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何も変わらない
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あぁ、なんてことだ。
状況は何も変わらない。
誰も話しかけてくれない。
孤独。
教室の隅っこで席につき縮こまっていた僕は、何も考えられなくなっていた。
周りの声が大きく聞こえる。
クラスの人達の笑う声が全て僕に向けられているような…。
いや、駄目だ。こんな考えがいけないんだ。自己否定ばかりして、周りと関わろうとしていない。
こんなんじゃ、友達なんて出来っこない!!!
せめて誰かと会話しなきゃ……。
僕の席は窓側の1番後ろ。
まるでアニメや漫画の主人公みたいなポジションだよね、ほんと。
前の席の人はまだ来ていないみたいだ。
隣の席の人も……。…来てない。
僕は誰に話しかけるべきなんだろう……。
よくわからなくなってきた…。
そんなことをぐるぐる考えていると、教室の扉が開いた。
「皆、おっはよーーっっ!」
盛大に挨拶をした高身長の彼はなんだか眩しかった。
「ちょ、佐々木じゃん!wおはよ!!」
「え、佐々木この高校だったの?!入学式の時も全然気が付かなかった…!」
「誰?…佐々木くん…?っていうの?」
「そう、私中学同じなんだけど、超面白いよ!」
僕が教室に入ってきた時とは皆の反応が全然違う……。
あれが『陽キャ』…?
僕はあんなにキラキラした人と喋れるのか?
いや、無理だ…。僕にとっては東大に合格するより無理だろう…。
ん、待てよ?
そう言えば僕の隣の人の名前……。
佐々木じゃなかったか??
あれ、あの陽キャは…佐々木って呼ばれてたような…??
え???
僕が固まっているといつの間にか佐々木と呼ばれていた彼が隣に立っていた。
「ねぇ、俺の席、ここで合ってる?」
僕の隣の席を指しながら『佐々木』は言った。
「え、っと……。う、うん、…………多分。…間違ってたらごめんなさい………」
隣に立っていると思えば、いきなり話しかけてくるもんだから僕はおどおどと答えてしまった。
ちゃんと返答できてたかな…?
そんな不安が僕を包む。
「そっか、あんがと!」
そう言った『佐々木』が席につくと、その周りに人が集まってきた。
『佐々木』は笑顔で皆と何かの話題で盛り上がっている。
そのせいで僕は更に居心地が悪くなってしまった。
「はぁ…」
溜息をつき、僕は窓の外を眺めてみることにした。
快晴。
真っ青な空には雲一つ浮かんでいない。
見れば清々しいはずの空は僕の心を更に重くさせるだけだった。
ふと、視界の端に何かが見えた。
ヤンキー??!
え、ちょっと待って、この高校ってそんなに治安悪かったのか…??
見えたのは二人の大柄な男で、その見た目はいかつく、絶対に関わりたくない人だと一目見て思った。
うわぁ…如何にもなヤンキーだ…。王道なヤンキーだぁ………。
ん?
誰かもう一人いる…?
あれは誰だろう?
そのもう一人の人は眼鏡をかけていて見た目から察するに、一先ずヤンキーではなさそうだった。
抵抗…してる?…まさか…カツアゲ…??
ええ…怖い…。
そうしているうちにその三人は体育館裏へと隠れ、見えなくなってしまった。
顔を正面に戻すと、思考回路がだいぶ回復していることに気がついた。
現状は何も変わっておらず、ただただ無駄な時間が経過しているだけであった…。
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