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僕が、母さんの温かい手をそっと握り返した時、部屋の外から足音が聞こえた。
「倉橋です。入っても?」
「あっ、はい…っ」
障子の向こう側から倉橋さんの声がして、慌てて返事をする。
すぐに障子が開いて、倉橋さんが入って来た。
「青藍くん目が覚めたんやね、良かった。気分はどう?」
そう尋ねながら、僕を挟んで母さんの反対側に座る。
「もう大丈夫です。度々お世話になってすいません…」
僕が身体を起こそうとすると、「大丈夫かいな…」と言いながら、背中を支えてくれる。
倉橋さんは、布団の上に身体を起こした僕の左肩に触れて、軽く押した。
「ゆっくり休んでくれてていいんやで。ところでどうや?こうすると痛い?」
「…いえ、大丈夫です。何度も怪我を治してもらって…。白様にもお礼を言いたいです」
「本当に…。倉橋さん、ありがとうございます。また改めて、主人とお礼に伺わせてもらいます」
僕と一緒に母さんも頭を下げる。
倉橋さんは、一瞬目を丸くして驚いた後に、慌てて両手を振った。
「いえいえ、とんでもない。青藍くんは、俺の大事な友達の身内やし、いい子で俺も好きやし、助けるのは当たり前です。それに治したのは白で、俺は特に何もしてませんから…」
「でもっ、倉橋さん、僕達を庇って怪我しましたよねっ?大丈夫なんですかっ?」
「あ、大丈夫やで。白が一瞬で治してくれた。なんか喜んで治してくれた…」
「え?喜んで?なんで?」
「え?いやっ、まあ…。あっ、そうそう!天清くんな、家に連れて帰って今は眠らせてるけど、目が覚めたら、たぶんまた来るで?」
倉橋さんが、目を忙しなく動かしながら、思い出したように言う。
僕は、白様が治してくれたという話が気になったけど、天清が来ると聞いて、少し嬉しくなった。
「あ、じゃあ、天清が来るまでここにいてもいいですか?」
「ええよ。というか、目が覚めたからとはいえ、まだ動かん方がええんとちゃう?もう一晩泊まったらええやん」
「いえ、大丈夫です。天清が来たら、一緒に家に帰ります。あ、母さんも今日は凛の家に泊まる?」
「そうねぇ…。もう大丈夫そうだし、浅葱と屋敷に帰るわ」
「そう?気をつけてね」
母さんが、ニコリと笑って頷くのを見て、僕も笑って頷き返す。
「あ、そうや。これはちゃんと言うとかな。青藍くん、君の左肩には、呪を施した鉛の玉が入ってたんや。それを取り出して傷は治したんやけどな、まだ呪が残ってるかもしれへん。もしかすると、何かの拍子に痛むことがあるかもしれへん。だからこれからも充分気をつけてな」
「…はい」
呪というものがよく分からなかったけど、僕は神妙に頷いた。
まあ左肩には、元々昔に龍の妖につけられた傷があり、よく痛くなっていた。だから、今までと何も変わりはない…と、この時の僕は軽く考えていた。
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