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びしょ濡れの、ウーマンスーツのYシャツに下着の形や身体のラインが浮き彫りになってはいるが、この際、織戸は気にも留めない。
「私なら、落合君好みの彼女になるよ??美味しい手料理を毎日振舞ってあげる。子供が欲しいなら幾らでも頑張る。落合君が欲しいもの全部、私が与えられる分だけあげるから…だから。」
「…いらないや。」
遠くで、落雷の音がした。口を半開きにする織戸に、雨に打たれつつも落合は真っ向から挑む。
「織戸はさ、好意を寄せている俺が『欲しい』って言ったら何でもくれるわけ??自分の身を粉にして??俺が好きだから、与えてあげたいって??」
落ちてくる無数の冷たい雨の中。やめてくれよ、水を滴らせながら男は一喝する。
「そんなの…そんなのは、好きな人が『誰でもいい』っていうのと、どう違うの!?」
ぐっしょりと濡れた服が、男女の身体にまとわりついていた。織戸も落合も動きにくい。冷えていく衣服から、ひんやりとした周囲の空気から。温度を一気に吸い取られていく。が、二人共、その場を引くわけにはいかなかった。
「織戸は、俺が好きなわけじゃないよ。織戸が刷り込みみたいに”好き”だと惚れている俺に、尽くす自分を垣間見て言っているだけだ。」
そんな恋は幻でしかない、落合は叫ぶ。織戸が噛み付くように吠える。
「落合君に、恋の何がわかるっていうの!?年上の我妻さんといて、男同士のが楽だって気がついて、結局落合君は男女の恋を面倒臭がって逃げているだけなんだよ!!」
「ちがう!!逃げてなんかない!!」
二人の姿は、最早霧雨に覆われ、屋上の扉からも明瞭には見えないだろう。
「俺が、我妻先輩と一緒にいて知った恋は…ッ!!」
思い描いていたような甘さなんて、ちっともなかった。
苦くて仕方なくって、吐き出したい反面あの人の感触が消え去ったら嫌で堪らなくて。
(ああ…。)
落合はぐっと瞼を落として、思い起こす。…我妻との、今までの思い出。
『あ゛あ゛!?…何で出来てねぇ~んだよっ!!』
当初、落合は上司が苦手で仕方なかった。横暴で偉そうで、ちょくちょくこちらの背後に来ては間違えた箇所をネチネチと指摘してくる。一生相容れない、思い込んでいた。
『…おちあい。おれ、もうだめかも…。』
居酒屋でぽつんと心中を吐露されてから、落合の上司を見る目が変わった。酒に弱い癖に、勢いでのんで盛大に酔っ払ってしまうところなんか意外で目が丸くなった。
『昨日は、お前の一件さえなけりゃなぁ。家に帰ってホテルでも行って、風俗呼び出して気持ちよく抱かれて、眠れていたのにな~…。』
性欲は、あっさり事務的に処理している癖に。
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