「…うん」
マキ「百目鬼さんを好きにはならなかったの?」
僕は、百目鬼さんとの出会いを、マキに話した。そして、最後に、百目鬼さんに気持ちを許していたけど、好きになることは無かったと説明した。
マキは、僕をジッと見つめ、それからうつむいた。
マキ「…卒業して、今日まで、3人で上手くやってた?修二は不安だったでしょ?…2人の周りには女の人がいるし」
それは、呑み込んでる言葉だった。
不安、嫉妬、焦り…。会えない時間がそれらを大きくする。
「平気だよ」そう言いたかった。そんな醜い独占欲は口にしたくない、言ったそばから溢れ出てきそうだから…。
でも…。今、誤魔化したら、マキからも誤魔化ししか聞けない。
修二「…うん、会えない時間は寂しい…、だから、良くないことを考えちゃう…」
マキ「一緒に住んでも、不安はついて回るよ。2人がノーマルだから、一生。それでも幸せ?」
マキの言葉の中に、マキの不安が隠れてる気がした。
僕は、マキの瞳を見つめた。
修二「マキ、僕は、いきなり性格変えたり出来ないから、きっとずっと『2人が、誰を選ぶかは自由だ』って思ってるし、この先のことは分からない。でも、側にいたい。むつと華南を好きな、〝僕の〟気持ちは変わらない、だから、頑張ることにしたんだ」
マキ「…2人が、女の人を取ったら?」
修二「フフッ、そうなったら…みっともなく、泣いて縋るかも」
前の僕は、自分が傷ついたりみっともないことをしたくないと思ってた。
マキ「……僕には出来ないな…」
修二「マキは、僕より頑固で意地っ張りそうだからね」
マキの笑顔は仮面だ。
僕と同じ、本心を隠すための仮面…。
マキ「僕?僕は素直じゃん」
確かにマキは、素直な所は素直だ、でもそれはきっと、外に出しても支障がないと選別した感情。
修二「本当にそう思ってるならどうしようもないね」
むつと華南も、こんな風に僕のこと見えてたのかな?ある日を境に、僕の誤魔化しが、ほとんど通用しなくなった。『そのチャンネルを見飽きた!』そう言って作り笑いを見破る。
マキを通して、自分を見てるようで…。
そして、むつと華南の気持ちもジワジワと理解する。
マキ「……本当だよ、…僕は、我慢なんか出来ない」
マキの顔から、笑顔が消えた。
マキ「…好きな人の側にはいたいし、…毎日エッチしたいし、好きだって言いたい」
初めて聞く…マキの本音…。
マキ「だから、可能性が無いなら、諦めたい。苦しいのは好きじゃない…、あんな思いはもう、したくない…」
修二「あんな思い?」
マキ「ハハッ…普通だよ。初めての人に失恋した時、そう思った……それなのに……またなんて、笑える…」
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