アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
6 文化祭 〈隆太郎 side〉
-
純が話してくれた内容は、正直俺の予想を遥かに上回るほど壮絶で。
それなのに1人で生きようとしていた純は強いと思うと同時に、あまりに儚く見えた。
必死に泣くのを我慢しながら、このまま人魚姫のように泡になって消えてしまいそうで。
俺はじっと見つめてくる純のことを引き寄せ、純の頭を俺の肩に押し付けた。
いや、すげえカッコつけた感じになってるけど、、、
あんな上目遣いで見つめられてたら、本気でキスしたくなるし、つうか気になって話せないし。
「え、え、な、なに??」
「このまま聞いて。」
よし、これでいいな。
俺はゆっくり話し出した。
「俺は光さんと中学2年の時に出会ったんだ。あー、なんて言うか、家族と上手くいってなくてさ、俺一時期荒れてる時があって。えっとその、夜中に街を歩き回ってたみたいな。」
「ふーん。」
言えない。
実は女探してたとか絶対言えない。
俺はあの頃、話しかけてきた女とそのまま寝るか、喧嘩ふっかけてきた奴らをボコボコにして帰るっていう、中2とは思えないほどクズな生活だった。
「ま、まあ、昔から背は高かったから、中2ってことはバレたこと無かったんだよ。でも、ある日歩いてたらさ、チンピラに絡まれて。そしたら、後ろからいきなり手を引っ張られて、まじ猛ダッシュ。そんでそのままBARのスタッフルームに連れてかれて。訳が分からなかったよ。」
「え、そのBARって。」
「あー、いや、純のおじさんがしてるとこじゃない。なんか、光さんのお友達がやってるとこ。そっから俺そのまま2時間説教されたの。」
「兄さんが説教!?怒るの!?」
「やっぱり純は怒られたことないかー。それが正解だよ。」
俺は人生で1番怖かったのはこの2時間だと思う。
『お前みたいなちんちくりんが、何調子こいたことしてんだバカが!!』
『あぁ?親?うるせぇ、なに言い訳してんだ!てめぇの人生の癖にお前が今自分で潰してんだかんな?誰かに愛されたいんだったらなぁ、お前が誰かを愛そうとする前に、自分のこと大事にしろってんだボケナスが!!!』
『俺もお前とは比べ物にならないくらい天使のような可愛いこの世のものとは思えないほど純粋なお前と同い年の弟がいるからな、お前のことも面倒見てやるよ。有難く思え。』
、、、多分だけど、純の前ではデレデレだったんだろうな。
「その日から、ご飯奢ってもらったり、親と上手くいかない時に相談乗ってもらったり、そのBARにいつでも来ていいよって、光さんの友達に言ってもらって、そのBARの店主薫ちゃんって言うんだけど、その人に合気道習ったり、今の俺がいるのは間違いなく、光さんのおかげだよ。」
「薫ちゃん?んー、聞いたことないなぁ。そもそも、兄さんの友人関係とか全然知らない。」
「まあそうかもな。今度会いに行こう。」
「え、会いたい!!」
純はバッと顔を上げて嬉しそうに俺の顔を見た。
ダメだ、尻尾と耳が見えてきそうだ。
「光さんさ、今日の純も可愛かったとかいっつも俺に連絡してきたり、一緒にいる時も優しい顔するのは純のこと話してるときだけだったから、ほんとに光さん純のこと好きだったんだ。俺の弟は天使なのにその辺の身の程知らずの男が近寄ってくるのが腹ただしいから、警察官になってそういうヤツらを全員公的に消し、、、じゃなくて、こらしめたいって。だから大学やめようとしてたんだよ。」
「え、兄さん警官になりたかったの、、?」
純が大きな瞳をより一層大きくさせている。
光さん言わなかったんだな。
「そ、多分だけど、光さんがこの高校勧めたんじゃない?ここ寮制度あるからさ、純が寮に行ってる間に警察学校行こうかなって思ってたっぽい。そして、俺は純のことを頼まれた。」
「え?」
『なぁ、隆太郎。お前頭いいだろ?だったらさ、純と同じ高校行ってくんね?俺の代わりに純のこと守ってよ。俺以外に純のこと任せられるのは、隆太郎しかいないし。あ、でも、純と結婚する時は俺に勝ってからじゃねーと認めねぇからな。』
この時は、いや、俺が男を好きになるわけねぇと思ってたし、純が可愛いとは聞いていたけど嫁はないって思ってたし、そもそも光さんに勝てる男なんて何処にいるんだって思ってた。
「光さんが死んだって聞いて、俺は直ぐにこの高校に行くこと決めて、そして、純と出会った。もしかしたら、俺の事を光さんから聞いてないかなって思ったんだけどねー。」
男二人に追いかけられてる純を初めて見た時、多分俺は一目惚れしたんだと思う。
ああ、ほんとに天使がいたんだと思った。
俺は光さんのために純を守ろうと思ってた。
けど、出会った時から今日まで、俺は純のことしか考えてなくて。
まだ純には言ってやらない。
俺の所に堕ちてこない限り、絶対に言う気は無いし、純が幸せな人生を歩めるんならそれで良い。
だから今は、、、
「俺は、純のためになら何だってするよ。だから、もっと頼って。俺これでも光さんが見込んだ男だからね。」
俺はギューっと純を抱きしめながら頼って欲しいと言った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
51 / 64