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ひねくれ者の、
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「どうして、伊澄さんが謝るの」
「っ、」
「伊澄さんは何も悪いことしてないだろ。謝らなくていい」
いつもよりも鋭い目付きで、強めの物言い
金井、怒ってる?
不安に揺れる瞳に気がついた金井は、ハッとしたあとふわりと俺の好きな笑顔を見せた
「ごめん、怒ってる…けど伊澄さんじゃなくて、えーと、うーん、上手く言えない。でも、伊澄さんは謝らないで何も悪くないんだから」
「、」
その言葉にコクリと頷いて鼻をすする
…俺に怒ってないけど怒ってる?
とにかく嫌われては、いないのか…?
と、
「伊澄さん、傷ってこれだけ?」
「…あとは、背中」
「ごめん、見せて?」
「、ん。」
ゆっくりと振り返り背中を見せた
と、金井が息を呑む音が聞こえる
顔が見えなくなったことにより不安が煽られる。
けれど、聞こえてきた金井の声は酷く優しくまた涙が零れた。
「伊澄さん…触れてもいい?」
「え、あ…あぁ。」
返事をすればゆっくりと、それこそ繊細なガラス細工に触れるように傷跡をカサついた指の腹でなぞられる。
今まで傷に触れられることなんてほとんどなかったから身構える
ましてや自分の好きな相手にだなんて…
「っ」
「怖くないよ、触れてるのは俺だよ伊澄さん。」
「…」
ッ、と醜い身体に綺麗な金井の指が滑る
フラッシュバックしそうになる思考は金井の言葉一つでどこかに消えてしまう
「伊澄さん、もっと触れたい。抱きしめてもいい?」
「な、んで…そんな一々…」
不安より、自分の身体の醜さよりも金井の言葉に羞恥心が湧く
「ンー、せっかくちゃんと伊澄さんの綺麗な身体に触れさせてもらうんだもん。確認しなきゃね?」
「っ、綺麗な、わけ!」
振り返ろうとすればそれよりも強く暖かくて甘い体温に包まれた。
それが、金井のものだというだけで俺は満たされる。
不安な気持ちも全て、置き去りにして満たされていく
「綺麗だよ。すごく。伊澄さんは誰よりも綺麗だ。」
「そん、なっ!わけあるか!!…っ、見ただろ!?触れただろ!?そんな嘘っいらない!!!」
「嘘じゃないよ。伊澄さんは世界一綺麗で、かわいい俺の大切な人で好きな人で恋人でしょ。」
「ちが、う…俺は、綺麗じゃな、」
嘘だ、ってわかってるのに…
信じたいと望む自分がいる。
「俺の言葉、信じてくれないの?」
「…っ、なん、で…」
ずるい、
その言い方は本当にずるい。
「好きだから。伊澄さんが自分を醜いって言うなら、俺がその倍、じゃ足りないか…十倍、百倍かな…とにかく!伊澄さんは綺麗だって告げるよ。」
左肩に柔らかい感触、その感触を、知っている…
何度も自身の唇に重ねられたそれ
「き、たない…から、やめっ、ンっ」
「何言ってるの。綺麗だよ、すごく。嘘じゃない、俺は伊澄さんに嘘つかないよ」
「、そっ、こで、喋るなっ!」
苦しい、心臓が悲鳴を上げている
恥ずかしいのかなんなのかもう訳が分からない
「わ、かった。わかったから!一回、はな、れっ!…ひっ」
「やーだ。ちゃんと伊澄さんがわかってくれるまでやめない。」
ザラザラとした湿った舌で舐められた。
なんともない場所を舐められるのとは全く違った感覚
怖い、気持ちいい、怖い、気持ちいい
二つの相容れない感情が傾きあって、まるでシーソーみたいだ。
こんな感覚知らない、違う、俺は…
「ね、わかる?綺麗だよ、伊澄さんは。」
「ン、わか、った、からあ…ぅあっ」
泣く泣くそう漏らせば金井は満足そうに俺にすり寄って離れた。
ぐるっと身体を回されてまた向かい合わせにされる。
もう、なんなんだ、よ…
ぐすぐすと子供みたいに鼻をすすって金井にしがみつく
「ばか、だろ」
「荒治療も必要かなって、でも何よりムカついたから」
「ムカついた、?」
ムカついたの言葉にやっぱり怒ってたのか、と肩が小さく揺れる
そうすると頭上から苦笑する声が聞こえた
「伊澄さんの全部ちょうだいって言ったじゃん。それは、ちゃんと全部受け入れるってことだよ、それに同意したのは伊澄さんでしょ。なのにあーんな頑なに自分のこと認めてくれないからムカついた!」
「、」
「伊澄さんを泣かせていいのは俺だけだよ。だって伊澄さんは俺のでしょ。だから、たとえ伊澄さん自身であっても、伊澄さんを傷つけるなら俺は怒るよ。」
「ばか。」
「それでも伊澄さんは俺の事好きでいてくれるでしょ?」
「……ばか、」
そう言った俺に金井が心底嬉しそうな顔をしたのを俺は知っている。
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