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番外編54ひと夜咲く純白の花の願い
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百目鬼さんの心の迷路の中心は、性癖と修二への罪悪感だ…。
百目鬼さんは修二と再会した時。反省して修二に謝るつもりだったのだろう。だけど、上手くいかず、さらにむつと華南の男二人と寝ている事実に嫉妬と不安を覚えたのだろう。性欲処理でむつと華南が修二を利用してるんじゃないかと…。
だからまた修二への気持ちが抑えられなくなって、あんな事になった。
確かに、色々やった、修二は辛かったと思う、百目鬼さんのやったことは正しくない。でもあれがなければ、修二は修二でむつと華南に過去を話さず、2人とはずっと今だけだと信じきれてなかったかもしれない。
百目鬼さんは、確かに修二にやってはいけない事をした。でも、昔と違い、性衝動を抑え、強姦はしなかった。修二もそれが分かったから、憎まないと言ったのに。
百目鬼さんは修二と腹を割って話さなかった。だから、まだ消化できてないんだ。
次に好きになった人にも同じように酷い事をしないか心配で、メイちゃんの時も雪哉さんの時も、恋愛とか始めから駄目だと思ってるんじゃないかな。
自分は幸せになっちゃいけないと思ってるんじゃないかな。
僕は百目鬼さんのを抜いて上から降り、百目鬼さんを引き起こして向き合う。
マキ「百目鬼さん、あんた修二と直接会って話してきたら?」
僕の台詞に、今まで言葉に詰まってた百目鬼さんがカッと目を見開いた。
百目鬼「そんな事出来るか!!」
マキ「どうして?修二にちゃんと話をすれば、修二は聞いてくれると思うよ?修二はあんたを憎まないと言った」
百目鬼「言ったって!あいつの傷が消えたわけじゃない!」
マキ「…修二の心の傷は消えないよ。あんたがどんなに反省しようと嘆こうと消えることはない」
百目鬼「!!」
マキ「修二を癒すのはむつと華南だ。だけど過去の傷と向き合うのは修二自身にしかできない。修二は今も過去の傷と戦ってる。なのに、その傷をつけたあんたが、グダグダ立ち止まって、罪滅ぼしに修二の友達の僕に優しくしたって無駄なんだよ。
あんたは反省してる、あんたの愛情と性癖が故の暴走だって修二も分かってて、だから呑み込んで許したんだ!!あんたは本当は優しくて修二の悩みを真面目に聞いて諭してくれた、その時のあんたが本物で!その時のあんたには感謝してるって思ったから!あんたは変われるって信じたから、修二は許したんだろうが!!」
僕の強い言葉に、百目鬼さんの瞳が揺れて狼狽えてる。
百目鬼「…俺は…」
迷子の迷子の子犬ちゃん。
ちゃんと進もうよ。
犯した罪は消えないよ。
背負って前進しなきゃ。
だから意地悪を承知で言わせて。
マキ「僕と修二が似てるから?だから突き放せないの?僕の気持ちが〝迷惑だ〟って正しいこと言ったのに、それを引っ込めて優しい言い方に直さなきゃいけないのは、修二の代わりに罪滅ぼしに優しくするの?」
百目鬼「違う!お前はお前だ!代わりでもない!」
マキ「じゃあなんで引き止めるんだ!!」
百目鬼「ッ…」
マキ「〝好きだ〟〝付き合って〟。『無理だ』、『付き合えない』〝さようなら〟それでいいじゃん」
百目鬼「…ッ……」
マキ「怖がんなよ!僕は修二に話したりしない!これは僕と百目鬼さんの問題だ!
僕はちゃんと告白して振られた。最初はふざけんなって言われたけど、百目鬼さんは僕の気持ちを信じてくれて、〝気持ちに応えられない〟って、ちゃんと返事をくれた。だからさようならするんじゃん。なのに、引き止めたりして。会ったら襲うって言ったのに連れ戻して…。期待するなって方が無理だ。連れ戻したんなら責任取ってちゃんと百目鬼さんの気持ちをぶつけて、ちゃんと振ってよ。迷惑なら迷惑でいいんだよ。
僕を振ったって修二を傷つけるわけじゃない。僕に酷いこと言ったって修二を傷つけるわけじゃない。修二にしたことを反省して償いたいなら、修二を傷つけてしまった自分の罪をちゃんと背負って前に進んで!
次に好きになった人を心の底から幸せな笑顔に出来るように。修二の信じた〝優しい百目鬼さん〟が、ちゃんと本物だって示してあげなよ。そうゆう責任の取り方もあるよ?」
百目鬼「…」
マキ「百目鬼さんは、
次に好きになる人に優しく出来る。
百目鬼さんがそうするからだ。
次に好きになる人を笑顔で満たしてあげられる。
百目鬼さんがそうするからだ!
修二の信じた〝優しい百目鬼さん〟は、ちゃんと好きな人を幸せにして自分も幸せにする。それが修二への罪滅ぼしで!責任の取り方だよ!」
言葉を無くす百目鬼さんは、ただ唖然と僕の言葉を聞いていた…
マキ「百目鬼さん…、自分を押し殺しても百目鬼さんの性癖の欲求は満たされないし、無理に押さえつけて渇望すれば、衝動を産むだけだよ。百目鬼さんの周りには、百目鬼さんのことを好きで、貴方を守ろうとしてくれてる人がいるんだよ。一人で戦って抱えて自滅して悔やんで…繰り返して自分を貶めても罪滅ぼしにはならないし。性癖も治らない。
…百目鬼さん自身も分かってるでしょ?
杏子さんや檸檬さん、矢田さんは貴方を尊敬してるし、賢史さんは過去を知っても貴方を守ってくれて、お母さんみたいな菫ママや、優しく癒して理解してくれる雪哉さん。…みんなちゃんと貴方を知ってる、知った上で好きなんだよ。みんな言ってる〝百目鬼さんは口は悪いから誤解されやすいけど優しいんだ〟って。ね?百目鬼さん、もう、自分を縛るのはやめようよ。百目鬼さんは愛されたいんだ、ずっと愛されたかったんだ。百目鬼さんの生きてきた人生がどんな風だったのか僕は分からない。
だけど今の百目鬼さんを知って、百目鬼さんの隣を一緒に歩いてくれる人がいっぱいいるって知ってる。百目鬼さんが背中を向けてるだけで、みんないるんだよ?修二だって、百目鬼さんの前進を願ってるでしょ?」
百目鬼さんの瞳が大きく揺れた。
泣きそうな瞳から涙が流れることはない。
顔を歪めることも、声を出して泣くこともなく、静かに、言葉無くうつむいた。
涙はないけど…、
泣いているようだった…。
マキ「百目鬼さん、修二と話しをして来なよ。修二はきっと聞いてくれるよ」
百目鬼「それだけは出来ない…」
マキ「どうして?」
百目鬼「奏一と約束した…」
マキ「奏一?」
百目鬼「修二の兄貴だ…」
ああ、あのイケメン美形の強面の人か…。
マキ「奏一さんに話してみれば?」
百目鬼「何を話す?今更…何を…」
マキ「今だからじゃない?百目鬼さんにとっては今が、全部話せる時なんじゃない?もちろん、会わせるかは、奏一さんの決めることで、会うかは修二の決めることだけどさ、修二は百目鬼さんが話したいって言えば、話しを聞いてくれると思うよ。むつと華南は同伴するって騒ぐと思うけど、修二は一人で会いに来ると思うな」
百目鬼「…それは…」
狼狽えた瞳がうつむく。
僕は優しく背中を撫でてあげた。
項垂れるライオンは情けないほど小さく見えて。思わず抱きしめて背中をさする。
マキ「百目鬼さんにはさ、修二と会って話すのが必要だと思う。会って話をして、見て来なよ、今の修二がどんなに幸せそうに笑うか。どんなに修二らしくしているか。ふふッ、あの3人たまにケンカしてたりしてるけど、むつと華南の話しをしてる時の修二は、惚気にしか聞こえないし、表情豊かだし、いい顔してるよ」
百目鬼「そっ…か」
百目鬼さんのした事は許されない。
だけど、修二は百目鬼さんの前進を望んでる。だから、百目鬼さんは立ち止まるんじゃなく、前進するべきだ。
罪ごと全部背負って前進しなきゃ…
僕は百目鬼さんを抱きしめる。
僕は全裸で、百目鬼さんのチャックは開けっ放しだけど。
心を込めて抱きしめた。
〝大丈夫、百目鬼さんは変われる〟
百目鬼さんは涙は流さない。でも、僕の胸に擦り寄る彼は、泣いているんだと思った。
百目鬼「…」
大きな体を抱きしめて、優しく背中を撫でて、泣かないライオンを腕に抱く。
少しでも癒しになれば…
少しでも楽に息ができるように…
百目鬼「……迷惑なんて言って悪かった」
ッ…もう、いい…
マキ「…それはもう聞いた」
百目鬼「違う……迷惑なのは…ッ…俺自身の問題なんだ…」
百目鬼さんの手が僕の背中に周り、抱きしめ返された。
ドキッとしてしまい、腕の中のライオンを見ると、大きい体を縮込ませてうつむき顔を隠してる。
やがてゆっくりと、顔を上げて、複雑になった表情で僕の肩に埋めて抱きしめ直してきた。
何?
百目鬼「お前の気持ちには答えられない、お前と付き合うことは出来ない………、だけど………、嫌いじゃなくて……でも、好きとかじゃなく……………………ほっとけない…………かわ…いいんだ…、かわいくて…困る…」
!?
………………………………………………………………………………………………。
ッ!!…
…酔っ払いが…なんか言っちゃってる…
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