アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
9
-
・・・な、んで?
そのカードケースを確認すると、お兄ちゃんの名刺ばかりがたくさん入っていた。
つまり、お兄ちゃんの名刺入れ。
なんで大輔さんが持ってるの?
そして、なんで大切に仕舞っているの?
ドキドキした。
変な汗が背中を伝う。
ガチャ。
扉に鍵が差し込まれる音がした。
慌てて書類を引き出しに放り込んで名刺入れをポケットにねじこんだ。
「お、お帰りなさい!」
「ただいま。お、掃除してたのか?」
足元のバケツを見て、大輔さんが笑顔を見せてくれた。
「うん、ほんとはご飯作りたかったんだけど、炊飯器なくて。」
「ああ、そういやそうか。」
俺、ちゃんと話せてるかな。
「明日、買って帰ってくるよ。とりあえずメシ行くか?」
「うん。」
バケツを浴室に運びながら、気持ちを落ち着かせようと息を吐いた。
「・・・光太郎?」
背中から声を掛けられて、びくりと肩が震えた。
「どうした?まだ体調悪いのか?」
優しく抱きしめられて、手に持ったバケツを奪われた。
「あ。」
「片付けとくから、寝とけ。メシなら買ってくるから。」
耳元で囁かれて体を離された。
耳を押さえながら、俯く。
「ごめんね、ありがとう。」
ベッドの置かれた部屋に歩いていきながら、ポケットを上からギュッと押さえる。
怖くて聞けなかった。
お兄ちゃんと付き合っていたのか。
その、一言がどうしても言えなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
113 / 872