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「うるせぇなぁ!!照れるわけねぇだろ!!お前、あの頃…犬みたいにどこまでも俺の後を追いかけてきて…。しつこいくらい、『先輩、先輩』って連呼してきて…。」
思い出したのか。頬の紅がどんどん濃くなる。最後は揶揄していたはずの落合まで、恥ずかしくなってきた。
(うわぁ。この人、もしかして無自覚で、俺のこと出会った頃から相当好きだったんじゃ…。)
照れ隠しに、我妻の両手をとって部下は請け負う。
「…わかりました。なら、我妻先輩に会う華金には、一万円を用意して待っています。でも、先輩と一緒にいるための支払いじゃありません。先輩に渡しているのは、ただの偉人の顔が描かれたペラペラの紙切れです。俺と先輩が会ったって証に、俺があなたに渡す記念の紙切れ…ってことで。あと、二人っきりの時、よければ”我妻先輩”って呼んで…いい、ですか??」
我妻は、今までにないほど素直に頷く。
「その…すまなかった。セフレにならないか、みたいな誘いかけて。」
更に、鬼上司は謝ってきた。しょんぼりとした我妻の表情に、部下は懸命に抱きつきたい衝動を抑える。
「い、いいんです。俺も先輩に怖い思いさせたみたいだし…。」
何だか中盤から脅されているはずの側が、強く押し迫っていたような気がする。
「最後に一つだけ、いいか…。」
涙に濡れた頬で、掠れた声で我妻は年下の男に語りかける。落合は大きく一度、頷く。
「…手ェ、もう一回だけ。握ってくれ…。その、今度は優しく頼む。」
そろりと差し出された手に、落合は色好い二つ返事を口にした…。
…えっちなことは、していない。
落合はそろ…っと今まで閉じていた瞼を開き、横目で隣に腰掛ける上司…絶賛いい雰囲気突入中の年上の男を眺める。
我妻は伏し目がちに、二人が重ねた手を見つめている。じっとりと微熱を孕んだような、色気たっぷりの年上の眼差しに、落合はごくりと生唾を飲み込む。
我妻が瞬く度、長い睫毛が震える。頬に落ちた睫毛の影が、そっと揺らぐ。段々と冷めてはいるものの、未だ赤く火照った頬はただでさえ石膏のように艶やかな白だったというのに紅がさしてから、悍ましいほどの美しさがある。
さて、繰り返そう。えっちなことは…、していない。
思えば、全裸の我妻を好き勝手した時は部下自身と酔っ払っていたこともあって、濡れ場は殆ど記憶が残っていない。…今のは正当な話し合いだったとはいえ、泣かせただけでここまで艶美な我妻だ。落合は下唇をぺろりと舐めて濡らす。
ベッドに連れ込もうものなら、と想像しただけで鼻血を吹き出しそうになる落合だった。
(…って!!まだ俺達、付き合うなんてどっちも言ってないし!!)
落合は、頭を左右に振って煩悩を外へと締め出す。
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