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人間
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あれから数十年の月日が流れて、森もだいぶ姿を変えた。
あの日まであった魔法使いの村も今は俺が住んでいる家一つだけになってしまった。
人間に見つかりにくいように村があった所に木を植えて家を隠したし、少し前に習得した魔法で森をいりくませて辿り着きにくくした。
あの日の事を思い出すと今も右目が痛む。
ブンブンと顔を横に振ってパン、と頬を叩いた。
「よし、ご飯採りに行こっかな」
今日はキノコスープにしよう。
いつも同じところで採ってると無くなっちゃうし、今日は少し違うところから採ってこようかな。
夕方になれば人間は森に足を踏み入れないから、少しくらいなら人里に近づいても大丈夫だろう。
と、思ってたのに······。
「魔法······使い·······?」
「ひ······ッ」
思ったよりキノコが沢山生えていて、夢中で採っていたら人間がいたのに気付かず見つかってしまった。
逃げないと逃げないと逃げないと·····っ。
前髪で隠れた右目を無意識に庇って転がるように走り出した。
「ま、待っ·······!いって·····ッ」
苦しそうな声が聞こえてハッと振り返る。
人間は足を押さえてうずくまっていて、苦しそうに顔を歪めている。
「······け、怪我······してるの·······?」
十分な距離をとって木の幹に隠れながら問いかけた。
そのことに人間は驚いた顔をしつつ、何かを言おうとして口を噤んだ。
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