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「心隠と母さんの両親は、二人が幼い頃に亡くなっててさ、六つ年上の心隠が父となり母となり母さんを育ててきたんだ。だから、とても仲の良い兄妹だった。…心隠は、そんな大切な妹の死を目の当たりにして、壊れたんだ。まずは、母さんを殺した人間の血を片っ端から吸い尽くした。それで、完全に狂ってしまった。人間を喰らわないといられない身体になってしまった。俺は小さかったから、これらは全部、心隠と母さんの母親の弟から聞いたんだ。おじさんは、数人の仲間を呼び集めて心隠を捕らえようとしたけど、心隠は逃げてしまった。捜してもどこにいるかわからなかった。でも心隠が消えてから、頻繁に山奥に人間の遺体が見つかるようになった。血を吸われ身を喰われた遺体が。心隠がやっているのは明らかだったんだ」
そこまで話すと、藤隠は黙って俯いた。
静かな部屋に、心隠さんの呻く微かな声と、凛の鼻をすする音が聞こえる。
藤隠の代わりに、僕が話し始める。
「それで殺された人間の身内が、人間がやったことではないと確信して、退魔師に依頼したんだね?その退魔師は、心隠さんを見つけ出して退魔しようとした…」
「そうだ。正悪の区別もつかなくなった鬼を、あそこまで追い詰めたんだから、かなり力の強い退魔師だったみたいだな。まあ、結局は心隠が勝った。左目と左腕を失ったけどな。心隠は、狂ってから戻っていなかったこの家に逃げ込んだ。そして、この家を見張らせていたおじさんが、すぐに心隠をそこの地下牢に閉じ込めたんだ。それから十五年、心隠は外に出ていない」
ふぅ…と息を吐いて、藤隠が天井を仰いで目を閉じる。
「十二歳になった頃から、おじさんに頼んで俺が心隠の世話をしている。いつか、正気に戻るんじゃないかと思ってさ…。でも、何を話しかけても反応が返ってこない。こちらの言ってることはわかっているみたいだけど、会話が成り立たない。そんな心隠が、そこの…凛が現れてから、反応を示した。なあ、聞いてもいい?あんたと心隠は、どんな関係だったんだ?心隠にとってあんたは、どういう存在なんだ?」
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