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お願い、天使さま! side:S
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人外
***
天使を知っている。
「はっっっくしゅん…っ。うあー、また窓開いてる」
重たい身体を起こして隙間風を呼び込む部屋の窓閉める。相変わらず朝は頭がズキズキ痛む。
「寝る前に閉めた筈なんだけど…てか、身体重」
ズルズルと鼻水をすすって体温計を脇に挟み、ピピッと鳴ったのを合図に取り出せば37.5度。
「…また微熱」
はあ、と溜息をつき着膨れするほどインナーを重ねてマスクをした。今月5度目の発熱だ。もう仕事は休めない。フラフラする体に鞭を打ち、冷蔵庫から牛乳を取り出して慣れた手つきでレンジに放り込む。ホットミルクが最高に美味しい季節だ。少しでも顔色を良くしていかないと、また店長に嫌味を言われるだろう。「具合悪いなら休めば?」て。
「…はあ…憂鬱」
八月一日サクは淫魔である。
正確に言えば淫魔と人間とのハーフだ。
物心ついた頃には淫魔である母親が若い男と駆け落ちし人間の父親に育てられたため、サク自身も小学五年生になるまでその事実を知らなかった。では何故気づいたのかって?
それは一度死にかけたからである。
淫魔ってのは精気を食べねば死んでしまう生き物らしい。
それをサクは小学五年生の時に三日三晩高熱にうなされて知った。正直その死にかけた三日間の事をサクは覚えていない。目が覚めた時にはベッドの傍らで牛乳を持って泣いてる父親の姿があった。そしてサクが淫魔の血を引いている事を話してくれたのだ。父親も精気を食さないと死ぬ事は知らなかったそうだが、母親が常に牛乳を飲んでいた事を思い出したらしい。牛乳は淫魔にとって精気の代用品、非常食のようなものだ。事実が飲み込めなかった小学生のサクに、これからは牛乳が欠かせなくなるな、と父親は冗談めかして笑っていた。そうして万事解決。
と、思っていたのだが。
「「阿比留くーん」」
玄関を開けるや否や女の子で出来た生垣が風邪っぴきのサクの前に立ちはだかる。なるべく触れない様に何とか隙間を掻い潜ろうとするがサクの体力は女子高生より劣るので力技でも敵わない。ちなみにサクの苗字は「ホズミ」なのでこれはサクの為の生垣ではない。では誰の為の生垣か。
「……と、通してくださーい……うぉわ!?」
「相変わらず鈍臭ェ」
八月一日家のお隣さんである阿比留衣緒の、だ。
「…痛ッ、力任せに腕掴むなよ……」
「力入れてない。…つか、また痩せただろ」
「知らん…あんま触んな…」
「…」
サクが腕を振り払おうとした途端に衣緒が手を離したので反動でよろめき尻餅をつく。女子高生の集団から「ダサ」とクスクス笑われて最高に居た堪れない。が、サクには言い返す気力もない。おかげで生垣からは弾かれたので立ち上がってその場を去る。
阿比留衣緒は近隣の進学校に通う5つ下の幼馴染だ。
生垣騒動からも分かるように顔が良くて兎に角モテる。小中高と隣の家で見てきたサクが言うのだから間違いない。
そして彼もまた淫魔である。
ただしサクとは違い、衣緒は両親ともに淫魔で順々たる淫魔の血族だ。その事をサクが知ったのもまた死にかけ事件の後だった。何も知らない父親の代わりにサクへ淫魔のイロハを教えてくれたのは衣緒の両親だ。今でもその事は本当に感謝している。勿論、その息子である衣緒とも仲が良くてよく一緒に遊んでた。ある時までは。
「うっわ〜、顔色最悪じゃないッスか。サクさん」
ロッカールームでサクと顔を合わせるなり挨拶もなく同僚がそう言った。限界まで脱色した金髪と耳についた大量のピアスがサクには眩しい。
「また店長に嫌味言われるッスよ。休む為に仕事に来たのか〜とか、その顔じゃ客が減る〜とか」
「……そんなに酷い……?」
「最悪ッスね。13連勤明けのオレでもそこまで酷くねーッスわ」
「……一応…薬飲んだし着込んできたんだけど…」
「いやいやいや、サクさんのそれは精気不足なんだから薬じゃ治らねーっしょ」
呆れた様子で同僚にそう言われサクはため息を吐く。
そう。あの事件以来、サクは欠かさず牛乳を飲み続けていた。それはもう朝昼晩と一度も飲み忘れた事はない。ただ、牛乳はあくまで淫魔には非常食だった。牛乳だけでは本来摂取すべき精気の数%ほどしか補えない。本当に気休め程度のものだったのだ。
「結構な量飲んでるのに……」
「二十歳超えた大人の淫魔が牛乳程度で生きてける訳ナイじゃないッスか。サクさんが今まで死ななかったのも多分ハーフだからッスね」
「23年頑張れたんだし何とかなる…よな?」
「いや無理ッスね。完全に限界つーか、早急にセックスしないとマジ死にますよ」
「セッ………ッ!?そ、そ、そうゆう事を職場で堂々と言うなよ…っ」
「これくらいの単語で動揺する23歳童貞はマジ笑えないッス」
真顔で返すこの同僚も話から察して頂けるようにまた淫魔だ。どうしてこうも周りが淫魔だらけなのかサクも謎なのだが、同僚いわく精気の多い箇所には淫魔が寄り付きやすいらしい。つまり淫魔いるところに淫魔あり。
「せめてキスくらい出来ないんスか」
「む、無理無理無理無理。だってキスって唇が唇に触れるじゃん」
「そりゃそうッしょ、精気貰うんだから。てか舌入れないと殆ど意味ないッスよ?」
「し、舌って…唾液は…?無理……ゼッタイ無理……!」
「その潔癖どうにならないんスかね〜」
サクも同僚も互いに互いを信じられない顔で見つめ合っている。何を隠そうこうして八月一日サクが死にかけている理由はただひとつ。
サクは淫魔のクセに、人と触れ合うのが大の苦手な「ド」が付くほどの「潔癖」であった。
「淫魔なんスから諦めて下さいよ」
「出来たらこんな死にかけてない…何度も頑張ろとしたけど無理なんだよ……何で他人の体液とか平気なの?体液が交わるとか地獄でしかなくない?」
「ヤッちゃえばある意味天国ッスけどね」
地元でバンド活動をしていると言う同僚は女の子との関わりも多いらしく彼女を途切らした事がないと言う。こんな怖そうな見た目なのに最近店に来た彼女は可愛い清楚系だった。
「ファンには手ェ出してねーッスよ?ポリシーなんで」
と、要らない情報までサクに教えてくれた。本当に要らない。
「急に彼女作れとかハードル高ェこと言わねえッスから、せめて風俗とかに行った方が良いッスよ。マジで。死んだら意味ないっしょ」
「………うーん……うん」
歯切れの悪いサクの返事に同僚が何かを言いかけた瞬間、店長がロッカールームの戸を開けたので話は尻抜けに終わった。多分あのまま話が進んで風俗に連れていかれた所でサクには何も出来ない。そうゆう場所にも正直抵抗しかない。結局死にかけようとサクの心はあまり変わらないのだ。だからこうなった。
小さい頃から「そうゆうの」は苦手だった。
例えば洋画に出てくるラブシーンとか同級生の話す下ネタとか。何故なのかサクにも分からない。ただ何となくそうゆう事は悪い事のような気がしたのだ。だから自分が淫魔の血を引いていると知ったとき、サクは正直ショックだった。あの母親の血が自分にも流れている事を再確認させられたから。
『サクはサクだよ』
(…ああ。何でこんな時に思い出すんだろ)
「…さん…、サクさん!」
「………、へ…?」
「ちょっと意識飛ばさないで下さいよ。振り落とすかと思ったじゃないッスか」
同僚がメットを外し背中越しでサクに睨みをきかす。どうやらバイクに乗りながら気を失っていたらしい。送って貰ったのに申し訳ない。
「ご………ごめん……」
「いや怪我しなかったから良いッスけど…本当に大丈夫ッスか?」
「大丈夫大丈夫」
走馬灯らしきものを見たとは流石に言えずサクは同僚にメットを返した。ズケズケとした物言いの同僚だが、ケツの時間が同じだとこうしてサクを家まで送り届けてくれる。見た目に反して良いヤツなのだ。
「お。阿比留衣緒。相変わらず女はべらしてんなー」
「……衣緒のこと知ってんの?」
「弟が同級生なんスよ。つか淫魔界隈では有名ッスよ?二度は同じ女を抱かないヤリチンだって」
とんだ言われようだが朝の生垣を見ていればサクにも想像はつく。
「名前呼びてことは知り合いなんスね〜」
「…まあ…お隣さんだし…」
「阿比留衣緒に女紹介して貰えばいいじゃないッスか。アイツなら後腐れない子紹介出来るでしょ」
「…なっ……絶対嫌だ、ンなもん……」
知り合いと女の子を共有するなんて冗談ではない。大体女の子に対して失礼が過ぎる。そんな風になりたくないからサクは「そうゆうの」が嫌なのだ。淫魔なんか嫌なのだ。
(優しくて可愛いかった衣緒があんな風に、)
「………ぅ、ぇ……」
「……ちょ……え?だ、大丈夫ッスか、サクさん」
「……っ……ごめ、…大……丈夫」
「いやいや全然大丈夫じゃないッスよね!?気持ち悪いんスか?吐きます?」
突然蹲ったサクに驚き同僚が慌ててバイクから降りる。大丈夫だと口にはするが胃と眼前がグルグルしてサクもどうして良いか分からない。倒れないように同僚の腕を掴んでるのが精一杯だ。
「やっぱ精気吸いましょう」
「ふ…風俗は……」
「オレの分けます。口開けて下さい」
「いやだ………むりだ…、…て」
「我儘言ってる場合ッスか、死にますよ!?」
嫌だとゴネるサクの頬を同僚が掴んで強引に引き上げる。顔が近づいた。同僚の言う解決策が最善なのはサクにだって解っている。けれど、だけれど、
「………ゃ……」
「……何してんだよ」
拒むサクの代わりに同僚を突き放したのは息を切らした衣緒だった。
「何って…それはこっちの台詞っしょ。精気不足なんだから邪魔すん…」
「チッ」
サクを簡単に抱えた衣緒は同僚の話を無視し、サクの額に手を当てると大きく舌打ちをした。そのままサクの鞄から勝手に鍵を取り出し玄関を開ける。
「ちょ…、おい!サクさんをどうする気だよ!?精気完全に切れかけてんだぞ!」
「そんなの百も承知だ。アンタに関係ない」
バタンと扉の閉まる音がした。視界は霞んでいるが嗅ぎ慣れた我が家の匂いはサクにも分かる。
「何で熱あるのに仕事行くんだよ」
「もう…休めない…し………」
気のせいか衣緒の語気が荒い。ベッドに放り投げられていよいよサクの気が遠くなる。まるで此処が現実ではないかのように世界も衣緒の声も遠い。
「………牛…乳…」
「今さら牛乳なんか効かない」
真っ当な意見だろう。呼吸が浅くまともに肺まで息が吸えない。ぼんやりする視界と思考に「死」の文字がサクの頭をチラついた。このまま死んでいくのだろうか。それも仕方がないのかもしれない。生きていたって自分の出自に一生苦しめられるだけだ。今までサクの生きる意味だった父親も、もうこの世にはいない。
「………死んでも…いっ…か…」
これは受け入れられなかったサクへの罰なのかもしれない。
「……ッ」
グイッと胸ぐらを掴まれサクの呼吸が一瞬止まった。目の前にはこめかみに青筋を立てた衣緒の顔がある。
「…ふざけんなよ…お前」
「…?……な……、……んっ」
ふに、とした感触が唇にした。
半開きのサクの唇に舌先が触れる。
ぴちゃ、
「……ひ……っ…」
熱く濡れた感触に思わず衣緒の胸を突き飛ばした。
「…嫌か?嫌だよな。触れられるの大嫌いだもんな」
「……」
「でも死んだっていいんだろ?」
衣緒が怒ってる、てのはサクにも判る。逃げたいけれど手足に力が入らない。ズルズルとベッドのシーツを掻き毟るだけ。嘲笑とか失望とか、そうゆう顔は今までさせてきたけれど、
「……だったら俺が何したって文句ないよな」
ゾクリと背中が騒つく。
衣緒のこんな顔は初めてだった。
「…んっ、ふ…ぅ…」
歯をくいしばっているのに衣緒の舌がサクの歯列を丹念に舐めてて離れない。
「それで拒んでるつもり?」
衣緒がサクの鼻を摘んだ。もともと弱っていて呼吸の浅かったサクだ。まともに息が吸えるはずもなく直ぐにゲホッと咳き込む。その瞬間、衣緒の舌が入り込んであっという間にサクの舌を絡めとった。
「んーっ…!んんっ!!ぅ、ぇ……」
衣緒の胸を一生懸命押し返してるのにビクともしない。完全に組み敷かれて好き勝手されている。唾液と唾液が絡まり合ってくちゅくちゅと嫌な音がした。生温かい衣緒の唾液がサクの舌をつたって否が応でも喉に流れ込む。自分のではない体液が自分の身体に入ってくる感触。気持ち悪い。気持ち悪い筈なのに下腹部が熱い。衣緒の唾液がサクの体内に流れ込む度に腹の底で熱の塊が暴れ出す。怖い。怖い。コントロール出来ない。まるで自分の身体じゃないみたいに。理性が焼き切れてしまう。怖い。怖、い、
「んふっ……ふぅッ、んんっ、ぁ…っ、んーー!ん"ーーーーっ"♡♡♡」
じゅっ、と衣緒がサクの唾液ごと舌をキツく吸い上げた。グルグルと暴れ回っていた熱がその衝撃で弾け飛ぶ。大袈裟とも言えるくらい太腿を痙攣させシーツを蹴り背をしならせた。
「キスだけでこの反応じゃ先が思いやられるな」
濡れたズボンをパンツごと引き下げた衣緒の指にねっとりと粘度の高い黄ばんだものが付いている。それは同様にサクのパンツとペニスを汚していた。一度しか吐き出してないのに独特の濃い匂いが鼻につく。
「……まさか精通もまだだったのか?」
「………っ…、ふ…ぅ……ぇ、」
初めて嗅ぐ青臭さに吐き気がした。それが自分のものである事にさらに嫌悪を増す。長く綺麗な衣緒の指を汚してるあの臭く黄ばんだそれはサクが吐き出したもの。あれはサクの物だ。汚い。汚い。
「泣くなよ…別に悪い事じゃない」
「……で、も……、っ、ゆび、よごし…、て、…っ」
「こんなもの汚れでも何でもない」
黄ばんだそれが付いた指を衣緒が舐めた。
「サクの物だ。汚い筈がない」
衣緒の真っ直ぐな目がサクを射抜く。ズクリ、と去った筈の熱がまた下腹部に集まってくる。また硬くなり始めたそこを衣緒が握った。
「…っ、!…ゃ……嫌だ!!もういいッ、もう充分だから…ぁっ…!!」
「…まだ精液吐き出しただけだろ。キスくらいの精気じゃ何も変わらない。もっと摂取しないと」
「!?な、に…っ、!?何で、そんなとこ触っ……っ、やだやだやだ!!やめろ…っ、そんなとこ触るな…ぁっ、汚い…ッ」
「何度も言わすなよ。サクは汚くない」
はしたなく先走りを垂らすペニスを扱きながら衣緒がアナルに指を挿れる。さっき付けたサクの精液がアナルに押し込まれてヌチャリと音を立てた。
「…っ、なんで…!?そこは関係ないだろ……っ!」
「ある。サクはサキュバスとのハーフだから誰かに精液を注いでも無駄だ。注がれないと」
「……」
差し込まれていた衣緒の指を強く締め付ける。
何処と無く解っていた。自分の母親が淫魔であると知った時から自分が一体何を求めているのか。何処と無く解っていたから避けていた。深く考えるのをやめた。自分と父親を捨てて若い男と去った母親。新しい男を求めた母親。本能に負け求められずにいられなかった母親。そしてその母親と同じ血が流れているサク。したこともないのに母親の乳房に吸い付く産まれたての赤子のように、サクのアナルは衣緒の指に吸い付いている。もっと奥へと誘っている。ここにいっぱい注いで欲しくて、たくさん欲しくて、浅ましく、求めてる。まるで父親を捨てたあの母親と同じ、
「こっち見ろ、サク」
「…、っ、ぃ…ゃ……」
「サク!」
頬を掴んだ衣緒が無理矢理サクに口付けた。口端から精気が溢れる。
「良いから俺を見てろ。何も考えなくていい。俺だけを見てれば良いから」
まただ。またあの綺麗で真っ直ぐな瞳がサクを刺す。酷い事をされている筈なのに。望まない事をされている筈なのに。どうしてこの男の眼差しに自分は動けなくなってしまうのだろう。許してしまうのだろう。左胸が痛い。
「…っ、ぁ、ひぅ、んっ」
「上手だな。…ちゃんと解れてきてる」
「んっ…、それ…、そこ…っ、い、や、…っ、んんんッ、変……へん、ん…ぅ"」
「…うん。襞がうねってる。気持ち良いんだろ?怖くないからもう一回イッとけ」
「っ、やっ、待っ…ぅ、む"?!……んんッ!っ、ん、んん!!!ッッ〜〜〜〜っっ"♡♡♡」
口を塞がれながら嫌だと言った箇所を激しく擦られサクが二度目の射精をする。一度吐き出した所為か次は白くて粘度の低いものが飛び散った。
「…色も正常そうだな。もっと出せ」
「〜〜っぁ"、むりむりむりぃい"、そんなに、出なぃィっ」
出したばかりのペニスの先を優しくも無慈悲に擦られて泣きながら懇願する。俺を見てろと言ったから、勿論片時も視線を外さず衣緒に訴えた。それに気を良くしたのか口角をあげた衣緒が赤くなったカウパー垂れ流しの亀頭から手を離す。
「…緩くなったな」
両手で拡げられたアナルは見てはいないが、それでも柔らかくなっているとサクにも解った。くぱぁ、と小さな口のように開いている。もう準備は万端だ。
「……ぁ……」
熱くて硬い物が当たっている。見てないけど、それが何かなんて見なくても解る。衣緒の呼気も心なしか荒い。ひゅ、と喉が鳴る。
「…何も考えるな。感じとけ」
「…………え?」
お腹に感じる、ドスン、とした振動。
「ぁ……、?…ッ、ぁ、ーーーーー〜〜〜〜っっ"♡♡♡♡♡」
ビクビクと四肢が痙攣し背中に電気が走った。思わず衣緒から視線を離し喉を仰け反らせてブリッジ状に固まる。ビュクビュクと触れてもないペニスから白く薄い精液が噴射した。
「ッ、トコロテンとか…。…ほら、飛ぶな。もう出ないんじゃなかったっけ?」
「ぉ"、ぁ…っ♡…しゃ、しゃわらないでッ、先っぽ…ッ、ぁひ、は、挿入ってる、っっ♡おれの、おにゃかに♡♡いおの、いおのペニスがはいってる…ぅっ」
「……ッ、ばか、解りきったこと言うな…っ」
「んひっ♡♡おっきく…っっ♡♡なん、れぇ…っ?!♡いおのペニスおっきくなって、る、っあ"ッ、ん♡♡おぐ、ぅ、奥に、当たちゃ、ぅ…ぁ"♡♡♡」
「もう黙れ…ッ」
最初の余裕な態度は何処にいったのか、衣緒は語気を強めると無意識に逃げようとするサクの身体を押さえつけ腰を激しく打ちつけた。肉のぶつかり合う音がパンパンと響く。何も考えるなと衣緒は言ったけれど、そんなの杞憂だった。与えられた快感が強すぎて何も考える事など出来ない。頭が馬鹿になったみたいだ。目の前の衣緒以外何も見えない。
「お"ぁッ♡♡いお、ッ♡♡いおっっ"♡♡♡♡」
「ッ…、…だから黙れって…ッ、そんな顔で名前を呼ぶな…っ!」
「ぁ…、ひっ、ごべんなさ…ッ♡?!んごぉッ?!にゃ、にゃんれ…?!お"っ♡あ"ぁ"♡つ、つよいッ"♡おぐにつよく、あだっで…っ♡♡だめっ♡いおのがどちゅどちゅ当たってる〜〜〜っっ♡♡♡」
「……名前呼んだ……罰…ッ」
今度は仰け反らないよう肩を強く掴まれ奥に挿入ったペニスに精液を叩きつけられた。堰を切ったような快感の暴力に為す術もなく、声にもならない歓喜の声をあげ、涙と鼻水と涎垂れ流しの脳髄が溶けきった顔を惜しげも無く衣緒に晒して、サクもまた勢いは違えど衣緒と同じように精液をチョロチョロと零した。派手に噴き上げなかったのは衣緒に挿入されている間ずっと零し続けていたからである。
「ブッ飛んでるクセに美味しそうに吸い付いて…」
ゆっくりと引き抜こうとする衣緒のペニスをサクのアナルが離すまいとちゅばちゅば吸い付いた。最後の一滴まで精液を搾取するつもりのようだ。当の本人は不様な顔を晒しながらとっくの昔に意識を飛ばしてて、今やスヤスヤと眠りについている。ずっと精気不足でまともに寝る事など出来なかったのだろう。まあ、今回のは睡眠と言うより気絶に近いが。穏やかに眠るサクの眉間に指を当てる。ここに皺の寄ってない寝顔を見たのはいつ振りだろうか。
「…死ぬとか二度と言うな。馬鹿」
夢を見た。
夢を見るのはサクにとってそう珍しい事ではないけれど、こんなにハッキリと天使の夢を見るのは本当に久々だった。天使の夢を最初に見たのは小五のとき。高熱で死にかけたあの日から毎日夢に出てくるその天使は、いつもぼんやりで曖昧で悲しげで、それにサクは申し訳ない気持ちでいっぱいになる。だけど何にも出来なくて、そのまま朝を迎える。けど、今日は違った。こんなにもハッキリと見えている。微笑んでいる姿が見える。仮にも淫魔が天使に縋るなんておかしいだろうか。でも、本当の天使をサクは知っている。
阿比留衣緒は本当に昔から可愛かった。
栗毛の髪が光に透けると金色に見えて、それがまた天使みを増していた。
『サクはサクだよ』
初めて自分が淫魔だと知った日。衣緒はそう言って笑ってくれた。怖がるサクの手をずっと握ってくれた。
優しくて可愛い衣緒。
あのとき、どうしてそんな態度を取ってしまったのかサクにも解らない。淫魔としては当然なのに、幼かったはずの衣緒が女の子と「そうゆうこと」をしているのを見てサクはただただショックだった。裏切られたとすら思った。衣緒だって驚いた筈なのに、ショックと混乱で吐いたサクに差し伸べてくれた手をサクは咄嗟に叩き落としてしまった。あれからずっと気まずくて。ずっと謝れずにいた。
(…ごめんね)
衣緒はいつだって優しかったのに。
「…」
「…やっと起きた」
柔らかい日差しに照らされて目を覚ますとそこにはサクを見つめる美青年の姿があった。髪が光に透けて金色に輝いて見える。
「……天使」
「は?寝ぼけてないで起きたら?バイトでしょ」
衣緒に鼻を摘まれ仕方なくベットから起き上がる。いつになく瞼がパッチリ開いた。身体が軽い。頭もスッキリしている。…サクの顔が赤らんだ。
「暫くは牛乳も必要ないだろ」
「……あ……あの、…その……」
「…」
「…ごめんなさい。死んでもいいなんてもう嘘でも言いません。生きられてやっぱ嬉しい。……衣緒」
「助けてくれて、ありがとう」
赤ら顔で必死にお礼を述べると目の前で衣緒が笑った。
その笑った顔が最高に可愛くて、やっぱり天使っているんだな、とサクは思わずにいられなかった。
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