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組織変更
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ある日、組織変更の詳細が発表され、木佐たちの部署が他部署に吸収されることになった。
周平と木佐は同じ部署ではあるが、グループは別となった。
蔭山はさらに上の立場となり、木佐たちの直属の上司ではなくなった。
「お前の望み通り、他の奴らと同じ部署にしたぞ」
そう、蔭山に言われるまで忘れていたが、当初は自分ひとり別の部署になり、最前線で働けていないことで焦りを感じていた。
蔭山との最初の面談で他の部署に転属を希望した。
それは本当に初期の頃の話だ。その後の面談では、一度も転属を希望したことはなかった。
ましてや、木佐と別のグループになってしまうとは思いもよらなかった。
だが、自分のことよりも、木佐が皆とうまくやっていけるのだろうかと心配だった。
そして、その心配は的中した。
木佐は新しい上司の太田と全くうまくいかなかった。
まず、木佐は、例えば「週報を出す」と言った会社の事務的なことがちゃんとできなかった。
毎週、毎週、太田から「週報を出せ」「1行じゃなくて、もっと、他人がわかるように書け」と言った叱責を受けていた。
「こういう当たり前のことができないと、他の人からの信頼を得られないんだぞ」
太田の声は大きく、隣の島の修平たちにもよく聞こえた。周りの先輩たちが「ざまあみろ」とばかりに笑いをこらえているのがわかった。
中には、「あいつ、また怒られてたな」と露骨に見下したように言う人もいた。
もちろん、社会人として太田の言うことの方が正しい。
今まで、ユーザーが要求する資料などを的確に作成してきたのを、何度も目の当たりにしてきた周平は、木佐が注意されていることぐらいできる能力があることを知っていた。それだけに、皆が馬鹿にしているのが自分のことのように悔しかった。
今の仕事が一段落したら、木佐を飲みに誘おうと思っていたが、それを実現する前に木佐は会社を辞めてしまった。
周平がそのことを知ったのは、すでに木佐が有給消化で会社に姿を見せなくなってからだった。
自分には一言言ってほしかったと思いながら、もしかしたら、自分が外出中に木佐が出勤することがあるかもしれないと、別れの挨拶をメールで送ったが、結局、返事は来なかった。
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