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TDL 4 ー清四郎ー
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「清四郎っ、あっち行こう!!!」
なんでコイツこんなに元気なんだ??(笑)
ジェットコースターを2つ乗ってシューティグゲームをして、ジャングル探検だの、熊や鳥のミュージカルだの、黄色い熊だの……結構回った。
テンションMaxになった秀は俺が持っていたパークの地図を奪うと、目をキラキラさせながら次々に名前をあげてどんなアトラクションかを聞いてくる。
次は幽霊のマンションに行きたいらしい。
さっきまで恥ずかしがっていた癖に、今では秀が俺の手をとり引っ張っていくようになった。
アトラクションまでの待ち時間はずっと地図やパンフレットとにらめっこしている秀だが、それが難しい顔をしたりキラキラと目を輝かせたりとにかく百面相のようで面白い。
時々顔を上げて俺を見上げると「これ、清四郎乗ったことある??」「見て、めっちゃ美味しそうだよ!!!」「次はこれ乗りたい!!!」なんて話してくるから、それだけ夢中になって楽しんでくれてるんだと嬉しくなる。
「ちょっと落ち着け(笑)」
「だって(笑)
あ、お茶飲む??」
「あぁ、飲む。
あとガムあったろ??」
「あるよ!!!
お茶、はい。」
「ん。
………ん、お前は??」
「飲む、ちょーだい。」
俺が飲んだペットボトルを渡すとゴクゴクと勢いよく飲んでいく。
「うわー、男二人で来てペットボトル飲み回しとかホモかよ(笑)
見ろよあれ、キモくね??(笑)」
ふと、後ろからそんな声が聞こえた。
秀にも聞こえたのか今まで明るかった表情が一気に曇っていく。
「やめとけって、ユースケ(笑)
可愛そうだろ??」
「ちょっと……二人とも……」
声のする方を見ると高校生くらいの男女が2人ずつ、おそらくWデートだろう4人が俺たちの後ろに並ぶ4人家族の更に後ろにいた。
こちらを見ながらクスクスと笑っているのは男二人で、女のほうはこちらの様子を伺いながら申し訳なさそうに二人を諫めている。
「だってよー、気持ち悪ぃだろー(笑)」
「タカシもやめなって……。」
クソガキ………。
俺たちが世間的に歓迎されるべき関係ではないことは理解しているが、よりによって秀が人生はじめての夢の国でテンションMaxだったこの瞬間に…。
「秀、気にすんな。
世の中にはあんな奴らもいる。」
「うん………清四郎と一緒だから、平気。」
『平気』、そんな言葉とは裏腹に曇りっぱなしの顔は、無理に笑い変な顔になっている。
「おにーちゃん、これ、あげるー。」
声をかけてきたのは俺たちの後ろに並んでた家族の幼稚園児くらいのちびっこ二人。
秀の服をクイクイと引っ張り何かを差し出している。
「……なーに??
お兄ちゃんにくれるの??」
秀はしゃがんで子供の目線に合わせてやると両手を開いて出して、ちびっこから何かを受け取った。
よく見ると透明なビニールに包まれたピンクの飴玉だ。
「うんっ!!!
これあげるから、元気出して!!!」
「甘くておいしーから、元気出して!!!
ママがあげてもいいよって言うから、あげる!!!」
「そっかぁ、ありがとう。
二人とも優しいね、お兄ちゃん元気になっちゃったよ。」
「「ほんとー??」」
「うん、ほんとーだよ!!!」
「よかったー(笑)」
「あ、そーだ、お礼に二人にはこれをあげる。
はい、仮面ライダー!!!」
ちびっこに飴をもらってニコニコ笑いながら秀は二人の頭をヨシヨシと撫でていた。
お礼といってリュックから出したのは、来るときに買った飲み物にキャンペーンで付いてきた仮面ライダーのキャップフィギュア2つ。
それを見たちびっこは目を輝かせ、母親の方を振り返り「ママー、もらっていい??」と訴えている。
「ちゃんとお兄ちゃんに、ありがとうしなさいね。」
「うん!!」
「はい、どうぞ(笑)」
「「ありがとうっ!!!!」」
ちびっこたちはフィギュアを大事そうにもってすぐに父親に自慢を始めた。
そんな家族を見て秀は嬉しそうな、羨ましそうな、ちょっと懐かしいような、悲しいそうな……そんな顔をしていた。
「すみません、ありがとうございます。」
俺は母親にお礼を言うと温かそうな笑顔で笑った。
「いいのよー。
この子達が勝手にしたことだし、それに飴なんかよりずっといいものもらっちゃったしね(笑)」
「いえ、そんな。」
「違ってたらごめんなさいね……もしかしてこの前ニュースに出てた方よね??
あの……ほら、どっかの会社のお嬢さんがあれした………。」
「ええ、まぁ。」
「あたし、丁度リアルタイムで見てて感動しちゃったのよー。
後ろの子たちが言ってることなんて気にしちゃダメよ??
世の中にはいろいろ言ってくる人もいるだろうけど、あなたたちのことちゃんと理解してくれる人もきっとたくさんいるわ。
夢の国なんだから、思う存分いっぱいイチャイチャすればいいわよ(笑)」
豪快にカラカラと笑う母親に和まされる。
隣でちびっこを相手にしながら父親もにこやかに笑っていた。
「ありがとうございます!!!」
そんな二人に俺より先に口を開いたのはほかでもない秀だ。
きっと、嬉しかったんだろう。
受け入れられたことが、嬉しかったんだろう。
先程の下手な嘘の笑顔とは異なり、今度はちゃんとしたいつもの秀らしい人懐こい笑顔がそう物語っている。
さぁ、いよいよアトラクションに案内される。
初めに案内された暗い部屋でプロローグとなるナレーションを聞き、次の部屋では部屋が縦に伸びていく演出に秀は夢中になって見入っていた。
そしてようやく乗り物の場所へとたどり着く。
座席に着くと安全バーを下ろして、いざ出発。
「ねぇ、清四郎、これ…怖くない??」
「さっきのちびっこたちも乗るんだぞ??
何ビビってんだよ(笑)」
「う……。」
「(笑)」
乗り物が進み暗くなっていくのを見計らい、隣で肩を竦めている秀の頬に軽くキスをした。
「ひゃぁ!!!」
「ばーか(笑)」
『夢の国なんだから、思う存分いっぱいイチャイチャすればいいわよ(笑)』と、あの母親に言われたのを思いだした。
思う存分イチャイチャしてやろ。
なんて。
だから、もう一度。
ちゅ。
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