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夜明けの空。
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押してもらった印鑑。
いよいよ日本を出るのかと実感した。
「うどん、美味しかったです。」
「よかったね。」
風見さんに、うどんをご馳走になった。
正確にいえば、肉うどんとお握り。今日、奏太さんが食べているところをみて食べたかったのだ。
「これから搭乗口の近くに移動するよ。そこでトイレと歯磨きを済ませようね。」
「はい!」
いつもエドワード様もここを通っているのかな?
外国の人もたくさん歩いている。
「晋作くん、どんなことがあってもパスポートとチケットは失くさないようにね。」
「わかりました!」
「あと、飛行機の中で一枚書類を貰うんだけど、シンガポールで提出したら半券を貰うから、その半券も失くさないでね。シンガポールを出るときに必要だから。」
「はい!」
パスポートと、チケットと、半券。
帰りは、おれひとりだからしっかりしなくちゃ。
はじめての飛行機。
はじめての海外。
緊張するけど、エドワード様に逢うためには必要なことなのだ。
「歯磨きが終わったら、エドワードと連絡をとってもいいですか?」
「いいよ、でも俺の見える範囲で電話をしてね。」
「わかりました!」
風見さんは、親切だ。
おれのことをずっと気遣ってくれる。
「杉先生が大好きな理由が分かります。」
「ん?」
「ぼうようりょく があって、素敵です!」
にっこり笑ってくれた。
「晋作くん、包容力ね。」
「はい!」
優しく訂正してくれた。
ほうようりょく。
よし、覚えた。
「さ、パスポートとチケットはリュックに入れて、歯磨きに行っておいで。ここで待っているよ。」
「風見さんは?」
「晋作くんの後に行く。リュックは置いて行っていいよ。」
リュックからタオルと歯ブラシを取り出した。
急いで済ませなくっちゃ。
風見さんも、お仕事で疲れている。
はじめてのおれを引率して下さって、本当に感謝をしていた。
風見さんに、どうしたら喜んでもらえるかな?
自分に出来ることは限られている。
お金だってあんまり無いし、風見さんに手作りのお弁当を差し入れる訳にもいかない。
喜んでもらえるには、どうしたら・・・。
「ああ!!」
重大なことを忘れていた。
口に入れた歯ブラシがシンクに落っこちた。
慌ててうがいをしてから、風見さんのところに走った。
「風見さん!どうしよう!!」
「え、どうしたの?」
おれ、泣きそう。
「お金変えるの忘れてました!」
このままじゃ、シンガポールで何も出来ないっ。
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