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そっと表面を撫でると、サラサラとした絹の手触りが気持ちいい。パッと見は無地に見えたけど、よく見ると小さな亀甲柄になっている。色の白い凛によく似合いそうだと頷いて、そっとたとう紙を閉じた。
「品のあるいい着物だね。心隠さん、いいセンスしてる」
「心隠は本当に気高かったからな。他に残っていた着物も、上品な物ばかりだ。俺に着こなせるかどうかわからないけど…」
藤隠が、風呂敷からたとう紙に包んだ着物を出して、風呂敷を畳みながら自信なさげに言う。
僕は、着物を部屋の隅に置くと、藤隠にもう一度椅子に座るように促して笑った。
「ふふっ、藤隠は心隠さんとよく似て綺麗な顔をしてるから、似合うと思うよ?ただ、乱暴な物言いは直した方がいいかもね」
「う、うるせぇ…。この顔のせいで女っぽく見られて舐められるんだよ。だから男らしくしようと思ってだな…」
「逆に凛と上品にしていた方が迫力があるよ?なんか藤隠と話してると舜くんと話してる気がする…。二人の話し方が似てるからかな?」
椅子に座ってお茶を飲もうとした藤隠の動きが止まる。
「舜?…それって、心隠を恨んでた奴か?心隠の目を潰して、心隠を追い詰めた…」
「藤隠、それは違うよ。舜くんが心隠さんを恨んでいたのは本当だけど、心隠さんは、舜くんと会わなかったとしても、正気に戻った時点で命を絶つつもりだったんだと思うよ…」
「…わかってる。本当の心隠は、優しくて責任感の強い奴だったからな。だから、自分を許せなかったんだって。でも俺は『あの日、心隠を仇と思うあいつに会わなければ』って、どうしても思ってしまうんだっ…」
カタリとコップを置いて、藤隠が俯いて肩を震わす。
黙って聞いていた天清が、藤隠の傍に行って肩をポンポンと叩いた。
「まあな、藤隠の気持ちもわからなくもないよ。でも両親を失う原因になった心隠さんを恨む舜の気持ちもわからなくもない。ここでさ、あんたが『舜許さねぇ』って舜を手にかけるとするじゃん?そしたらさ、あんたも心隠さんみたいに苦しむことになるよ?心隠さんも、あんたの両親も、そんなことは望まないんじゃないかな?…たぶん」
藤隠は、天清の顔をしばらくジッと見つめた後に、ちっと舌打ちをした。
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