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ひねくれ者の、
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「…、」
話そう、と決意したはいいがどう切り出したらいいのかがわからない。
ハルと付き合ってるのが両親にバレた後、また間違いを犯した。
俺は一度だけ外で知り合った本当の名前も何も知らない、年上の男と関係を持った。
耐えられなかった、俺を全部否定する日々に
認められたかった、俺は普通でなくてもおかしくはないと
それがそもそも間違いだったのだけれど
その日だ、俺の身体に消えない傷ができたのは、
あの日の母さんは今までで一番叫んでいたな
『どうして言う事聞かないの』
『気持ち悪い』『あなたはおかしいの、病気なの!』
『私の息子がこんなにおかしい子なはずないじゃない!!!』
ごめんなさいを繰り返した。
その度に何度も押し付けられたアイロン
母さんに、もう俺の声は届いていなかった。
それからはできるだけ肌を出さないように必ず夏でもカーディガンといった羽織をどんなに暑くても着ている。
普段生活する上で思い出さないように
逃げ続けるために、それでも忘れることは出来ない
でも、
それはもう終わりにする
逃げるため、自分を守るために纏っていた布切れ
そんなもので大切で愛しい人の不安を取り除くことが出来るなら
そんなもの、喜んで脱ぎ捨ててやる。
やっと、そう思えるようになったのだから
「…金井」
「なに、伊澄さん」
好きだな、
俺が呼べば直ぐに優しく返事してくれるところが好き
「俺の事、す、きか?」
「何でそんな自信なさげなの、当たり前でしょ
好きじゃなかったら伊澄さんのことこんなに考えてないよ。すごい好き、大好き、ちっちゃな事でも嫉妬しちゃうくらい超好き」
さも当然だ、とでも言うように言われた言葉
好きだから、言えないこともある。
嫌われたくないから、言えないこともある。
本当にその通りだな。
俺は腰を膝の方にズラして金井の手を取り起き上がらせた。
その行動にキョトンっと目を丸くしてた金井
ふっ、相変わらず間抜け面
怖くないといったら嘘になるけど、それよりも家内の膝の上に座ったままということに少しの羞恥が俺を染めあげた。
「伊澄さん?」
そして、俺は身につけていたカーディガンを脱いだ
「ちょ!?」
困惑と焦りの色を見せる金井を無視して
直ぐに中に着ていたTシャツも脱いでみせる
中にインナーのタンクトップも着ていたけどこれも脱いだ方がいいか、と脱ぎ捨てた
「伊澄さん!?なに、しっ…え?」
前から見えるのは左肩から二の腕にかけて残る火傷だけ
背中の痕は見えてはいないのだから、
視線がそこに集まるのはわかってる。
「なに、それ…」
「…俺は綺麗でもないし、可愛くもない。醜くて、嘘つきで、本当はお前の隣にいるのも相応しくない、んだ。」
「、」
無言…
そりゃそうか。まあ、普通こんなん急に見せられたら引くよな
それから俺はこの傷の経緯について嘘偽りないよう話した。
「夏でもカーディガン着てるのはこれを隠すため。嫌われたくなくて見せなかったし、今でも強めに衝撃受けるとフラッシュバックするし、出来るならお前には見せたくなかったよ」
「…伊澄、さん」
黙って話を聞いていた金井が口を開いた
…やっぱり怖いな、耳を塞いでしまいたい
ちゃんと話すって決めて、金井の答えを受けいれようって思ったけど
嫌われたく、ないな。
「い、「嫌いにならないで、くれ…」」
おかしい、こんなこと言うはずじゃなかったのに
醜いだけじゃなくて、俺はみっともなく金井に縋ってしまう
「ごめん、好き、なんだ。金井が…こんな、ことっ、言うつもり…なかった、のに…ごめん、俺…ごめっ…」
零れた本音は次から次へととめどなく溢れ出る
ボロボロと本当にみっともなく涙を流しながら
けれど俺自身にそれを止めることなど出来なかった。
嗚咽を漏らしながら子供のように泣いた。
もう一度、ごめん、と言おうとした時
「伊澄さん!!」
「っ」
少しの怒りを含んだ金井の声で遮られた。
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