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渡辺から渡されたバトンを持ってとりあえず箱の前に辿り着いたはいいものの…。
さっき幸人がこの中に手を入れた瞬間ぎゃって言ったの俺は聞き逃してないからな。
俺の知っている借り物…いや、借り人競争か?
とは、同じなようで同じでないこの競技にとてつもない恐怖を覚えつつ、箱に手を伸ばした。
俺は(多分)生徒に嫌われてはないはずだし、酷い仕返しをされるような説教も、私物の没収もしていないはずだ。
この学校に来てからの半年間を必死に思い返してみる。
うん、問題ない。
その時、箱の中で何かに手を掴まれた。
何かと言っても人の手である他に何物でもないのだが。
これか、これに幸人は驚いて悲鳴を上げたのか。
誰だ勝手に幸人の手を触った奴は。
…いや、そこかよ。
とまぁ自分に突っ込みを入れていれば何者かの手によってお題の書かれた紙を握らされる。
小さく溜息をつき、その紙を開くと
思わずその場にしゃがみこんだ。
『空を飛ぼう
(無理ならセーラー服の後輩とゴール)』
………完全に下のが目的だろうが。
中身はロリコンか、それとも単に俺を困らせたいだけなのか。
掴めねぇ…。
「毎年かなりの無理を強いられる最終走者、1年3組のお題は…どーんっ『空を飛ぼう』だ~!」
空を飛ぶは置いておくとして、勿論俺にセーラー服を着た後輩なんていない。
そもそもここらの高校はその殆どがシャツにネクタイという格好だ。
幸人からバトンを受け取った教師もまた、俺と同様うなだれているようだが今はそんなことを気にしていられない。
ぐるりと周りを見渡すと、おそらく生徒の身内かと思われる中学生が数人、体育祭の様子を見に来ていた。
もちろんその学生たちと俺は面識もない。
俺の通っていた中学校の制服とは違うので、後輩でもない。
だが、俺はそこに向かってずんずんと歩いて行った。
女子中学生達はそれに気づき、顔をこわばらせた。
ひょっとしたら犯罪にもなりかねない行為をこれから行うわけだが、懲戒免職になるよりももっと、期待で胸がいっぱいになってしまったんだ。
あ、別にロリコンじゃない。
これだけは誤解しないでほしい。
その数人の中、なるべく”あいつ”に近い身長の奴を探す。
この学校で働いて半年。
俺より後から赴任してきて、ほんの2,3か月で完全に馴染みこんだ後輩とは思えぬ人物。
そう、俺がゴールするには幸人にセーラー服を着させるしかいねぇ。
「なぁ。その下何か着てる?」
「っはい?!」
俺は一番背の高かった真面目そうな女の子に声をかけてみた。
幼さこそ残るものの、そのぱっちりとした瞳や口元はどこか見覚えのあるような気がしたが――
「だから、中。」
驚き目を見開くガキに追い打ちをかけるようにそう尋ねると、ようやく中学生は口を開いた。
「え、えっと…体操服…着てます……。」
だろうな。
薄手のセーラー服の生地の中からしっかり透けて見えてるし。
「それ、一瞬貸して。」
さて、ここでこのガキもしくはその周りにいる4人ほどのガキが叫んだりそこらの教師に泣きつきでもしたら俺はあっという間に職無しニートだ。
この競技の嫌味なところは、本題こそ発表されるもののサブに控えるお題を発表するかどうかは実況者の気分。
そして俺の時は、言われなかった。
よってこのガキ達から見れば俺は、空を飛ぶためにセーラー服を欲している頭のおかしな教師なわけだ。
「空…飛べるんですか?」
「んなわけねーだろアホか。」
「え、でも…。」
「必要なの。………頼むからー。」
いつの間にか仕事の一環として見ていたはずの体育祭を楽しんでいる自分に驚く。
どうせやるなら勝ちたい。
午前は決勝に残った生徒が中学時代に全国大会にまで行った化け物だったらしく、悔しくも2位に終わってしまった
だから、今度こそ。
目線を合わせて手を合わせると、ガキは若干赤面して
いそいそと服を脱ぎだした。
まだまだ免疫力の無い体操服姿になった中学生に
軽く例をすると、俺はバッチリ目があったあいつに走って行った。
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