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「――誰ですか?」
「…はぁ?」
保健室を出ると、見たことの無い男子生徒に突然
声をかけられた。
俺より少し身長の低いその生徒は、至近距離で俺を
見上げていた。鋭い瞳に光は宿っていなくて
怒っているのか、悲しんでいるのか、楽しんでいるのか
…いや、3つ目のは無いか。
でもその瞳から何一つ感情を読み取る事はできなくて、
何だか不気味なやつだった。
「だから誰ですかって聞いてるんですけど。
こんな朝から保健室に何の用ですか?」
答えなかった俺に更に問い詰めるように生徒は続けた。
「教師相手に挨拶も無しかよ。…俺は1年3組担任の
高木だ。氏原先生に用があったから保健室に居た。」
少し…いや、だいぶイラついたけど
俺だってガキじゃない。
この上から目線の態度に怒りを覚えながらも、
それを何とか堪えて聞かれたことを的確に答えてやった。
そもそも保健室に何の用だなんてこの生徒が言う権利は
無いだろう。あの部屋を管理しているのは幸人なのであって、この生徒は全く関係がないんだから。
…にしてもこの声……。
どこかで聞いたことがあるような、ないような
…………ま、気のせいか。
生徒は何故か納得のいかない様子でこちらをじっと
見ていたけれど、それを可憐にスルーして職員室に
向かって足を進めた。
俺だって始業式に遅れたらいけないしそんなに暇じゃない
生徒もわざわざ俺を引き留めることはなく、2人の距離が広がったとき、その生徒は保健室の扉をノックして幸人を呼んだ。
「氏原せんせー。おはよう!入るね?」
?!
いや、さっきまで俺に対して発してた声はなんだ?
思わず振り返ってしまった。
けれど、そこに立っているのは紛れもなく先ほど俺にお前は誰だだの保健室に何の用だだのを睨みをきかせて問い詰めてきたあの男子生徒で間違いなかった。
俺に対する低音の掠れた声とは全く異なり、氏原先生と呼ぶ彼の声は猫なで声というか、甘ったるいいかにも媚を売っているような、そんな声だった。
…ついでにこいつの声に何故聞き覚えがあったのかも思い出した。
こいつ多分、あの日幸人に告白してたやつだ。
俺の直感がそう確信した。
男子生徒が保健室の中に消える姿を目で追う。
ああ、今あの部屋の中には幸人とあいつが2人きりなのか
そう思うと胸がちくりと痛んで、無意識に舌打ちまで打っていた。
その後体育館で再び俺は例の男子生徒を目撃することとなる。
幸人の隣で、手を繋いで一番後ろの、隅の隅に座る姿を。
繋がれた手を拒まない幸人が、いつものふわふわ笑顔で笑っているのにどことなく苦しそうに見えるのは
本当は嫌がっていてほしいという俺の願望が見せた錯覚なのか、
それとも幸人の色んな顔を見てきた俺だからこそ分かるsosサインなのか
それを知るすべを俺は持ち合わせていない。
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