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次に目を覚ました時には、母さんが枕元に座っていた。
僕が目を覚ましたことに気づくと、安堵の息を吐いて微笑みながら、僕の頬を撫でた。
「…母さん、ごめんね…、心配した?」
「したわよ。でも、青藍は強いって知ってるから、あなたの寝顔を見ながら目を覚ますのを待ってたの」
僕は、ふふ…と小さく笑って周りを見る。縁側から陽が差し込む明るく広い座敷には、僕と母さんしかいない。
「…ここは?」
「倉橋さんのお宅の客間。天狗の郷に連れて帰ろうと思ったけど、動かしちゃダメだって言われたの」
「そう…。他の皆は?」
「銀さんと凛さん、浅葱は、妖狐族の方達と、凛さんの家に集まってるわ」
「…天清は?」
「天清くんは、とてもひどい顔色をしてたから、一旦帰らせたの。だって、彼の方が、あなたよりも死にそうになってるんですもの」
何となく天清の様子が想像出来て、僕は心配になった。
「天清…、大丈夫なのかな?ずっと僕の傍にいたんでしょ?」
「そうなの。少し休むように言っても聞かなくて、まる二日間あなたから片時も離れなかったのよ。天清くん、身体も大きいし鍛えてるから、体力的には大丈夫そうだったのだけど、精神的に辛そうでね…。今にも倒れそうにフラフラとしてたから、つい先程、倉橋さんが送って行ったわ」
「天清…よく素直に帰ったね…」
「いいえ、帰らない!って暴れてたわよ?だから倉橋さんが、陰陽師の術?なのかしら?天清くんの身体を動かせないようにして、引きずって行ったのよ。天清くん、泣きながら青藍の名前を何度も読んで、少し可哀想だったわね…」
母さんが、目線を上に向けて、思い出したのか苦笑いをする。
そんな様子で帰ったんじゃあ、またすぐに戻って来るんじゃないか、と僕も苦笑した。
母さんが僕に視線を戻して、僕の手に触れる。そして、僕の手の甲を撫でて、ポツリと呟いた。
「青藍、あなたは昔から華奢で心配してたけど、ちゃんと大きくなってたのね。あなたが、いずれは鉄さんの跡を継ごうと、たくさん頑張っていたのを知ってる。でも、肩の力を抜いてもいいのよ?何でも自分がやらなきゃ…って、気負わなくてもいいのよ?私は、あなたが本当に鉄さんの跡を継いで、天狗一族を守りたい、って言うなら応援する。でも、自分だけの幸せを選択したとしても、応援するわ。だから、もう無茶はしないで…」
だんだんと震えて小さくなっていく母さんの声に、顔を上げると、母さんは、何度も目を瞬かせながら優しく微笑んで僕を見ていた。
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