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ロミオとジュリエット 59★
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「なんで、昨夜、しなかったの?」
「あ?…、手元が狂いそうになったよ。」
結の言葉に、ひげを剃っている私は手を止めた。洗面所の鏡に結が映っている。
「一緒にいたのに。」ベッドの中で抱きしめて、それ以上進まなかったことが王子様は御不満らしい。
「今日、オンライン作戦会議なんだ。髭剃りは、今日したかったんだよ。」
「で、その、”する”のと何の関係があるの?」
「ひげが伸びていたら、結が痛いだろ?」
「ふーん。」結は、納得したかのようなそうでないような顔をして顔をそむけた。
内股のデリケートな所に当たったら痛いだろ、とまでは私は言わなかった。
それより、自粛自粛で欲情的な気分になれない。
「結は、剃らなくていいのか。」
「僕のは、産毛みたいなのだから、1週間にいっぺんでいいの。」
シェービングクリームを冷たい水で洗い流す。アフターシェーブローションを軽くたたき込み、手に余ったのを結のあごに塗ってやる。
「いいの、僕は。今日は剃っていないんだから。」からかわれたとでも思ったのか、結が首を振った。
私は部屋に戻り、今日の会議の準備を始めた。
パソコンを開いて、資料に目を通す。
結が、部屋の中でトレーニングを始めた。
柔らかい身体が、バレエ特有の動きを奏で始める。
結が左足だけで立つ。右足を曲げながら外側から右手で足先を掴む。
右足を頭より高く持ち上げて行く。両手で、背中から上げた直立に近い右足を頭の上で両手で掴んでいる。
凄い柔軟さだ、私は思った。10代の女性ならいざ知らず、20代の男性の結がすることに驚く。
次に左足もする。
左足を後ろから上げ、両手で掴んだところで、私に向けて、結はにっこり笑んだ。
全身を反らせる腰に負担がかかるポーズだ。
バレエダンサーとは言え、これを成人男性でするのは至難の業だろう。
正直、結の技に見惚れた。
まだまだ見ていたいが、私も会議が迫っている。
私は部屋着を脱いで、シャツを着てスーツを着た。
オンラインだが、一応スーツを着る。
「ごめん、結。作戦会議は機密情報なんだ。」
「部屋から出ていて、ってこと?」
オンラインとは言え、ブラオミュンヘンの作戦会議に監督である私以外が部屋にいるのはまずい。
「いいよ、試合見る僕も、作戦内容知らない方が楽しいから。作戦会議何時から?」
「日本時間の15時。ドイツ時間の午前8時だ。」
「あと、1時間30分だね。」
「リビング、キッチン、庭でも、どこででも好きなようにしていてくれ。」
「大丈夫、好きなようにしている。」
私は、パソコンの中の資料に気を取られ、「うん、」と空返事だけした。
「結?」
はっと気が付くと、椅子に掛ける私の黒のスラックスの腿の上に、チノパンとレギンスを履いた結の腿が載って来た。
足をからめて、私の片足を自分の方へ強引に引き寄せようとする。
「結?」
結の目が座っている。獲物を見るような目つきで私を見る。
「ごめん、結。今、君の相手をしてやれない。あと1時間30分で、会議だ。」
「1時間30分、あるでしょ?」
「まさか?」
「その、まさかだね。」
「だめ、だめだよ、そんな気になれない。」
「なれば?昨日しなかった罰。」
マジか。
結は求めると逃げるくせに、私にその気がないと妙に積極的になる。
私の膝の上に座り込み、パソコンと私を遮断している。
「これでは、仕事が出来ない。この資料読んでおかないといけないんだが。」
「痛っ。」結が、ゴリッと筋肉の張った腰を私の腿の上で力を入れて動かした。
「昨夜”しておけば”こんなことにならなかったんだよ。」
結が、せっかく着た私のシャツのボタンを外し始めた。
「結、たのむから。」
結をよけようとしたところが、結が私の首に腕を回して体重をかけて床に転がろうとする。
ふたり、もつれるようにして床に転がる。
「結っ?!痛くなかったか?体を打っていないか?」
世界的なバレエダンサーの結に怪我をさせたら大変だ。私はひやりとした。
「大丈夫。」
この状況に満足だとばかりに、結は、にっこりとした。
「仕方ない…。床では痛いだろう。」
私は結とともにベッドにもつれこんだ。
ベッドに押し倒し、結の唇を拾うように、柔らかく次には、強く口づける。
Tシャツをまくり上げ、中のしなやかな体に触れる。そのままシャツを脱がす。
乳首に唇で触れ、吸い上げると、
結が「あっんっ!」と声をあげた。
豊かに張った胸の筋肉を手のひらで包み込み、柔らかく、強く、揉みしだく。
結のへそにも舌を入れ、短いチノパンのジッパーを降ろす。
下着も一緒に取り去った。
結の上半身を起こしてやる。
「後ろに手をついて、膝を立ててごらん。」
「…、こっこう?」結は、何だろうと言う顔をしながら、言われたとおりにする。
「膝を開いて。」
「えっ?!だって明るいし、昼間だし。遮光カーテン閉めてよ。」
「いまさら何を言う。誘ったのは君だろ。私をその気にさせてくれ。」
「でっでも。」結は、黒のレギンスの腿のあたりをさする。
「会議が始まっちゃうよ。」
結が、困ったように下を向いて、足を少し開いた。
足首を開いたが、羞恥に膝がすぼまる。
私は、ベッドに腰を下ろし、結の膝頭に手を載せた。
そして掴んで、ぐいっと広げた。
「ああっ!」
前は見えたが、座っているので後ろは見えない。
「後ろもだ。」
私は、結の身体を起こし裏返す。
膝で立たせた。
結は、裸に黒のトレンカのレギンスのみを付けている。
「やれやれ、これは結の作戦か。」
「え?」
「向こうの鏡で、見てごらん。扇情的だよ、君は。」
突き出した腰はオールヌードで、尻の割れ目から大事な部分が見えそうだ。
私は、結の尻に両手をかけた。
「あっいやっ!」
蕾のあるあたりの両側に親指をかけ、ぐいっと広げる。
更に、少し上向かせる。
隠れていた小さな蕾が、剥き出されて目の前に現れた。
「いやああっ。」
「これから仕事なのに、まったく何てことしてくれる。」
後ろから、足の間に手を入れ、前を愛してやる。
先端から付け根にかけて、細身のものを繰り返し刺激してやる。
足を覆う、黒いレギンスと何も覆っていない白い肌が視覚的にそそられる。
もう一度、結の蕾ある両側の尻の肉を広げ、口をつぐんだつぼみを開かせにかかる。
舌で、蕾を潤してやる。
あごが結のデリケートな部分に触れたが、ひげを剃ったので、痛くはないだろう。
指の腹を濡れたくぼみに押し当て、襞を少しずつ伸ばすように広げていく。
蕾が開いて、ピンク色の中が少し見えるようになる。
バージンの頃と変わらない締まりの良さ、小ささを楽しむ。
数分かけ、中指1本を奥まで挿入する。
「ひっ…。」
前への愛撫で前立腺が膨らんだのを中に差し込んだ指で確かめ、愛撫してやる。
「あっあっあっあっ…。」
男性でも、前への刺激とは関係なく、意識が飛ぶほどの快感を延々と得ることが出来る。
愛撫を続けていると、結の中が私の指に合わせて形を変える。
この反応、本当に愛おしい、と思う。
たとえ身体のつながりがなくても私は結を愛す。
開かれるのを恥ずかしながら、恐れながら、それでも、心で体で懸命に応えようとしてくれる結は本当に愛おしい。
もう1本指を増やし、結の”中”の形を確かめて行く。
そこまで来て、スキンを持っていないことに気が付いた。 これから会議なので、スキンを使いたい。
「ど…、どうしたの?」ふいに指を抜かれた結が、息を弾ませながら言った。
「スキンがない。」
「そんなもの持っていたら、怒る。」
「え?」
「だって、東郷さんのお父さんのお葬式で僕が来ることを東郷さんは知らなかったでしょ。」
「まあ、そうだけど。」
「持っていたら、それ誰のため?」
「だから、持っていないよ。」
「当然だね!」結がふんっと言う顔をした。
致し方あるまい、指では届かない”深い所”まで愛すため、スラックスを緩めた。
「中への前戯が短めだから、痛いかもしれない。痛かったら言って。」
「え?うん…。」結はちょっと不安げな顔をした。
「私を欲しいと思っていて、足開いて、ここが固いと痛いから。怖くないから。」結の蕾に触れながら耳元に囁いた。
慣れてきたとは言え、結の小さな腔内に、私のものが貫通するのだ。
慎重にやらねば、傷つけてしまう。
結の、小さな襞口を巻き込んで痛くならないよう指で広げ、その頭にかぶせるように潜り込ませる。結が悲鳴のような声を短く上げた。
指とは違う、圧倒的な質量が入って来るのを結は、ベッドのヘッドボードを掴んで必死に耐えている。
「んんっ、あっ、あっ!」
「結、緊張すると狭くなるから、リラックスして…。」薄く引き延ばされている会陰や入口を指で撫でてやる。
「でっできな…い…。ああっ!」
前を掴んで愛撫を加えると少し緩んだ。すかさず後ろから、思い切って突きこんだ。
「ひっ、うっ!…。」 スピードを速めてを抽挿を繰り返し、結の中に入って行った。
結のレギンスの両足が私の腿を締め付け、更には”中”が私自身を締め上げて来る。
「うあっ!」 結の尻を掴んでもう一段階深く突きこんだ。
「うああああああああっ!」
1回深く挿入し、律動を繰り返し終えた。
昼間、しかも、仕事を後に控えてのSEXだったので、短めに、しかし濃厚に終えた。
頭がぼおっとする。
「結の奴っ。わざとやったな。」物分かりが良い様で、結は猫のように気まぐれな所がある。
会議が始まった。昨今の感染症被害の状況、この先の試合の見通しなどがドイツにいるブラオミュンヘン幹部から私に説明された。
その間も、先ほどの黒レギンスと白い肌がどうも脳裏にちらつく。
感染症ピークを過ぎたドイツは、ヨーロッパの国々の中で先頭切って、経済の再開を開始している。
独サッカー連邦リーグでは、無観客試合が6月1カ月間だけ開催される。 ブラオミュンヘンも6月末に2試合が組まれた。
私は、至急ドイツへ帰らねばならなくなった。
ヨーロッパの国々は経済を復活させるため、恐る恐る国境間の通行を緩和し始めた。
しかし、日本とヨーロッパの国々の間はまだ緩和されていない。日本からヨーロッパへ、またその逆も入国が禁止されている。
例外がある。
ドイツだと、医療関係者や、長期滞在許可証を持ちドイツ国内に住居を持つ者は入国が許可される。
私は、後者に該当する。
問題は結だ。
こうなったら、結を連れて行きたい。しかし…。
結は、7月まで舞台が休みで、そのあと夏季休暇に入る。
フランスは、ドイツより感染が深刻で、パリバレエ団の再開は、早くて9月だと言う。
「結、君は日本に残るかい?」会議が終わったあと、私は聞いた。
「え?いやだ、東郷さんと一緒に行く!」
「ドイツへ入れるのは、ドイツ国籍か長期滞在許可証を持つ者、その配偶者だ。」
「配偶者…。」
結の顔が途端に曇った。
結には、やはり”配偶者”と言う言葉が引っ掛かったようだ。
私たちは、事実上婚姻関係にあるのに、法律上誰も認めてくれない。
日本のパートナーシップ制度は、日本国に居住している必要がある。ドイツもフランスも同性婚は認めているが、少なくともどちらかがフランスかドイツの国籍をもっていなければならない。
「結がフランスに戻れても、私はフランスに入れない。結はドイツに入れない。このまま日本でご両親のもとで過ごすのも一案だ。」
「ヨーロッパでは会えない?ドイツとフランスは隣の県くらいの距離なのに。」
「フランスは今、海外からの入国者を2週間隔離している。君がフランスに戻ったら、2週間動けないよ。欧州では無理だ。」
「では、僕たちが逢えるのは日本でだけ?東郷さん、日本にいつ戻って来るの?いつ?」
「6月いっぱいで、今期(昨年9月~今年6月)のサッカー試合が終わる。そうしたら、日本に帰国できる。飛行機が飛んでいればだが。」
結が私の腕を掴み、しがみつくようにした。
「せっかく毎日一緒にいられたのに…。」
「結。」
「毎日、夢のようだった。」
「結?いつか、私たちが、穏やかに暮らせる日が来るよ。」私は結の両肩を掴み、そして頬に触れた。
「でも、アンバサダー計画が…。」
「今政府は、感染症対策で2022年のW杯どころではなくなっている。経済効果のために、是が非でも開催したいだろうが、その頃までにパンデミックが収まっていないと無理だ。アンバサダー計画が政府の目論見通りいくかどうかわからない。」
「7月に、また会える。心配しないで待っていてくれ。」
「でも、またパンデミックが起きて再び飛行機が止まったら?」
「結、それでもいつかまた会える。」
「いやだ、せっかく毎日一緒にいられたのに。もう、離れ離れになるのはいやだ!」
結の口元が、急にゆがむ。
ぎゅっと握ったこぶしで目元を抑えた。
結は、まるで子供のような嘆き方をする。
なぜこんなにも、結が寂しがるのか。
パンデミックの不安が、芸術家の繊細な神経を逆なでするのだろうか。
「結、結は、私と出逢う前は、ひとり暮らしをずっとしていたんだろ?」
「うん。」
「フランスに渡った17歳の時から?」
「フランスに行ってから1年は、バレエ学校の校長先生の家でホームスティしていたんだ。だから、ひとりで住み始めたのは18歳から。でも、日本にいた時から公演であちこち行っていたので、働いている両親との時間は少なかったよ。」
結のご両親は立派な方だが、結は、どこか甘えたりない所がある。
子供の甘え欲求が満たされないと、大人になった時パートナーに愛情依存が強くなるのはよくある話だ。
「私は、6月の試合が終われば、また日本に帰国する。君をひとりにはしないよ。」
結の顔は晴れない。
「今までは、何でもなかったんだ。バレエに夢中だったし、必要なサポートはパリバレエ団や楠本さんがしてくれたし。」
「じゃあなぜ?」なぜ、そんなに不安がるのだ。
「…東郷さんに逢ったから。」
「え?」
「東郷さんは、僕の一部、僕は東郷さんの一部のような気がする。分身と言うか…。」
結が言うように、私も互いに一部のような気がする。
普通の夫婦の間柄のような絆があり、心のつながりがある。
しかし、日本の法律上では、私たちにとってかけがえのない絆ですらも、同性同士というだけで忌避するもの、無意味なものにされてしまう。
私は、結を抱き寄せた。髪を撫でた。
結は何か不安を感じ取っているのか、もう笑みを見せることはなかった。
その不安が、的中するとはこの時の私は思いもしなかった。
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