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それからの事は正直あまり覚えてない
式の最中も手を離さないあの生徒を横目で見れば
目が合って、勝ち誇ったような顔でニヤリと笑われた。
けれど、幸人がその生徒の方を向けばそんな表情から一転して異常なまでの笑顔で幸人の腕を掴んで引っ付いて
…めちゃくちゃ気持ち悪かった。
チラチラとこちらに視線を向ける幸人に気付いていない訳じゃなかったけど、幸人に目を向ければ自然と視界に入ってくるその生徒との限り無く近い距離感が許せなくて
気付かないふりをして過ごした。
長い、長い始業式を終えてもなお、あの生徒は幸人から
離れる事はない。
この後は全学年共通して2時間程のHRがあり、体育祭の種目や当日の役割分担を決める
よって、担任を受け持つ俺が向かうのは教室でも、体育祭を見学という形で参加するあのクソガキが向かうのは保健室
今すぐ保健室に乗り込んでやりたくても、曲がりなりにも教師である俺が学級を放棄して保健室登校の生徒に喧嘩を売りに行く事なんて出来っこなくて
幸人を取られた気がして悔しかった。
いつでも幸人は俺ばっかりだったから、それが普通で
でも今の幸人はあの生徒を放っておく事は出来ない。
だってそれが養護教諭の役目であり、こうして離れなければならないのは、それが俺達の任されている仕事だからだ
クラスでは、もはや声を出す気にもなれず、簡単な説明を済ませると、クラス委員に会議で渡された資料を渡し、
体育祭の種目決めやらを押し付けた。
その間も頭の中はその2人の事でいっぱいで、ぐちゃぐちゃで。
思わず溢れた舌打ちや忙しない貧乏揺すりに怯えまくったクラス委員の必殺技”全種目くじ引き”によって予定していた2時間を大幅に短縮させてHRを終えた。
うん、やっぱり俺のクラスの奴らはやれば出来る。
「…じゃあ明日からのテスト頑張れよー。
…あ、赤点は補習あるから、俺の仕事増やすなよ。」
教室内に嘘ーや、聞いてねーよやら様々な声が交差する
休み明けなんで課題さえやってりゃ点数とれんだろ
やかましい
いつもの俺ならば、ピリついた空気から穏やかになるこの瞬間に快感すらも覚えるだろうが
今は違った。
今日は、やけに、やかましい。
「何処出すか教えてくれるまで通さねえー!!」
「難しいやつ作ってないよね?!」
「採点甘めにしてよ〜〜」
煩くてもう、どうにかなりそう
頭の奥に響く声を出す生徒も
俺の通り道を塞ぐ生徒も
俺が教師でなければ1人1発ずつは何かしら御見舞していただろう
そいつらを退けて廊下を歩けば
教室の裏出口付近で腕を捉える生徒も――
「…高木っち?ちょっとどうしたの…目ヤバいよ?」
「…あ?何にもねーよ。離せ渡辺」
「……わ、わかったって…ごめん…。」
こんなにも、邪魔で仕方ない
あぁー、爆発しそう
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