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嘘 ー秀ー
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「ただいま。」
「…お帰り。」
清四郎が帰ってきたのは夜の9時近くだった。
「遅かったね、もう少し早く帰ってくると思ってた。」
「あー、悪ぃ…。
仕事が押した。」
"仕事"……??
嘘だ。
女の人といたくせに。
「そっか……。」
キッチンで冷めきった夕飯を温め直す。
清四郎は上着をソファーに投げると俺を後ろから抱き締めた。
「連絡いれなくてごめんな…。」
「ううん、仕事だもん仕方ないよ。」
頑張って笑った。
どす黒い感情が自分のなかで蠢くのを感じながら笑った。
「先にシャワー浴びてきたら??
さっぱりしたいでしょ??」
「あぁ、そーする。」
清四郎はそういって、もう一度俺を抱き締めてからバスルームに向かった。
「……クサイよ…。」
早く流してきてよ。
その女モノの甘ったるい香水の嫌な匂いを。
そんな匂いを移してきたまま、俺を抱き締めないで。
「ごちそうさま。」
「お粗末様でした。」
「美味かった。」
清四郎は笑ってこう言う。
その顔がズルい。
いつも通り、俺の作ったご飯を美味しい美味しいって言いながら食べてくれた。
でも、俺は………味なんてわからなかった。
「秀、こっち来い。」
ほら、また。
そんな格好いい顔してる。
清四郎に呼ばれたら、俺が行かないわけないのに。
「なに??」
食器を下げた俺をソファーに座る清四郎は手招きして呼ぶ。
清四郎の隣に座ると、ふわっと抱き付かれた。
もう、さっきの嫌な匂いはしていない。
その事に少しだけ安心した。
「今日、どうした??」
「……ん??」
「秀、なんかあったのか??」
「何もないよ。
何で??」
「なんか、いつもと違う気がした。」
「そんなことないよ(笑)」
「………なら、いいが。」
嘘だよ。
清四郎も嘘をついたから…俺も嘘をつく。
そのまま二人でベッドにいって抱き締め合いながら寝る。
隣で規則正しい清四郎の寝息を聞きながら、俺は目を閉じても少しも寝付くことはできなかった。
次に目が覚めたら………全部、夢だといいのに……。
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