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帰る家
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次の日もまたケンタロウは来た。
なんでもない話をして、暗くなると帰っていく。
次の日も、その次の日も。雨が降っている日だって欠かさず会いに来た。
季節が変わる頃には、ケンタロウに向ける気持ちが友情以上のものになっていたことに気づいた。
「ごめん、もう帰るわ。イズミと話してたら時間忘れちゃうからダメだよなぁ」
「······帰らなきゃいいじゃん」
「ん?」
「帰らなかったらずっと話していられるじゃん。俺と一緒に暮らそうよ」
ケンタロウの服の裾を掴んで、ケンタロウが重く捉えて悩んでしまわないように気をつけながら、できる限り笑顔で言った。
「んー······ごめん。俺の帰りを待ってくれてる人がいるから。俺が帰ってこなかったらすげぇ心配しちゃうからなあ」
困ったような口調で言っているのに、人里へ向けられた目はすごく優しかった。
俺も、ケンタロウにこんな目を向けられたい。
「そんなの、もう子供じゃないのに······」
「俺があいつのいる家に帰りたいんだよ」
またな、と俺の手を服から放したケンタロウがいつも通り人里へ下りていく。
ケンタロウの家に帰っていく。家に帰れば待ってくれてる人がいて、その人がいるからケンタロウは家に帰ってしまう。
なんで俺じゃ駄目なんだろう。魔法使いだから?人間じゃないから?
でもケンタロウは、そんな俺でも仲良くしてくれてる。
それなら、俺とその人間は一体何が違うって言うの。
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