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倉橋さんが、天清の前に芋羊羹が乗ったお皿をすすめて「まあ甘いものでも食べて落ち着き」と言った。
天清はペコリと頭を下げると、一切れ口に入れる。途端に眉間の皺が伸びて笑顔になった。
「美味い!これっ、美味いっすよ!優しい甘さで滑らかな舌触りで芋の風味が鼻から抜けていく…」
「ははっ!天清くん食レポが上手やねぇ。口に合って良かったよ。駅からウチの神社に来る途中に綺麗な和菓子屋があったやろ?そこの羊羹や。まだあるから持って帰ってええよ。青藍くんも持って帰って。椹木が好きやったはずや」
「ありがとうございます!」
「すいません。じゃあ頂いて帰ります。あ…、そういえば、今日は白様はいらっしゃらないのですか?」
僕も羊羹を一口口に入れて、顔をほころばせながら聞く。
「ああ…白な。舜くんが来るから隠れとる」
「なんでですか?」
「…俺を傷つけたから嫌いなんやって。仮にも神様なんやし、もっと広い心持たなあかんよなぁ…」
倉橋さんが、縁側から見える本殿の方に顔を向けて、溜息を吐いた。
僕は倉橋さんの横顔を見て、白様と倉橋さんの関係ってなんだろうと首を傾げた時、「あっ、来た」と倉橋さんが言った。
倉橋さんの視線を追って境内に目を向ける。
ちょうど谷田部さんと舜くんが、鳥居を潜ったところだった。
「いらっしゃい。悪いけど、あっちの玄関に回ってくれますか?」
「こんにちは。わかりました」
倉橋さんの声に谷田部さんが頷いて、二人が玄関がある方へと消えた。
「ちょっと待っててや」と倉橋さんが部屋を出て行って、すぐに二人を伴って戻って来た。
「やあ、こんにちは。青藍くんと天清くんは、学校の帰りかな?」
「こんにちは。そうです。舜くんもですか?」
「舜は、先週から不貞腐れて学校を休んでるんだよ。でも明日からは行くよ。な、舜?」
「まあ…な」
谷田部さんに顔を覗き込まれて、舜くんが渋々頷く。その様子が子供っぽくて、思わずクスリと笑った。
「…なんだよ?」
「あ、いや…ごめんね。舜くんって、谷田部さんの前だと素直で可愛いなと思ってさ」
「はあ?ざけんなっ!俺のどこが可愛いんだよっ」
「舜!おまえは青藍くんにそんな口聞く権利ないんだぞっ」
「ちっ…」と舌打ちをしながら、舜くんがそっぽを向いて座布団の上に座った。
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