アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4
-
「それと天清くんは、三時間は眠ってると思うわ。だから、あと二時間は来ーへんと思うし、うちでご飯食べていかへん?」
「そうなんですか?…いえっ、それは大丈夫ですっ。それにお腹空いてませんし…っ」
「空いてないことないやろ。青藍くん、この二日は水か天狗の郷から持ってきたっていう栄養剤しか飲んでないんやで?」
「え?…いや、でも…」
僕が返答に困って母さんに助けを求めようとした時、廊下からドタドタと大きな足音が近づいてきた。
何事だろうと一斉に障子を振り返る。
部屋の前で足音が止むと、スパーンと障子が勢いよく開いて、天清が部屋に飛び込んで来た。
天清は、驚いて天清を見る僕と目が合うや否や、「青藍っ!」と叫んで僕に飛びついた。
「青藍っ!良かったっ!目が覚めたんだ…っ。心配したよ?俺、苦しむ青藍を見てて、辛くて辛くて死にそうだった…」
「え?僕、苦しそうだった?なんか懐かしい夢を見たりして、穏やかに寝てたと思うんだけど」
「うそだっ!だって、肩から鉛玉を取り出す時とか、とても痛そうだったっ。青藍、自分の唇を噛みすぎて血が出てたし…。俺が舐めて治したけど」
「覚えてないなぁ…。てか、舐めたんだ…」
皆もいたかもしれないのに、何をしてるんだと天清を睨む。
でも、大きな目に涙をいっぱい溜めて、鼻水を垂らしている情けない顔を見たら愛しさが込み上げてきて、僕は腕を伸ばして天清の頭を撫でた。
「ちょっとごめんね。盛り上がってるとこ悪いんやけど、天清くん。君、起きるの早くない?俺は、三時間は眠るように暗示をかけたんやけど。まだ一時間しか経ってへんやん」
倉橋さんが、天清の肩に手を置いて、苦笑しながら言う。
天清は、僕を抱きしめたまま、顔だけを倉橋さんに向けて、鼻の穴を膨らませながら怒った。
「あっ!倉橋さんっ、ひどいですよ!俺、青藍の傍を離れたくないって言ったのに、無理矢理引き離してっ。眠くて眠くて仕方がなかったけど、青藍の傍にいたい気持ちの方が強かったから、根性で起きたんですっ!」
「は~なるほど。君の青藍くんへの想いが強かったんやな。中々やるなぁ。天清くんは、きっと強い妖狐になるで」
「当たり前です!俺は妖の中で一番強くなって、青藍を守るんですっ!」
鼻息荒く言い放った天清に、僕は呆れたけど内心は嬉しくて、倉橋さんは感心して、母さんは笑って見ていた。
僕をぎゅうぎゅうと抱きしめて離さない天清を宥めながら、倉橋さんに車で送ってもらって凛の家に帰って来た。
僕が「ただいま」と玄関を開けると、凛と銀おじさん、浅葱と清忠さん、初めて見る男の人二人と父さんが出て来た。
「父さん…。心配かけてごめんなさい。郷を留守にして大丈夫なの?」
「大丈夫だ。おまえこそ、もう大丈夫なのか?」
「うん、倉橋さんと白様に治してもらったから。銀おじさんも凛も、清忠さんも皆さんも、ご迷惑をおかけしました。ごめんなさい」
僕が小さく頭を下げると、凛が泣きそうな顔をして、僕の頭を撫でた。
「なんで迷惑なの?謝るなら俺の方だよ…。すぐ傍にいたのに、また守ってやれなくてごめんね…」
凛の頬をポロリと零れ落ちた涙を見て、僕は「綺麗だな」と見蕩れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
116 / 207