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「っでさぁ、俺何に出んだよ。」
と、ここで気になっていた事をクラス委員の生徒に聞いた。
「えっ、今ですか?!」
あの日、俺の態度を見て完全にびびったクラス委員によるくじ引きの結果を、俺は特に確認することも無く今日を迎えた。
今日…というのは体育祭前日。
時間を言うならば5,6限の連続HRの最中だ。
どうせ教師が走る姿なんて生徒の笑いものになるだけで
本気になってやる奴なんて熱血体育教師くらいの世界だ。
「…えっと、高木先生は…。」
ぺらぺらと資料をめくり、生徒の出演種目の書いてある
ページに辿り着いたクラス委員は続ける。
「先生は、個人が…高跳びですね。で、団体が………」
俺と資料を交互に見ながら、苦虫を噛み潰すような
渋い顔をして小さな声で、ぼそっと言った
「あの、なんか目立つ、変な、リレーです。」
oh……。
どんなものかはわからないが、妙に教師は嫌がるし
説明をしたがらないといつか俺に言っていた幸人を思い出す。
不安の残るまま終えたHR
差し迫った本番当日
人生で一度も経験したことの無い高跳びに加え、謎の競技
特に楽しみだと思えるほど運動も好きではないし、
口から出るのは重苦しいため息ばかりだった。
あー。タバコ吸いてえ。
ふとそんな欲が脳裏を過ぎれば、行き着く先は決まっている。
賑やかに明日の日程の確認や作戦会議に励む教室から堂々と抜け出し、ポケットに半分潰れた箱とライターの存在を確認しつつ、階段を降りる。
喫煙所の窓越しに、既に人がいることに気付いた。
それも、2人。
こんな時間に珍しいな、授業中だってのに。
自分はどうなんだって質問は受け付けねーけどな。
近づくにつれてはっきりと姿を捉えたその人物は
ナル先生と…幸人?
なにを話しているかは聞こえないけど、2人は優しく笑いながら、何処か懐かしむような、そんな儚いような表情をちらつかせながら一服してた。
たまに、幸人が辛そうな顔をするのが気になる。
入り口の前で立ち尽くしていると、人影に気がついたようで幸人がこちらを向く。
「康明?どうしたの??タバコ吸いに来たんでしょ、おいで。」
扉をあけて迎え入れてくれる幸人に、ここはお前の家かよと突っ込んでやりたい。
あともう一つ、ナル先生の前なのに気が抜けて名前呼びになってるぞ。って。
まあ、幸人がナル先生を信頼しているってのはわかってるし、俺もこの人がこう見えて意外としっかりしてる事は知ってるから、いいんだけど。
「ナルも、康明も授業サボってないで早く戻りなよ?」
そういうと、幸人は吸い終わったたばこを灰皿に落とし
そそくさと喫煙所を出て行った。
きっと、あいつは言わないけどまたあのクソガキの面倒を見なきゃいけないんだろうな、とか思いながら
久し振りのナル先生との2人きりの沈黙に
少しばかり緊張しながら、咥えたタバコに火を付けた。
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