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ひねくれ者の、
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何度も重ねて熱を帯びた唇が、名残惜しげに鳴いて離れていく
「、」
「は、ぁ…」
閉じていた瞼を開けば不安げに揺れる双眸が見える。
この気持ちに名前をつけるなら、
それは愛しい、とか愛ってやつだと思う
初めて恋を知った時にはよくわからなかった。
あの時は、嬉しいとか好きって感情だけで別れて始めて苦しいってことを知って
俺はいつも誰かに与えられるばかりだ。
でもそれじゃダメだって気づけたから、今度は、今度こそ…
俺が身体を起こせば、陰りがなくなった金井は眩しそうに目を細める
と、
「ごめん、」
「それは何に対して」
「俺、最近ダメなんだ。」
腕を目元に乗せて視界を遮る金井
そして、やっとぽつりぽつり話し始めた
「伊澄さんといると歯止めが効かなくなる。付き合い始めた時は、我慢できたし…それこそ、一緒に入れればそれでいいって思ってた。」
「…」
「でも、上総の一件以来は伊澄さんと一緒にいるともっとって思うことが増えたし、他の人との付き合いがあるのはわかるけどすごいムカつくし、ハルさんと一緒にいるのを見た時はもうなんか訳わかんないくらい頭に血が上って、馬鹿みたいにそれを伊澄さんにぶつけた」
「え、と」
「本当にダサいし痛いし、それでも伊澄さんに会いたくて仕方なくなるし、でも会ったらいろいろ止められる自信もないし、でも逆に会わなかったらハルさんと付き合ってた頃の伊澄さんとか想像して嫌になってもうなんか…「ちょ、っとまて」」
金井の口からスラスラと出てくる言葉たちに引っかかってくれて遮る。
つまり、それって…
「なに…って、」
遮られたことに不服そうに腕をずらしてこちらを覗く金井
「伊澄さん、なんで笑ってるの?」
「は!?いや、そんな…だって」
どうやら口元が緩んでいたらしく金井に訝しげに見つめられる
いや、だってそれどう考えたって
「お前、ヤキモチ妬いてたってこと?」
「え、」
ヤキモチ、の一言に固まった金井
まあそれだけではないけれど、話の根本の問題というかハルが何やかんやと言っていたのは明らかにそれが原因ではないだろうか…
「…」
「…」
時計の秒針が一周する程度の無言が続いた後…
「え!?ヤキモチ!?だ、だって、え、でも!?」
「…」
金井はワタワタと俺の下で慌てだして顔を真っ赤に染めていた
よく金井は俺に可愛いと連呼していて、成人男性にそれは無いだろう…と思っていたが
うん、これは…
「うそ!?俺そんな事で悩んでたの!?!?こんなに!!!うわー!ダサい!俺すっごいダサいじゃん!!」
「お前、可愛いな。」
「っ!!やめて!そんなニヤニヤして見ないで!!!無理!俺いま伊澄さんにそんなこと言われたら泣く!!」
「ははっ、お前、可愛いわ」
「やーめーてーー!!!!」
顔を手で覆ってぎゃあぎゃあ騒ぎだす金井
夜中だということも忘れて俺も声を上げて笑ってしまう
そういえば、この間小森も言っていたな。
『翔太は本気になるなんて初めてだから、どーせ不安なだけだよ。ほんとバカっていうか不器用っていうか』
なるほど、ここまでか。
嫉妬やヤキモチといったことも知らなかったのか…
「ゔぅ…ほんとにダサすぎて泣きそう」
「海行った時から知ってる」
「それでも俺はカッコつけたかったの!」
「でも俺は、お前が嫉妬してくれてたこと知れて嬉しかったけどな。」
そう、単純に嬉しかった。
お前の初めての感情を知れて、俺ばっかりだと思っていた不安は本当はお前も持ってたんだって知れてよかった。
ここまで俺の事を考えて悩んでいてくれたことが、嬉しい
「ッ〜!!ずるい、ホント敵わない。伊澄さんって、カッコよすぎると思う」
「俺も男だからな」
「何それ可愛い」
「ほんとお前馬鹿だな。」
「伊澄さんが言うならそうなのかも」
「…ふはっ」
「…ふっ、」
どちらともなく笑みがこぼれる
深夜の窮屈なベッドの上に響いた笑い声
でも頭の片隅ではわかってる。
金井のもう一つの悩み、多分こっちが本命
あの海の日に、俺が言った"話していないこと"あの時も不安に揺れていた声を思い出す
嫌われるかどうかなんてそんなの今はわからない
話してから考えても遅くない、よな?
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