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二人は、ほぼ同時にジャケットを脱ぎ出す。家にいる時は、多少肌寒くてもYシャツ一枚の方が身体の自由がきくのだ。落合は慣れた手つきでジャケットをハンガーにかけ、相手の服も手渡しで受け取る。年上の男のジャケットも丁寧にハンガーにかけて、皺がつかないよう、窓の近くに吊るす。
「はあ、問題ないですけど…。」
作業が一段落した年下の男は、部屋の隅にある小物入れに駆け寄る。探すこと五分。出てきた緑色の百円ライターを我妻に差し出す。我妻は、サンキュ、と囁いてライターを受け取る。我妻はぎこちない手つきでライターをつけたり消したりを繰り返している。どうやら、つけ方を確認しているらしい。じっと年下の男が眺めていると、上司は気恥ずかしげにしっしっと手を左右に振ってみせた。
「…お前、雨に濡れた後なんだから。浴室でも先に行ってこい。」
「え…。ああ…。くちゅんっ!!」
愛らしい小さなくしゃみに、上司は一瞬の笑いを噛み殺すと落合に命じる。
「ほぅら、言わんこっちゃない。熱いシャワーでも浴びて来いよ。」
我妻の笑いを堪える表情を初めて目にした気がして、年下の男はむず痒い面持ちで大きく頷いた。
「…はい!!」
我妻がもじもじとしながら、相手に告げる。
「それと、あと…。俺も、お前の後で…浴室を借りるから。」
(えっ!?)
目を見張る年下の男に、我妻がぶすくれた顔になる。
「な…っ、何だよ!!文句あんのかよ…っ!!」
「いや…。」
(午後のこんな早い時間から、シャワー浴びるって…。)
手の甲で口元を隠して、落合はニヤニヤ笑いを懸命に堪える。
(…こッ、こういう状況で我妻さんが浴室を借りるってことは…俺、ひょっとしなくてもこの後を期待していいのか??)
くよくよと考え込む部下の背を押すように、我妻は顎をしゃくって浴室に続く廊下を示してみせた。
「おら…、早く行けって。俺だって暇じゃねぇんだ。明日、看病に一日費やすほど余裕があるわけじゃねぇから。」
「…はい。」
(そら、明日ずっと一緒にいてくれるっていう自白ととってもよろしいですか~??)
期待に心いっぱいになりながら、落合は軽い足取りで浴室へと向かっていく…。
十五分後。落合は同じ足取りでダイニングに戻ってきた。我妻に弾む声で伝える。
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