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ムキーッ、と怒る織戸に水越は一言。
「お前、どっちに転んでも我妻さんは敵確定なんだな。」
なんか可哀想、と目を細めて鬼上司に同情しかける水越であった…。
タクシーの中は、静かだった。
車の後部席に座る上司と部下の間は、僅か十数センチ。シートに放り出された互いの手。指先が…混じり合いそうなほど、近くにある。
車内にはよそよそしい匂いと、落合から発される若干残った雨の匂いがしている。二人とも、暗黙の了解とばかりに口を噤んでいた。
落合が、ふっと年上の男を眺める。
(せっかく逢引する予定だった華金なのに、うまくいかない上に無茶苦茶だ…。)
我妻は、車窓の外を眺めている。町並みの影を通過する様がまざまざと映し出された双眸が、やけに色っぽく見える。落合は急いで視線をそらす。
(そうか、俺…。)
落合は自分が数分前に口にした発言を思い出す。
『お、俺だって我妻先輩が欲しい、です…。』
『はい。あなただけを丸ごと、欲しいです。』
『俺が、我妻先輩と一緒にいて知った恋は…ッ!!』
落合は恥ずかしさに、上司の真似をして視線を車窓の外に移す。
『…先輩、俺が迎えに行くまでちょっと待っていてくれませんか??今すぐには出来ないけど、長くは待たせません。』
『先輩のところまできちんと迎えに行けたら、その時は…アンタは俺に大人しく抱かれて下さい。』
(”その時”が、来たんだ…。)
一度自覚すると、止められない。落合は、自分の顔が熱くなっていくのがわかった。が、すぐに織戸の忠告を思い出す。
『好きって言葉にしなきゃ、本人が表さなきゃわかんないよ。同性でも、恋人や夫婦だってそこは変わらないんじゃない??…きちんと言わなきゃ、相手はわかんないんだからね。』
(・ ・ ・。)
落合の頭に、一瞬巨大な宇宙が広がった。
(え…??待って。)
車内で、頭を抱え出す落合。
(俺、先輩にきちんと好きって言っている、よね??)
過去の発言を思い起こす、落合だった。
『嫌です!!だって俺…我妻さんと部下以上の関係になりたいんです!!』
(これはノーカンだろ。ニア”好き”。)
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