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Side story:新庄 良【3】
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次の日俺は、部活が終わると急いで着替えて図書室へと向かった。
7時には完全下校しないといけないのに、今はもう6時45分。
後15分しかない。もう帰っているだろう、昨日はからかわれただけだ、……いやでも……。
俺は頭の中でぐるぐると考えながら、図書室の前へたどり着いた。
そして昨日とは違い、恐る恐るドアを開ける。
「…………。」
「あっ、やっと来た。全然来ないから一冊読み終わっちゃったよ。」
……いた。
外はもう暗く、昨日のような窓からの優しい日差しではなく、人工的な蛍光灯の明かりが中村を照らす。
それは昨日の印象とはまた違い、漫画の設定でよくある、病院にいる子供の幽霊のような掴めなさと不気味さを兼ね備えている。
そんなコロコロと印象の変わる中村に、俺はまだ出会ったばかりにも関わらず引き込まれていくのが分かる。
「………もう帰ったかと思った。」
「帰るわけないじゃん。新庄こそこないかと思った。」
「これでも急いで来たんだよ。……ていうか何で俺のこと待ってたの?……その、俺たちまだ昨日会ったばかりなのに。」
「うーん、興味本位?まあ新庄は昨日初めて俺のこと知ったかもしれないけど俺はずっと知ってたし。俺、新庄のこと結構好きみたいだから。」
「はっ!?」
いやいや、待て待て。
動揺してしまったけれど、これは別に気が合うとかそういう話だよな。
いや、俺は中村のことまだ全然知らないから気が合うとか分からないけど。
「…………何だよ、それ。」
「ハハ!新庄、顔真っ赤。かわいいー。」
中村はまた昨日のニヤリとした顔で、俺をからかってくる。
昨日から、中村に体の熱をコントロールされているみたいで、中村の一つ一つの言葉に右往左往してしまう。
中村から視線をそらすように下を向くと、中村はこっちへやってきて下から俺の顔を覗き込んだ。
「ねえ、何でそんなに真っ赤になってるの?告白されたと思った?」
「……っ違う!そんなんじゃなくて……」
「俺のこと意識しちゃった?」
「っだから!違うってば……」
「ねえ、新庄も俺のこと好きになって。」
「はっ!?…っんん!!?」
最後の質問は中村に唇を塞がれて答えられなかった。
耳に触れる中村の両手も、唇に重なる唇もこんなに間近でぶつかる視線も全てが熱い。
俺、今中村とキスしてる。
頭がパニックになりすぎて、逆に冷静になっている自分に驚く。
「んっん!!!」
俺は息苦しくなって中村の胸の辺りをバンバン叩く。
すると中村はキスをしたままふふっと笑い、やっと唇を離した。
そして両手はそのままで俺の頭を上に向かせた。
「はあっ、はあっ、はぁ……」
「キスだけでこんなにエロイ顔になっちゃうんだね。」
中村は今までで1番意地悪そうな、だけど温かい笑顔でそう言った。
そして俺の額に自分の額を熱を測るようにコツンと当てて、体の奥まで響く声で続ける。
「明日もちゃんと来てね。」
この日から俺と中村の放課後15分だけの不思議な関係が始まったのだった。
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