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今日も一心不乱に走る陸上部の仲間達を横目に、俺は部長の横に立つ。
部長の視線を感じて口を開いた。
「部長、俺でよければ宜しくお願いします」
まだ迷いがあるからか目を見て言えず、グラウンドを眺めたまま言えば、優しい声が頭から降ってきた。
「ありがとう。よろしくね」
昨日の今日だというのに驚きも動揺も見せず頷く姿を見て、こっちが驚いてしまう。俺がOKするのを分かっていたかのように。
「今日から一緒に帰ろうか」
「はい」
はっきりした理由はないがある訳ではないのに、すいませんと口から出そうになったのをグッと抑えた。
それは、どうしてかなんて考えても意味のない事。
「じゃ、練習続けようか」
部長はポンポンと俺の頭を撫でて他の部員のとこへ向かった。いいんだよと、そう言ってくれてる気がして少しだけ気持ちが軽くなる。
そして直ぐに俺も恋人となった背中を追った。
(……今は部活に集中しよう)
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その日の帰り。部長と初めて一緒に帰った。恋人というよりも部活の延長線な雰囲気で先輩と後輩という関係に安心した。今すぐ恋人らしい事は出来なかっただろうから。
お互いに走る事が好きだからか会話が途切れる事もかったし、無口と言われる俺でさえ話が止まらないほど楽しいと思った。
それから毎日、部長と一緒に帰った。部長の話は勉強になる事ばかりで、ますます尊敬する気持ちが強くなり信頼関係も強くなった気がする。こんな雰囲気なら付き合って良かったかもと思った。いい方向に進んでいると信じて疑わなかった。このまま俊哉の事を忘れられるかもしれない、この時は本当にそう思ったのだ。
ただ俺は部長の優しさに甘え、自分の気持ちから逃げたかっただけなのだ。
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