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「……えっと…」
「A高校の学校推薦奴隷としてこちらの黒瀬優人君が選ばれました。」
俺は、小さいながらにはっきり聞こえてくるその声に体が固まった。
「そんな!!」
普段めったに大きな声を出さない穏やかな母さんが、大声を上げる。
隣に座っている父さんはさっと立ち上がると、玄関の方へ歩いて行った。
「あの、それは何かの間違いではないでしょうか?」
父さんは静かに、けれど声を震わしながら相手の男に尋ねる。
「いいえ、これは決定事項です。これから優人君は推薦奴隷用の専門学校へ入学し、心得を学んだ後A高校へ置かれることとなります。ご家族の皆様のお気持ちはお察しいたしますが、国の平和のためにご協力ください。」
そう言うと、その男はリビングヘ入ってきて座っている俺の腕を引っ張った。
「今日から君は奴隷です。早く立ちなさい。」
俺はその男を見上げる。
黒いスーツに黒いサングラス、その上からでもわかる鍛えられた体からは到底逃げられそうにない。
心のどこかでこうなるかもしれないと思ってはいたが、実際に告げられるとあまりの衝撃に心も体も追いつかない。
「早く立ちなさい。ご家族がどうなってもいいのか。」
グスッ
男の後にリビングヘやってきた父さんと母さんが端でこちらを見ている。
母さんは涙を流し、その細い肩を父さんが支えていた。
俺はゆっくりと立ち上がる。すると、その男は反対の手に持っていた大きなカバンの中から銀色の重そうなチェーンのついた、手錠を太くしたような首輪を取り出し、俺の首にはめた。
親の前で首輪をはめられるという異常な光景に、俺は自分が奴隷になったのだという事実を認知しはじめる。
男はチェーンを引っ張って玄関の方へと歩き出した。
俺も少しよろめきながら歩き始める。
「いやっ!行かないで!!!!連れて行かないで!」
俺は母さんの言葉に、涙をこぼしそうになる。
そして、後ろを振り向こうと立ち止まった。
その時、ビュンっと頬を風がかすめる。
それは男がチェーンを上から下へ勢いよく振り下ろした音だった。
「何をしている?さっさと歩け。」
その言葉に俺は驚きと怒りがこみ上げてきて、我を忘れて男に怒鳴り散らす。
「っあんた達がこんな身勝手な法律なんか作るからっ!!こんな法律許されるのかよ!!?ふざけんな!!!人のこと物みたいに扱いやがって!!」
バシッ!!
音が頭に響いた後、頬からじんわりと痛みが広がっていく。
そしてそのまま小脇に抱えられると、玄関を出た先にある黒い車へと投げるように乗せられた。
その間、俺が見たのは涙にくれる母さんとこちらを涙をこらえながら心配そうに見つめる父さんの姿だった。
車が静かに走りだして、2人の姿が遠ざかっていく。
懸命に後ろを向いて俺の居場所を目に収めようとするけれど、無情にも車はどんどんスピードを上げてどんなに目を細めても見えない場所まで俺を連れ去っていく。
その後の食卓に並べられていた食べかけの食パンたちの行方を、俺は知らない。
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