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倉橋さんが、二人の前にもお茶と芋羊羹を並べる。
谷田部さんが軽く頭を下げて、舜くんもそれに倣った。
「どうぞ。美味しいので。舜くん、前に比べて、なんか柔らかい感じになったね?気持ちに変化があったのかな?」
「は?」
倉橋さんを睨んだ舜くんの肩を、谷田部さんが掴んだ。
「こら舜!倉橋さんに失礼のないようにっ。おまえは、倉橋さんにも怪我をさせたんだからな」
「…う…っ、その…悪かったな…」
「ああ、そのことやったらええよ。別に俺を狙ってしたわけやないし。もう気にせんといて。でもなあ…、君の父親の仇がいなくなってしもたわけやしなぁ。張り合いが無くなった?」
舜くんが、羊羹を二口で全部食べてお茶を飲み干すと、ガラスで出来た湯呑みをカタンと音を立てて机に置いて、頭をクシャクシャとかいた。
「俺はっ、まだ納得いってねぇっ。なんであの鬼は、自分で命を絶ったんだよ?人を殺めて、十五年生きてきて、なんで今更…っ」
舜くんの苛立ちも、わからなくはない。
だけど僕は、心隠さんの藤隠や凛との切ないやり取りを見ていたから、心隠さんの気持ちもわかる気がした。
「舜くん、心隠さんのこと、これからも許せないよね?それはそれでいいと思う。でもね、こんなことを言うと舜くんは怒るかもしれないけど、本当の心隠さんは優しい鬼だったよ。あの時、舜くんの気の済むようにさせてやろうとしてたんだよ。藤隠に邪魔されて出来なかったけどね」
「そんなこと知ったこっちゃねぇよ」
「うん、そうだね。それに…舜くんに会っても会わなくても、自分の命を絶つつもりだったんだよ。凛の家に来たのも、最後に凛に会いたかったから…」
「…知らねぇ」
僕は、そっぽを向く舜くんを見て、小さく溜息を吐いた。
「舜くんは、まだ妖全部が憎い?」
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