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「なあ、光太郎。」
赤い5合炊きの炊飯器。
ピカピカのそれを抱きしめた光太郎の様子に満足しながら、頭を撫でる。
「なあ、光太郎、何か気になることがあるのか?」
「え?」
ぴくりと肩を震わせた光太郎の様子に確信した。
「気に障ることがあったか?」
俯いた顎を捉えて後頭部を固定した。
顔を近づけて目を見つめる。
「・・・俺に嫌気がさしたのか?」
途端に涙目になった光太郎に、ため息が出そうだった。
やっぱり、俺か。
「何が嫌いになった?」
「ち、ちがっ。」
慌てて頭を振った瞬間、ぽろりと涙がこぼれ落ちた。
光太郎が炊飯器から手を離して、俺の腕を掴む。
「お、俺、弱くて・・・。」
「ん?」
弱い?
何が?
「俺、悲しくてっ。」
光太郎は時々日本語が通じなくなる。
「・・・何が弱いんだ?」
縋り付くように力の入った手。
その白い手を一瞥すると、そっと唇を合わせた。
「・・・順序だてて話せるか?」
首を振られた。
「も、ちょっと待って。俺、混乱してて。」
まず、俺に対して気になることがある。
そして、光太郎が弱いから悲しくなることがある。
また、そのことで気持ちが落ち着かず混乱している。
・・・何が言いたいんだ?
そして何を言いたくないんだ?
「・・・しばらくしたら言えるか?」
「・・・多分。」
仕方ない。
もうしばらく待つか。
それまで、品行方正で過ごそう。
これ以上、嫌われたくないから。
もう俺には光太郎しか居ないから。
「じゃあ、ケーキ食うか?」
こくりと頷いた頭を撫でて、箱から取り出した。
ぐすぐす言わせながらもケーキを頬張る姿はリスのようで可愛らしい。
・・・こいつが離れて行ったら、生きていけるだろうか。
頬杖をついて食べる姿を愛でながら、山下は嫌な予感を必死で振り払っていた。
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