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次のステップ。
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Qちゃんさんは大学3年生で、来年の4月はまだ大学生だ。
「なので、お役に立てないです。」
丁重にお断りされた。
「とりあえず、連絡先を交換させて頂いてもよろしいでしょうか?」
大輔さんはそう言って名刺をQちゃんさんに手渡した。
「すみません、紙をお借りしてもいいですか?」
ママさんにもらったメモ用紙に、Qちゃんさんは丁寧に連絡先を書き込んだ。
それを見ながら、大輔さんは質問を重ねた。
「アルバイトは、どちらのホテルで?」
「はい、・・・です。」
あ。
言われたホテルは、晋作くんの働いているホテルだ。
俺も入学式の後に行った。
大人の会話中なので黙っていたけど、すごく気になった。
「アルバイトは長いんですか?」
ふふ、まるで面接みたい。
どんどん質問を重ねて、Qちゃんさんのことを色々知った。
受け答えだけを聞いているだけで、ちゃんとした人なんだろうなって分かった。
だからだと思う。
大輔さんも、将来の展開を話した。
「そういうわけで、レストランで終わるつもりはないんです。偏見に晒される彼らが安心して相談し、結婚出来る場所を作りたいと思っています。」
「・・・素敵な夢ですね。」
Qちゃんさんも賛同してくれた。
「最初に美容室から始めました。資金をため、経営のノウハウを掴んだ上で、ネイルとオイルマッサージの店を作りました。売り上げも好調で、問題ありません。次の一歩は、飲食店です。これを軌道にのせて、先の一歩に進みたい。」
全ては式場をつくるために。
そのための足掛かりとなる。
「ぜひ、ご連絡ください。」
そう言って、大輔さんは頭を下げた。
「光太郎、食べたか?」
ああ!!
「あ、あの!ママさん!ラップください。」
「あら、なにするの?」
「こんな高級ナッツ、残せません!持って帰って大事に大事に食べますっ。」
ブハッ。
「可愛いわぁ。キミの名前は今日からラップちゃんね。」
「ええ?!って、大輔さん、何笑ってるの?!」
場が和んだ。
さすが光太郎。
本気で高級な特別なナッツだと思ったらしい。
桑原さんも、笑っている。
感じの良い青年だ。
身のこなしも綺麗だし、指先も綺麗にしてある。
話した感じも、良かった。
もう少し桑原さんの話を聞きたい気もするが、光太郎を連れている。
ハタチ未満の子は23時からは警察の補導対象だし、あまり飲み屋に連れてくるものではないだろう。
しかも、もうすぐ酔いの回った連中がやってくる時間だ。
今夜のパートナーを求めて彷徨う彼らに光太郎を見せたくは無かった。
「はい、ラップ。ふふ、大事に食べるだなんて・・・、山ぴーが羨ましいわ。」
「いいだろ?この天然も堪らないんだ。」
笑われながらも、ラップに包んだナッツをポケットにしっかり入れた光太郎の様子を見て、微笑んだ。
「ふふ、やぁねぇ。ゴチソウサマ。」
「じゃ、また。桑原さんも、ぜひ連絡してください。」
「はい。」
そんなわけで、俺は生まれて初めてのバーを初体験したのだった。
「ほら、光太郎いくぞ!」
「うんっ。」
ママって、大迫力だった。
でも、よく笑う素敵な人だったな。
大輔さんの仲良しさん。
またひとつ大輔さんのことを知った。
ふふ。
「山ぴー。」
「なんだと?ラップ。」
手を繋いでふたりで帰る。
夜のデートって楽しい。
俺がハタチになったら、もっと楽しいのかな?
そう聞くと頭を撫でられた。
「無理に大人にならなくって良いんだ。お前のペースで良い。」
そう言って諭された。
俺のペースで大人になる。
大輔さんは俺が焦って傷つかないように、先回りしてくれる。
ギュッと手を握った。
後で絶対、好きって言おう。
いっぱいいっぱい好きって言うんだ。
あと、持って帰ってきたナッツも一緒に食べるんだから。
ね、大輔さん?
こうして夜は更けていき、幸せな気持ちを胸にふたりの家へ帰って行ったのだった。
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